「社会人1年短期合格のススメ」 Vol.29.日商簿記1級対策 -商業簿記・会計学 論点別の対策ポイント⑨-

目次

はじめに

 前回のVol.28.では、日商簿記1級の会計学・商業簿記のうち、自己株式・自己新株予約権、及び1株当たり情報について、論点別の具体的な対策方法をご紹介しました。今回も前回に引き続き、主に日商簿記1級での新規論点・応用論点を取り上げ、それぞれの学習のコツをご紹介したいと思います。

外貨換算会計

 外貨換算会計については、日商簿記2級では外貨建の営業取引(為替予約の振当処理を含む)を学習します。そして、日商簿記1級ではその応用として、外貨建の営業取引(振当処理以外の独立処理等)や外貨建の財務活動(資金調達・運用を含む)を学習します。クレアールのテキストをご覧いただければ一目瞭然ですが、外貨換算会計は固定資産やリース会計、税効果会計等に匹敵するほど分量が多いことが特徴です。日商簿記1級の本試験問題では必出分野と言っても過言ではありませんので、しっかりと対策を進めるようにしましょう。

外貨換算会計とは、端的にいえば外国通貨で表示されている取引について、期中の各時点と期末時点でどのように日本円に換算するか考える会計処理であるといえます。テキストを読み始めると細かい会計処理の理解に気を取られてしまいますが、まずは会計処理の基本的なコンセプトをシンプルにとらえてみましょう。

以降では、外貨換算会計の各論点について、それぞれ学習の際のポイントをご紹介します。

外貨建の営業取引

 外貨建の営業取引については、前払金や前受金が絡む取引につまずく方が多いのではないでしょうか。前払金や前受金は買掛金や売掛金と異なり、既に金銭等の授受が完了していますので、金銭授受時の直物為替相場による円換算額を付すことになります。したがって、前払金や前受金については、買掛金や売掛金の決済時にその為替相場を用いて為替差損益を認識してはいけません。
私はこの会計処理について初めのうちは何度も勘違いをしてテキストの例題を間違えることが多かったのですが、「金銭の授受がされているか否か」という点に注意して仕訳を考えるようにすれば、解答ミスしないようになりました。
基本的な論点ではありますが、本試験で間違えることのないよう、頭の中でしっかり整理しておきましょう。

外貨建有価証券の評価・換算

 外貨建有価証券については、金融商品会計と同様に「売買目的有価証券」「満期保有目的の債券」「子会社株式および関連会社株式」「その他有価証券」の4つに分類し、評価や換算を行います。この中で特に注意が必要なのは、「満期保有目的の債券」と「その他有価証券」です。

外貨建ての「満期保有目的の債券」が出題される場合、償却原価法を適用する複雑な計算が求められる問題であることが多いかと思います。あくまで償却原価法を適用する当期償却額は期中平均相場(AR)によることに注意しましょう。

 「その他有価証券」については、償却原価法の適用の有無により会計処理が変化し、「満期保有目的の債券」と同様に当期償却額は期中平均相場(AR)で換算します。ただし、決算時においては、決算時の為替相場(CR)と期中平均相場(AR)の差額はその他有価証券評価差額金で計上しますし、税効果会計を適用する場合には税率分だけ繰延税金資産(負債)の計上も必要となる点が、「満期保有目的の債券」の会計処理と異なります。このように、償却原価法の適用がある「その他有価証券」は、「満期保有目的の債券」の会計処理との違いを整理して覚えておくことが、会計処理を効率よく理解するポイントです。

 そして、外貨建有価証券の減損処理にも注意が必要です。注意が必要なのは「子会社株式および関連会社株式」と「その他有価証券」の2種類であり、あくまで日本円ではなく外国通貨ベースで減損要否を判断する必要があります。この論点は、日商簿記1級の典型的なひっかけ問題でして、日本円ベースでの金融商品会計基準との整理がついていないと間違えてしまいますので、忘れないように覚えておきましょう。

為替予約等

 為替予約は外貨換算会計の中でも難解な分野であり、苦手とする受験者の皆様も多いのではないでしょうか。かくいう私も為替予約はあまり得意ではなく、どのように頭の中を整理すれば効率よく学習できるか悩むことも多くありましたが、ポイントを押さえることで為替予約に対するイメージも湧き、理解が進みました。

 まず、為替予約を行う意義を理解するようにしましょう。為替予約は為替相場の変動により売上や仕入の金額が変動するリスクにさらされている企業が、可能な限りリスクを回避するために利用することが多いです。具体的には、将来の為替相場を予約し、前もって予約しておくことで将来の損失を回避するために利用します。そして、為替予約等の具体的な手段としては、為替予約の他、通貨先物や通貨スワップ、通貨オプションが挙げられます。

 為替予約等の中で特に悩むのは、予定取引等に対する繰延ヘッジ会計と振当処理の違いを理解することではないでしょうか。繰延ヘッジ会計とは、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益の認識タイミングを一致させるため、為替予約から生じる損益をヘッジ対象の決済時まで一時的に繰り延べることを目的としています。一方で、振当処理はあくまで特例的な処理であり、為替予約から生じる為替差損益を直々差額と直先差額に区分し、それぞれ会計処理します。言葉だけではなかなか理解するのは難しいと思いますので、テキストの例題を何度も解き、テキストの会計処理の説明も復習しながら、理解を深めていきましょう。

おわりに

 今回は、日商簿記1級の会計学・商業簿記のうち、外貨換算会計について、ミスしやすい論点等の学習のポイントをご紹介しました。次回も今回に引き続き、論点別の具体的な対策方法をご説明しますので、乞うご期待ください。

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