【公認会計士試験受験対策】2019年度論文式試験を1ヶ月後に控えた受験生に対して②

目次

1. 論文式受験生から受けた「学習が間に合ってない」旨の相談

2019年度の論文式試験(8月23~25日)が残り1ヶ月くらいとなりました。毎年、試験直前期になると、様々な事情で試験対策が間に合いそうになく、アドバイスを求めて相談に来られる方がいます。例えば、今年も次のような状況の方から相談がありました。

  • 家庭や健康上の理由で学習がしばらくできていなかった…
  • アカウンティングスクールを卒業して短答式試験を企業法のみの受験で通過するも、企業法以外の科目が壊滅的…

いざ相談を受けてみると、「これまでやるべきことをやっていなかったから仕方ない」と言いたくなるような、明らかにサボっていたような事例は少ないです。健康上の理由で入院していた、お仕事の負担が重すぎて精神的なバランスを保てなくなっていたなど、皆さん何かしらの切実な事情があったりします。そして、学習が間に合っていない状況を打ち明けてまで相談していただけるくらいですから、そのほとんどの方が今年の試験をあきらめていないのは話をしていて伝わってきます。

以下、このような状況で行う私のアドバイスについて、そのポイントを整理していこうと思います。

2. 今年の8月論文式試験での目標をどうするか

残り1~3ヶ月くらいしかない状況であれば、ほぼ初学者と変わらない科目が複数あると、総合点での合格がかなり難しいといえます。現実的に取り組めるかなどを考慮して、次のいずれを狙うのかを決めることがおススメです。

  • (1) 総合点での合格を狙う
  • (2) 対策する科目を絞り、科目合格を狙う

(1) 総合点での合格を狙う場合

論文式試験は、普通に採点した得点(素点)ではなく、偏差値としての得点によって合否判定が行われます。そして、その合格ラインですが、公認会計士・監査審査会より次のように公表されています(https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/qanda/index.htmlより一部抜粋)。

52%の得点比率を基準として、審査会が相当と認めた得点比率とします。ただし、1科目につき、その得点比率が40%に満たないもののある者は、不合格とすることができます。

合格ラインが52%前後、そして1科目でも40%未満のものがあれば不合格となるため、「苦手科目の失点を得意科目でカバーする」よりも「苦手科目を克服し、全科目で平均点+αを狙う」方がトータルの労力は少なくて済みます。一発合格などの短期合格者も、後者の戦略で合格していくことが一般的です。

「苦手科目を克服し、全科目平均点+αを狙う」ことが現実的に可能であれば、それによって総合点での合格を狙うのがベストと考えられます。

(2) 対策する科目を絞り、科目合格を狙う

私の個人的な感覚ですが、1ヶ月くらいあれば、「とりあえず講義とかで1回転しただけ」の科目であっても、その1科目を集中的に取り組むことで科目合格が狙えたりします。

これまでの学習の進捗によって何科目取り組めるかも変わってくると思いますが、科目合格が狙えるものに絞って対策するのも1つの戦略となります。狙う科目は、得意科目があればその科目、得意科目がなければ短答式で受験した科目や選択科目がおススメです。とくに、監査論や企業法、選択科目については1ヶ月間集中的に取り組むことで一気に巻き返しを図ることがしやすいのではないでしょうか。

しかし、この戦略を取る場合、総合点での合格はあきらめることになります。また、科目合格に必要な得点比率は上記(1)で示した52%ではなく「公認会計士・監査審査会が相当と認める成績」とされ、その得点比率は毎年56%前後となっています。このようなデメリットがあるものの、総合点での合格(上記(1))が現実的でなく、かつ次年度以降に受験する機会が見込めるならば、選択肢の1つとして検討してみる価値はあります。

私が受験した際も、実は科目合格制度の恩恵を受けました。まず会計学を科目合格し、その次の年に監査論を科目合格し、最後の年に企業法・租税法・経営学の3科目のみを受験して最終合格しました。私が勉強をサボっていたことで受験期間が長引いてしまったことはさておき、受験科目が減ると、残った科目に十分なエネルギーを割くことができ、全科目対策する場合に比べて万全な対策をすることが可能になりました。

