はじめに
今回は前回に引き続き、コンサルティング会社において日々の業務レベルで具体的にどのように公認会計士資格を活かすことができるか、具体例も交えながらご紹介したいと思います。前回の続きとして、まずは「財務アドバイザリー系コンサルティングファーム」からご紹介したいと思います。
「財務アドバイザリー系コンサルティングファーム」の場合(その2)
多くの「財務アドバイザリー系コンサルティングファーム」では、②バリュエーションというサービスを提供します。バリュエーションとは、M&A取引の準備段階・交渉段階における企業価値評価分析や価格のアドバイスを行うことです。バリュエーションにおいては、いくつかの企業価値評価手法が存在し、主にマーケットアプローチ・インカムアプローチ・コストアプローチの3種類が広く知られています。
会計士は会計士試験の管理会計論・経営学においてこれらの企業価値評価手法の考え方のフレームワークを学習しているため、バリュエーション業務に関する知識・経験の早期のキャッチアップも可能ではないでしょうか。また、監査法人等の勤務を経て会計領域での実務経験が豊富な会計士であれば、企業価値評価手法や分析対象の財務データの精査を実施する場面で活躍することができるのではないでしょうか。
また、多くの「財務アドバイザリー系コンサルティングファーム」では、③ファイナンシャルアドバイザリーというサービスを提供します。ファイナンシャルアドバイザリーとは、M&A取引の計画から交渉、スキーム立案・クロージングまでの間における、幅広い範囲のアドバイザリーサービスのことです。
ファイナンシャルアドバイザリーには大きく分けて、FA(ファイナンシャルアドバイザー)とM&A仲介の2種類があり、FA(ファイナンシャルアドバイザー)はM&A取引における譲渡企業もしくは譲受企業のどちらか一方を支援することが多い一方、M&A仲介は譲渡企業と譲受企業をいずれも支援し双方のメリットの最大化を目指すという点に違いがあります。
このようなファイナンシャルアドバイザリーにおいては、会計・税務・法務領域における専門知識が求められることはさることながら、財務分析スキル、パワーポイントによる提案書等のドキュメント作成、交渉サポート経験、財務モデリングのスキル、バリュエーションのスキルや英語力等の幅広いスキルが求められます。
この点について、もし会計士がこれらの業務に携わるとなれば、身に付けた会計理論をもとに財務分析や交渉サポートに役立てることが可能であると考えられます。また、M&A取引においては、会計面・税務面等でメリットが最大化可能な取引スキームを考えることがあるため、会計士試験で学習した会社法の知識を活かし、M&A取引の立案・検討をスムーズに進めることも可能ではないかと思われます。加えて、監査法人等での勤務を通じて特定の産業やビジネスに関する業界知見を有する会計士であれば、身に付けた業界知見をもとにして高付加価値の提案やM&A支援を行う事も可能ではないかと考えられます。
加えて、多くの「財務アドバイザリー系コンサルティングファーム」では、④フォレンジックスというサービスを提供することがあります。フォレンジックスでは、たとえば企業において各種の不祥事が発生した際において企業が失った信用を回復させるために必要なサービスを提供するようです。たとえば、会計不正が発生した場合には、企業のビジネス、信用や財務等に大きな悪影響が生じるため、迅速な調査を含む初動対応や規制当局から求められる情報の効率的な収集の支援に加え、企業を取り巻く消費者・取引先・株主・債権者等の各種ステークホルダーとの円滑なコミュニケーションの支援や再発防止策の徹底のための内部統制構築支援等を実施します。
もし公認会計士がフォレンジックス業務に携わる場合には、不正等が財務諸表に与える財務的影響の分析の際に会計領域での知見を活かしたり、再発防止のための内部統制構築支援の際に財務諸表監査等で身に付けた内部統制に係る知見を活かすことも可能であると考えられます。また、不正調査の際には事実関係の確認等のために各関係者に対するインタビューを数多く実施するため、会計士が財務諸表監査等で培ったヒアリングに係る経験・能力を活かすことができると考えられます。
「企業再生系コンサルティングファーム」の場合
「企業再生系コンサルティングファーム」は経営の窮地に陥った企業の立て直しの支援のために必要な幅広いサービスを提供しています。具体的にはたとえば、①企業が経営危機から脱するための現状把握、②再生計画の立案・資金繰り改善等のサービスを提供することがあるそうです。
①企業が経営危機から脱するための現状把握においては、たとえば企業の収益力や簿外債務の有無等を確認するための財務デュー・ディリジェンスが実施されることがあり、会計士が有する会計・税務領域における専門知識や経験を十分に活かすことが可能であると考えられます。また、会社のビジネス上の強み・弱みや経営悪化の原因を探るための事業デュー・ディリジェンスが行われることがあり、財務諸表監査等で数多くの業界・ビジネスモデルに触れた経験のある会計士であれば、それらの知見を活かしてより深度のある分析をすることも可能であると考えられます。
②再生計画の立案・資金繰り改善等のサービスにおいては、企業の窮境からの脱却に向けた具体的な財務戦略を立案することがあります。この点、会計・税務領域で十分な知見を有する会計士であれば、今後起こりうる事象について財務的なインパクトやキャッシュ・フローに与える影響を精緻に分析することが可能と考えられ、より地に足の着いた財務戦略立案に力を発揮することも可能であると考えられます。
おわりに
今回も前回に引き続き、コンサルティング会社において日々の業務レベルで具体的にどのように公認会計士資格を活かすことができるか、具体例も交えながらご紹介いたしました。実際の個別業務においてどのように会計士の経験・知識を活かすことができるかご紹介しましたので、具体的なイメージを持ったうえで理解を深めていただけたのではないでしょうか。
もし今回の記事で興味を持った分野等があれば、ぜひインターネットで幅広く情報を収集してみてください。今回の記事が会計士試験受験を控える皆様のモチベーション向上につながることを祈っております!