「社会人1年短期合格のススメ」 Vol.22.日商簿記1級対策 -商業簿記・会計学 論点別の対策ポイント②-

目次

はじめに

 前回のVol.21.では、日商簿記1級の会計学・商業簿記のうち、有価証券・退職給付会計・商品売買について、論点別の具体的な対策方法をご紹介しました。今回も前回に引き続き、主に日商簿記1級での新規論点・応用論点を取り上げ、それぞれの学習のコツをご紹介したいと思います。

その他金融商品取引(デリバティブ取引等)

 その他金融商品取引(デリバティブ取引等)は、日商簿記1級で学習する新規論点です。これはいわゆる金融商品会計という分野に該当し、公認会計士試験の短答式試験・論文式試験では計算問題・理論問題ともに頻出の重要論点です。日商簿記1級の学習段階では、主に計算問題を中心としながら、理解を深めていきましょう。日商簿記1級では、「デリバティブ取引」と「デリバティブ取引以外の派生論点」を学習しますので、それぞれどのように対策していたか、ご説明したいと思います。

まず、「デリバティブ取引」の学習においては、初めのうちは全体像を掴むことを意識するようにしましょう。デリバティブ取引とは、金融派生商品を対象とした取引のことを指し、主な具体例として、先物取引・先渡取引・オブション取引・スワップ取引の4つに分類されます。初めのうちは、これらの4つに分類された取引の仕訳パターンを頭の中で整理するように心がけましょう(場合によっては、それぞれの取引の特徴や仕訳パターンを、テキストの余白等に場合分けしてまとめてみるのも良いかもしれません)。

そして、それら4つの取引のそれぞれの仕訳パターンを体に叩き込むコツは、何度もテキストの練習問題を解きそれぞれの仕訳パターンを樹形図で理解することです。たとえば、スワップ取引については主に金利スワップ取引を学習しますが、(1)ヘッジ会計を適用しない場合、(2)繰延ヘッジを使う場合、(3)金利スワップの特例処理の場合の3パターンに分類できます。まずはそれぞれの練習問題を解き仕訳方法を理解したうえで、「4つのデリバティブ取引のうち、金利スワップには3つの仕訳パターンがあるんだ!」と頭の中で樹形図を描くように整理してみてください。そうすれば、無暗に練習問題を解くだけではなく、効率的な理解につながるはずです。

次に、「デリバティブ取引以外の派生論点」としては、条件付きの金融資産の譲渡、デット・エクイティ・スワップの2つの取引を学習します。これらはもし本試験で出題されたとしても、テキスト通りの基礎的な問題が出題される可能性が高いかと思います(もし応用的な問題が出題された場合、他の受験生も含め正答率は低くなるはずです)。したがって、テキストの練習問題をしっかり解けるレベルに達すれば、特段問題ないかと思います。

余談ですが、海外売上を有する輸出企業等が売上・仕入等の為替変動のリスク等を低減するケースがデリバティブ取引が用いられる典型的な事例として挙げられます。国内売上しか存在しない純粋な国内企業の監査を担当した場合には、デリバティブ取引を実務上取り扱うことがないこともあります。また、デリバティブ取引は一般的にリスクが高い取引と考えられますので、内部統制(=企業内部の管理体制)等がしっかり備わっているか評価をする必要があり、実務上はなかなか大変だという話も聞いたことがあります。デリバティブ取引は実務でも必ず活きる知識ですので、日商簿記1級の段階から深く理解できるよう心掛けていきましょう。

資産除去債務

 資産除去債務は、日商簿記1級で学習することになる新規論点です。新たに学習する概念ですので、初めのうちは理解に戸惑うかもしれませんが、テキストの練習問題を通じて理解を深めましょう。

まず、資産除去債務のイメージをぼんやりと持ってみましょう。資産除去債務とは、テキストにも記載されている通り、(1)有形固定資産の取得・建設・開発または通常の使用によって生じ、(2)当該有形固定資産の除去に関して発生し、(3)法令または契約で要求される法律上の義務またはそれに準じるものを指します。前述の(1)~ (3)の条件を満たすものが資産除去債務でして、具体例としては、企業が通常通り使用していた建物の取り壊しにより発生する有害物質(アスベスト等)の除去が法令で定められている場合等が挙げられます。言葉を選ばず簡潔に言ってしまえば、有形固定資産を除去するときに発生する企業の義務と言えます。初めのうちは、そのようなシンプルなイメージを持ってみましょう。

次に、資産除去債務の会計処理をテキストの練習問題を通じて理解しましょう。簡単に言えば、(1)発生時の会計処理、(2)発生後の各期の会計処理、(3)資産除去債務の履行時における会計処理の3ステップをマスターすればOKです。これら(1)~(3)の会計処理が、資産除去債務の発生様態に応じて、若干変化すると頭の中で整理しましょう。たとえば、資産除去債務が使用の都度発生する場合や、資産除去債務が複数の有形固定資産から構成される場合には、(1)~(3)の会計処理が若干変化します。会計処理を理解するときのコツは、これらの資産除去債務の発生様態ごとに、(1)~(3)の会計処理をストーリー仕立てで覚えることです。

余談ですが、実務上は、資産除去債務は企業が何かの意思決定をしたときに議論の的となることが多いです。たとえば、企業が工場等の拠点を撤退・移転したり、本社を移転したりするときなどが挙げられます。これらは企業にとっては重大な意思決定ですので、通常は取締役会等で議論されます。したがって、取締役会等の議事録や経営者とのディスカッションにおいて、このような意思決定がされていることを確認したときには、資産除去債務の検討をすることが多いようです。監査業務のどのような場面で資産除去債務の知識を活用するか、イメージを持っていただけましたでしょうか。

おわりに

 今回は、日商簿記1級の会計学・商業簿記のうち、その他金融商品取引(デリバティブ取引等)と資産除去債務について、具体的な対策方法をご説明しました。次回も今回に引き続き、論点別の具体的な対策方法をご説明しますので、乞うご期待ください。

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