大学入試を経験した方であれば実感できるかもしれませんが、国公立大学を受験する場合(基本的に7科目以上)と私立大学を受験する場合(3科目以内で済む場合が多い)の違いに似ています。

3. 合格を狙う科目(総合点での合格を狙う場合を含む)の取り組み方

具体的に何をやるかについては、科目などによっても異なりますが、概ね次のように、計算か理論、仕上がり具合などに応じて変えていくのがおすすめです。いずれの方法を採るにしても、「基礎・基本の定着」と「最低限の実戦練習」が重要なテーマとなります。

(1) 計算科目

① 基礎・基本レベルに不安がある場合

答練を解いたとしても、その内容を消化するのに苦労しやすいかと思います。丸暗記しようとしても、前提知識が無いとスムーズに理解・定着することが困難です。足きりライン(40%)に到達する前に壁にぶつかってしまうのが通常です。

焦る気持ちも分かりますが、最低限身に付けておくべき基礎・基本が備わっていないならば、その習得が最優先です。テキストの例題などを用いてそれらの習得を中心に仕上げていきましょう。
ただし、最低限の実戦練習として、せめて1回分は実戦的な問題を解く練習をしておきましょう。1回分というのはあくまでも最低限の数ですが、全く実戦練習しない場合に比べれば雲泥の差となります。最低限の数の問題でもいいので、本試験がどのようなボリューム・雰囲気になっているのか、制限時間内で解き切れる量はどのくらいかを掴んでおきましょう。そうしないと、身に付けた知識すら本番で活かせなくなるリスクが高くなってしまいます。
実戦練習に用いる教材は、3年以内の過去問または公開模試が個人的にはおススメです。その際、次の3点を意識していただくのがおすすめです。

  • ⅰ 必ず1回は時間制限を設けて本番のシミュレーションとして行うこと。
  • ⅱ 「解くべき問題と捨てる問題の取捨選択」の練習も兼ねていること。
  • ⅲ 復習する際は、「解くべき問題のうちできなかった内容」でよい。

② 答練をこなしていける実力がある場合

答練や過去問を用いて、「実戦練習→関連する基礎・基本にさかのぼる」がおすすめです。直前答練のみ、応用答練のみといった形で消化できる回数に絞ることを考えてもよいでしょう。

(2) 理論科目

多少基礎・基本に不安があっても、論文答練を用いた実戦練習とインプットが計算科目に比べてやりやすいかと思います。基本的には答練を回しながらで良いと思うのですが、必ず「自信の無い内容」「気になった内容」はテキストや法規集などベースとなる教材にさかのぼるようにしましょう。

ただし、模範解答やテキストなどの文章を丸暗記する必要は全然ありません。結局のところ、本試験では、初見の問題を、その時点で持っている知識を活用して、現場対応で解答していくことが必要となります。具体的には、次のような現場対応が必要となります。

  • ⅰ 答案用紙の行数に応じて記述する量を調節する。
  • ⅱ 与えられた条件(制約)の中で解答する。
  • ⅲ テキストで習った「A=B+C」を、「B=A-C」や「A-B=C」に置き換えて考えるなど、基本知識を応用(活用)する。
  • ⅳ 複数の基本知識を組み合わせて考える。
  • ⅴ 知らない内容が盛り込まれている事例であっても、知っている基本知識を無理やりにでも当てはめて何とか記述を作る(場合によっては、思い付きの作文にならざるを得ない問題も普通に出てきます。)

このような現場対応するための基礎・基本知識(論述のネタ)を、実戦練習(スピーチなど)しながら仕入れていく感覚で良いかと思います。

「結局ポイントは何なのか?」という簡潔に言い換えたものを見出していくのがコツです。外してはいけないポイントや大まかな流れを固め、そこに細かい周辺知識を肉付けしていくイメージになります。

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