公認会計士試験の前に日商簿記検定の学習・受験をする意義

目次

1. はじめに

クレアールアカデミーでは、公認会計士試験を目指すカリキュラムの前半部分において日商簿記検定講座(1級まで)を組み込んでおります。これは、公認会計士試験の合格に必要な実力を養うにあたって、日商簿記検定の学習・受験をすることが相当効果のあるものと考えているからになります。

この点、「公認会計士試験と日商簿記検定は当然出題傾向が異なるのだから、公認会計士試験を目指すならば日商簿記検定での寄り道はしない方がよいのでは?」という疑問の声もあるかと思います。

そこで、今回の記事では、公認会計士試験を目指すうえで日商簿記検定の学習・受験をすることの意義について整理していきます。

2. 日商簿記検定と公認会計士試験の比較

まずは、出題傾向・内容も含め、両試験の概要を比較していきます。

(1) 実施時期など

  • 日商簿記検定:毎年2月、6月、11月の年3回(1級は6月と11月の年2回)
  • 公認会計士試験:短答式は毎年5月と12月の年2回、論文式は毎年8月の年1回

(2) 試験科目・出題内容

  • 日商簿記3級:商業簿記のみ
  • 日商簿記2級:商業簿記と工業簿記
  • 日商簿記1級:商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算
  • 公認会計士試験:会計学(財務会計論と管理会計論)、監査論、企業法、租税法、選択科目(経営学、経済学、統計学、民法の中から1科目)

科目の内容としては、日商簿記検定の商業簿記・会計学が公認会計士試験の財務会計論、日商簿記検定の工業簿記・原価計算が公認会計士試験の管理会計論に対応する形になります。

そして、日商簿記検定対策で必要となる知識のほとんどすべてが公認会計士試験の出題範囲に含まれている状況にあります。例外はごく一部、日商簿記1級の出題範囲にある「ライフサイクル・コスティング」と「品質原価計算」が公認会計士試験の出題範囲に含まれていないことくらいです(両論点とも、日商簿記1級対策で時間をかける割合は全体の1%未満で済むようなところです)。

両試験の出題範囲については下記からご覧いただくことができます(2017年10月31日現在)。

なお、公認会計士試験において会計学の配点は短答式試験では500点満点のうち300点(財務会計論200点、管理会計論100点)、論文式試験でも700満点中300点となっており、会計学は合否を大きく左右する重要な科目といえます。

(3) 難易度

試験全体を考えると、当然、公認会計士試験の方が難易度は高くなります。会計学(財務会計論および管理会計論)部分と日商簿記1級を比較するならば、計算部分については日商簿記1級でも公認会計士試験に引けをとらない難易度の問題が出題されることもありますが、基本的には公認会計士試験の方が問題のボリュームも多く、短答式・論文式ともにより幅広い論点が出題されます。

しかし、公認会計士試験の対策をしていくにあたっては、日商簿記検定の合格に必要な知識が重要な基礎となります。公認会計士試験だけの対策をしていく場合にも、まずは試験でわざわざ問われないような初歩的な内容から始め、徐々にレベルを上乗せしていく形で学習する必要があります。そうしていかないと、試験で問われるようなレベルの内容を理解することができないからです。東大受験をする場合、小中学生レベルの読み書き・計算で重要な漏れがあるならば、そこから復習し直す必要があるのと同じです。

また、公認会計士試験で合格点を獲得するにあたっては、日商簿記1級までに学習してきたような基本的な内容の問題で点数を稼ぐことが重要となります。

3. 日商簿記1級合格レベルになれば、公認会計士試験合格は近いのか?

「日商簿記1級に合格したら、公認会計士試験の合格も近い」と言われることがありますが、実際はどうなのでしょうか?
この点、公認会計士試験では会計学だけでも日商簿記1級の対策範囲より広く、また会計学以外にも学習すべき科目が4つ(監査論、企業法、租税法、選択科目)もあります。単純に考えると、日商簿記1級に合格してからもやるべきことはたくさんあるのが実情です。

しかし、だからといって日商簿記1級に合格(もしくは合格レベル)になっておくことが公認会計士試験対策に役立たないわけではありません。むしろ、非常に強い武器となることは確かです!

日商簿記1級の合格レベルになっておくことは、公認会計士試験の会計学としてより高度な内容を理解するための重要な基礎となります。また、会計学以外の監査論、企業法、租税法、選択科目(とくに経営学)を学習していくために前提となる知識も兼ね備えることにもなります。

これらは、3級、2級、1級と段階を追って本試験を経験し、その度に意識的に実力を磨いてきたがゆえの定着があってこそ活きるものになります。単に必要な知識をカバーするためのカリキュラムをこなすだけでは得にくいものとなっております。

ちなみに、日商簿記1級の合格レベルに到達すれば、公認会計士試験の会計学で対策すべき計算内容の約70%が学習済みとなっております。ここから上乗せしていく内容は次のようになります。

(1) 計算対策部分(約70%は日商簿記1級で学習済みとして、残りの約30%)

① 日商簿記1級で学習した範囲に関連した細かい補足:約5%
② 連結会計・企業結合会計の応用的な内容(財務会計論):約25%

(2) 理論対策部分

財務会計論・管理会計論、ともに理論対策の学習が必要となります。計算対策として学習してきた内容の理論的裏付けを学習しますが、計算ができることで理論として書かれた文章を難なく理解することができます。理論の文章を無理なく読んで理解できれば、計算対策に比べて圧倒的に少ない時間で実力をつけることができます。

4. 公認会計士試験の対策をするにあたって、日商簿記を学習するメリット

公認会計士試験を突破するためには、日商簿記1級の合格は必須ではありません。日商簿記検定の受験を一切行わずに公認会計士試験を突破する方がいるのも事実です。 しかし、それでも日商簿記1級までの学習・受験には大きなメリットがあります。そのメリットを整理すると次のようになります。

(1) 公認会計士試験という大きな山を目指す中での適切な中間目標となる

公認会計士試験の合格までの道のりは思いのほか長く、少なくとも1年~2年以上かかるのが通常です。そのような中、日商簿記検定の3級、2級、1級というのは途中段階での学習到達度も確認できる適切な中間目標になります。段階的な目標を無理なく達成していくことは、長期間のモチベーションを維持するうえでも非常に有効です。

(2) 日商簿記検定を通じて本試験慣れしていくことができる

スポーツにしても試験にしても、「本番」という非日常的な場面で実力を発揮することに苦手意識を持っている方も多いかと思います。メンタルトレーニングなども有効ですが、何度か「本番」という場を経験して場慣れしていくことも有効な対策といえます。

(3) 「本番」を迎える都度、そのための締切効果を得ることができる

日商簿記検定であっても、3級、2級、1級といった本試験の度に「追い込み」を行うことになります。この本番前の追い込みが、実力を一気に高めるチャンスとなります!

以上、公認会計士試験の前に日商簿記検定の学習・受験をすることの意義を検討してきました。公認会計士に興味がある、または受験を検討している皆さまの参考になれば幸いです。

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