「減損」のIFRSと日本基準の違い

先日、5月25日に公認会計士・監査審査会より、令和9年(2027年)の短答式試験から導入される「英語による出題」において、出題範囲が発表されました。

その中で、財務会計論の出題範囲で網掛けとなっている「減損(Impairment)」は日本基準とIFRSとの間で会計処理に違いがある代表的な論点の一つです。

今回は、この「減損」に焦点を当て、試験対策として押さえておくべき英語のキーワードと理論のポイントを解説します。

日本の会計基準は現在、IFRSとの「コンバージェンス(共通化)」を進めています。しかし、減損会計については、大きな基準の差異が残っています。

試験対策としては「日本基準を完璧にする」のが第一歩ですが、近年の試験傾向を見ると、「なぜ日本基準ではこの処理をするのか?」を問うために、あえて考え方の異なるIFRSとの対比を意識させる出題が増えています。英語の出題が始まることで、この傾向は増えていくと考えています。

目次

減損の判定フローの相違点

日本基準とIFRSの会計処理の違いとして、判定フローの違いがあります。

ここで減損損失を認識するまでのステップをおさらいしましょう。

日本基準:二段構えの慎重派

日本基準では、以下の3ステップを踏みます。

1.減損の兆候:収益性の低下などの事実を識別しているか。

2.減損損失の認識の判定:「割引前将来キャッシュ・フロー」が帳簿価額を下回っているか、減損損失を認識する必要があるか判定する。

3.減損損失の測定:帳簿価額を「回収可能価額」まで切り下げ、その差額を損失とする。

ポイントは「ステップ2」です。割引前の将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を上回っていれば、減損損失は計上しません。

「投資額を回収できそうであれば、減損は認識しなくていいよ」という、減損損失を計上することに慎重なスタンスを取っています。

IFRS:兆候があれば即、測定

対してIFRSのフローは非常にシンプルです。

1.減損の兆候:収益性の低下などの事実を識別してあるか。

2.減損損失の測定:兆候があれば、直ちに帳簿価額と「回収可能価額」を比較し、差額分を減損として認識する。

IFRSには、日本基準でいう「ステップ2(割引前CFによる判定)」が存在しません。兆候があれば、即座に「今の価値(回収可能価額)」を計算し、容赦なく減損損失を計上します。

IFRSでは「現在の価値を反映するのが財務諸表の役割」と考え、現在の価値を反映させることを重視します。

「減損損失の戻入れ(リバーサル)」という決定的な違い

もう一つの大きな違いが減損損失を計上した後です。一度減損を認識したものの、翌期以降に景気が回復し、資産の収益性が戻った場合を考えてみましょう。

日本基準:一度計上した減損損失は戻入しない。

日本基準では、減損の戻入れは一切認められません。

理由は「将来の見積もりは変動しやすく、戻入れを認めると利益操作(利益調整)に使われる恐れがあるから」です。一度減損したら、その低い帳簿価額をベースに減価償却を続けていくことになります。

IFRS:価値が戻れば、評価も戻す

一方でIFRSでは、回収可能価額の見積りに変更があった場合には、減損損失の戻入れ(リバーサル)をしなければならない、としています(ただし、のれんの減損は戻入れができない)。

毎期、減損の兆候が解消されたか判定し、減損テスト(Impairment Test)を行い、回収可能価額が帳簿価額を上回っていれば、減損損失の戻入れ(Reversal of impairment loss)を行い帳簿価額を引き上げることができます。

「資産の状態を正しく表す」ことが至上命題であるため、価値が回復したことを財務諸表に反映させます。

試験で狙われるポイント

これらを踏まえ、試験で狙われやすいポイントをまとめます。

① 「減損損失の認識」の判定フロー

日本基準が減損の兆候、認識、測定のステップを踏むのに対して、IFRSは減損の兆候、測定のフローである点を押さえましょう。

減損の兆候:Indication of impairment

減損損失の測定:Measurement of an impairment loss

② 「減損損失の戻入れ」の有無

日本基準が戻入れを認めないのに対し、IFRSではのれんを除き、戻入れをすることができる点を押さえましょう。

減損損失の戻入れ:Reversal of impairment loss

最後に

まずは日本基準の計算(減損損失の測定、共用資産の配分など)を完璧にマスターしましょう。その上で、IFRSとの間の差異を押さえると効果的です。

近年は任意適用でIFRSを採用している上場企業も増えており、実務で触れる機会も増加しています。受験生のうちから「考え方の差」に触れておくことは、合格後のあなたの価値を確実に高めてくれます。

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