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「社会人1年短期合格のススメ」 Vol.23.日商簿記1級対策 -商業簿記・会計学 論点別の対策ポイント③-

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目次

はじめに

 前回のVol.22.では、日商簿記1級の会計学・商業簿記のうち、その他金融商品取引(デリバティブ取引等)、資産除去債務について、論点別の具体的な対策方法をご紹介しました。今回も前回に引き続き、主に日商簿記1級での新規論点・応用論点を取り上げ、それぞれの学習のコツをご紹介したいと思います。

固定資産の減損

 固定資産の減損は、日商簿記1級で学習する新規論点です。初めて学習するときには、減価償却費等と区別がつかず、戸惑うことも多いかと思います。一方で、固定資産の減損は会計基準・適用指針で会計処理方法等が詳細に定められていますので、きちんと決められたルール通りに会計処理を行えば怖いものなしです。

まず、固定資産の減損とは何か、簡単にイメージを持ってみましょう。固定資産の減損とは、資産の収益性が低下し投資額の回収が見込めなくなったときに一定の条件下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額することです。言葉を選ばず簡単に言えば、採算が合わない資産が生じたときにその状況を反映させるように損失を計上することと表すことができます。具体例としては、小売事業を営む会社が赤字のスーパーマーケット店舗について投資回収ができる程度まで、店舗資産等の帳簿価額を減額(=減損損失を計上)することが挙げられます。固定資産の減損について、何となくイメージを持っていただけましたでしょうか。

次に、固定資産の減損の会計処理を効率的に学習するためのコツをご説明します。固定資産の減損の特徴は、一種のストーリー性がある会計処理であることです。具体的には、固定資産の減損は、5つのステップ(①グルーピング→②兆候把握→③認識判定→④測定→⑤配分)に沿って順番に検討します。本来は、②兆候把握されなければ③認識判定には進みませんし、③認識判定されなければ④測定に進む必要はありません。ただし、本試験の問題では②や③の途中までで検討が終了する問題はほとんど出題されず、①から⑤までの5つのステップが一気通貫で問われる問題が出題されます。したがって、①から⑤までの5つのステップのつながりをしっかり理解するようにしましょう。また、固定資産の減損は、割引前将来キャッシュ・フローや使用価値といった、少々特殊な用語を使い分ける必要があります。これらは定義や意味が少しややこしいので、初めのうちは使い分けを間違えてしまうことが多いです。それらの用語をうまく使い分けるためには、5つのステップのうちどのステップで使用する用語なのか見極めることが効果的です。

余談ですが、実務においては、固定資産の減損は難易度が高い論点であることが多いため、慎重に検討を実施する必要があります。これは、固定資産の減損には会計上の見積りが必要であったり、いざ計上するとなれば金額が多額になったりするためです。コロナ禍では、緊急事態宣言による行動制限等により業績が悪化した企業が多額の減損損失を計上するケースが多かったようです。興味のある方は新聞記事等で固定資産の減損事例を調べてみていただければ、固定資産の減損のイメージがより膨らむかと思います。

繰延資産

 日商簿記2級では、創立費等について発生時に費用処理する方法を学習しました。一方で、日商簿記1級では応用論点として、創立費等について繰延資産として貸借対照表上に計上し、その効果の及び期間に渡り費用処理する方法を学習します。日商簿記1級で取り扱う繰延資産は株式交付費・社債発行費等・創立費・開業費・開発費の5種類です。テキストのページ分量は20ページ程度と少なく、スピーディに効率よく暗記することが大切です。繰延資産の対策のポイントは大きく分けて2つありますので、それぞれご紹介します。

まず、繰延資産の5種類について、費用処理年数を中心に暗記をするのが効果的です。繰延資産の原則的な会計処理は、支出時に全額費用計上することです。一方で、繰延資産の容認された会計処理は、その効果の及ぶ期間に渡り費用を配分計上することであり、5種類のそれぞれで費用処理年数が異なります。クレアールのテキストには会計処理をまとめたマトリクス表がありますので、それをうまく活用しましょう。コツは、3文字の繰延資産(創立費・開業費・開発費)の費用処理年数は5年以内である点に着目して、暗記することです。

次に、繰延資産の5種類の定義をしっかりと暗記するように気を付けてみましょう。たとえば、株式交付費とは株式募集のための広告費等の株式の交付などのために直接支出した費用と定義されており、企業規模の拡大のためにする資金調達等の財務活動に係る費用であることが前提です。したがって、株式の分割や株式無償割当等の費用は、必ずしも企業規模の拡大のためにする資金調達等の財務活動に係る費用とはいえず繰延資産に該当しないため、支出時に全額費用処理する必要があります。このように、一見すると繰延資産と見間違える費用がひっかけ問題として出題されることがありますので、そのような問題にも対応できるよう、それぞれの繰延資産の定義をしっかり暗記するようにしましょう。

おわりに

 今回は、日商簿記1級の会計学・商業簿記のうち、固定資産の減損と繰延資産について、具体的な対策方法をご説明しました。次回も今回に引き続き、論点別の具体的な対策方法をご説明しますので、乞うご期待ください。

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