「社会人1年短期合格のススメ」 Vol.38.日商簿記1級対策 -工業簿記・原価計算 論点別の対策ポイント② 個別原価計算

目次

はじめに

 前回は日商簿記1級の工業簿記・原価計算のうち、原価の意義や部門費計算について、具体的な学習の進め方のコツをご紹介しました。今回も前回に引き続き、工業簿記・原価計算の学習を進めるうえでの、個別論点別の対策方法をご紹介したいと思います。

個別原価計算:まずは計算手法の位置づけをおさらいしよう

 個別原価計算について、日商簿記2級ではその代表的な計算方法等を学習しましたが、日商簿記1級ではさらに内容がステップアップし、仕損費の計算や作業屑の処理方法を学習することとなります。

 ところで、そもそも個別原価計算とは、実際原価計算にて製品別製造原価を算定する第3次の計算段階である「製品別計算」に含まれる計算手法であるという点について、頭の中で整理は行き届いていますでしょうか。この点、第2次の計算段階である「部門別計算」の後に行われる計算手法であることを理解していなければ、その計算の目的が不明確なまま学習を進めてしまうことにつながりかねません。これを機に、個別原価計算の位置づけを改めて理解するようにしましょう。

個別原価計算:仕損費は問題文の読み違えに注意しよう

 仕損費については、日商簿記2級では「補修指図書を発行する場合」を学習しましたが、日商簿記1級では新たに「代品の補修指図書を発行する場合」「補修または代品の指図書を発行しない場合」の計算方法を学習します。

仕損費の計算をマスターするコツは、「①新たに指図書を発行するか否か」と「②仕損の種類は何か(補修or代品製作)」という2つの点に着目して問題文を読むようにすることです。①②のそれぞれの違いにより、求められる計算方法が変わってきますので、クレアールのテキスト(工業簿記・原価計算)の演習問題を通じて、体で計算を覚えるようにしましょう。  

なお、私のおすすめの解答方法は、問題文のうち上述の①②等の重要な箇所に、「丸(〇)」や「アンダーライン(_)」を記入することです。日商簿記1級では以前よりも問題文の文章量が増し、特に解答時間が限られる本試験等では問題文の読み違えによる誤解答が発生するリスクが高くなります。せっかく計算方法をマスターしたにも関わらず、問題文を読み違えて得点率が下がり不合格となるのはもったいないので、可能であれば、テキストの問題演習の段階から問題文の重要な箇所に印を付けるように心がけてみてください。

 また、仕損費は正常仕損と異常仕損の場合でそれぞれ会計処理が異なる点にも注意するようにしましょう。正常仕損は直接経費処理(発生原因の指図書に賦課)と間接経費処理(仕損の発生部門に賦課)のいずれかを選択適用するのに対し、異常仕損は非原価項目(営業外費用or特別損失)として処理します。正常仕損と異常仕損のそれぞれで会計処理が全く異なりますので、問題文を読み違えることがないように注意しましょう。

個別原価計算:作業屑は計算方法を決定づける2つの点に着目しよう

 日商簿記1級では、新たに作業屑の処理方法を学習します。作業屑とは製品製造の際に生じた屑のうち売却価値や利用価値のあるものであり、複数の処理方法があります。

 作業屑の処理方法をマスターするコツは、「①追加加工が必要か否か」と「②自家消費と売却のいずれか」という2つの点に着目して問題文を読むようにすることです。①②のそれぞれの違いにより、求められる計算方法が変わってきますので、クレアールのテキスト(工業簿記・原価計算)の演習問題を通じて体で計算を覚えるようにしましょう(作業屑の計算方法は私自身も慣れるまで時間がかかり、苦労したことを覚えています)。

なお、作業屑の会計処理については、原則としてその評価額を発生部門の部門費から控除しますが、例外として直接材料費又は製造原価から控除することができるとされています。これらの会計処理方法については、問題文中で処理方法が指定されることが多いかと思いますので、会計処理方法自体を暗記する必要性は乏しいのではないかと思います。

個別原価計算:(まとめ)様々な種類の問題に触れて臨機応変に解答できるようにしよう

 日商簿記1級の個別原価計算は上述のような細かい論点が数多く含まれているため、問題文の指示内容により、求められる回答が大きく変化します。細かい論点が数多く含まれているということは、出題者の側からすれば幅広いバリエーションの問題を作ることができるということを意味しています。それゆえ、過去の本試験・テキストの演習問題・答練では、数多くのバリエーションの問題が存在します。

したがって、個別原価計算を本試験でもバッチリ正答できるようになるためのコツは、ズバリ「様々なバリエーションの問題に触れてみる」ということです。

初めのうちは各問題に散りばめられた細かい論点(いわゆる「ひっかけ」)に惑わされることが多いかもしれませんが、きっとそのうち段々と解答のコツを掴むことができるはずです。まずは焦らず問題を解き、一つずつしっかりと復習をするようにしてみてください。

おわりに

 今回は、日商簿記1級の工業簿記・原価計算のうち、個別原価計算について具体的な学習のコツをご紹介しました。次回も今回に引き続き、論点別の具体的な対策方法をご説明しますので、乞うご期待ください。

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