「企業内会計士の実情と将来性」住友重機械工業(株) 経理部 公認会計士 佐瀬 永一 さん

住友重機械工業(株) 経理部 公認会計士 佐瀬 永一さん

目次

序文

公認会計士受験生の皆様、毎日勉強おつかれさまです。ここでは、一般企業に勤務する公認会計士としての立場から、企業内会計士の実情、将来性などをご紹介いたします。

自己紹介

佐瀬永一

私は2004年度の公認会計士第2次試験に合格し、会計士補となりました。受験生時代から、現在勤務している企業の経理部に所属しており、仕事をしながら勉強を続けていました。

もともと、転職や独立を志向して受験を決意したわけではなく、試験勉強を通じて、経理マンとしての自らの資質を高めることを目的としておりましたので、合格後も、監査法人などへの転職は念頭にありませんでした。その後、2007年度の修了考査を経て、公認会計士の資格を得ることができましたが、その後も同じ職場での勤務を続けています。

企業内会計士としての実務とやりがい

私の勤務している住友重機械工業(株)という会社は、製造業であり、変減速機や射出成型機、環境プラント、船舶など、様々な産業用の機械の製造を営んでおります。 私は、当社経理部の一員として、決算業務に携わっています。具体的には、期末や四半期における決算数値の取りまとめ、決算短信や有価証券報告書などの外部公表資料の作成、予算編成、新しい会計基準への対応などを行っております。

有報などの資料作成の過程では、監査法人の会計士の方々の監査を受けております。いわば、監査をするのではなく、監査を受ける側として、財務諸表の作成を行っております。

企業の会計不祥事が度々発生する昨今の社会情勢を受け、財務情報の信頼性を高めることは、企業としての社会的責務となっております。 もちろん、資格がないからといって実務能力に支障があるとは限りません。しかしながら、私は公認会計士としてのプライドにかけ、公表資料の信頼性を保持できるよう、日々緊張感をもって業務に取り組んでおります。 また、監査する会計士の方々も、作成者側に同じ会計士がいることにより、高度で活発な意見交換ができているようであり、その点で、会社としても、監査法人としても、企業内会計士が有意義な存在となっているものと自負しております。

さらに、予算編成作業においては、事業の実情に加え、会計制度を踏まえた適正な業績見込の作成に取り組んでおります。企業業績の将来予測は、経営陣の経営判断や、株主・一般投資者の判断に大きな影響を与えます。 これらの結果を踏まえた決算発表により、当社の財務情報が新聞記事になったり、株価が変動したりすると、自らの業務の重要性を再認識いたします。

ところで、会計基準のグローバル化の流れの中で、日本でも、国際会計基準(IFRS)の導入が確実視されております。従来の基準とは考え方も制度も大きく異なる新しい会計基準への対応においては、単なる会社の一経理マンにとどまらず、公認会計士としての高い専門性を持った立場で、会社にとって最も適切でかつ実態に即した対応方法を検討するよう、努力しています。

企業内会計士に求められる資質

住友重機
住友重機械工業(株)

企業は利益を追求することが使命であります。従って、事業運営の結果としての決算数値を取りまとめる、ということに留まらず、コスト意識を持って業務に当たらなければなりません。その上で、自らの業務が会社の業績向上のためにどのように貢献できるのか、ということを常に考えていく必要があります。

このような立場に置かれていることを自覚した上で、会計士としての専門性を生かした業務が常に求められています。 逆にいえば、自らの業務への取組の如何により、会社の経営方針に影響を与えていくことができるとすれば、単なる一経理マンとしてではなく、一人の企業人としての存在価値が高まることとなります。その結果、専門バカではなく、優れた会計の専門家としての活躍が期待されることになります。

企業内会計士の将来性

昔と違い、現在はどんな資格であっても、合格すれば将来安泰、ということはなくなりました。公認会計士試験という難関資格であっても、それは例外ではありません。 但し、公認会計士という資格の持つ価値が下がっているわけではなく、また、合格した者にとって、難関試験を突破したという自信は、決して変わるものではありません。この資格が、自らの価値を高め、可能性を広げるものであることに、疑いの余地はないのです。 従来は、公認会計士というのは、監査法人に行くか、独立するか、コンサルタントになるというのが一般的な進路でした。

しかし、企業業績への注目度が高まるにつれ、一般企業でも、会計に携わる人材に、高い専門性を求めるケースが増加しております。国際会計基準が導入されるようになれば、その傾向はさらに強くなることは間違いないと考えております。一般企業でも、会計士として活躍できる場面は広がっていくばかりです。 公認会計士試験という、幅広く難しい勉強を重ねてきたその成果を、一般企業での経済活動に生かす道も、選択肢の一つとして検討いただければ幸甚です。 どうか、将来の可能性に自信をもって下さい。そして、皆様の勉強の成果が必ず生かされる日が来ることを念願してやみません。

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