【簿記検定受験対策】第150回日商簿記検定1級の振り返り(商会)

 

目次

1. はじめに

先日の2018年11月18日(日)、第150回日商簿記検定が実施されました。受験された皆さまは本当にお疲れ様でした。

クレアールアカデミーにおいても模範解答や解説動画を出しております。また、無料で解答解説冊子も配布しておりますので、受験された方はもちろん、これから受験される方もぜひご請求ください!

この記事では、第150回日商簿記検定のうち1級の商業簿記・会計学について、感想などを書いていきたいと思います。

2. 第150回日商簿記1級の出題内容

各科目、出題された内容は次のとおりでした。私の個人的予想が当たったかはそちらの記事と見比べていただければ明らかになります。会計学については想定したのと違った形式になり、的中とは言えない感じになってしまいましたが、お許しを(^^;)

出題内容
商業簿記 決算整理後残高試算表
会計学 問題1:関連する語句の選択

問題2:正しい文章の選択と空欄に入る金額の計算

問題3:記述(財務報告の目的)

工業簿記 組別実際総合原価計算
原価計算 第1問:予算編成

第2問:受注可否の意思決定

※ 工業簿記・原価計算の感想などはこちらの記事をご覧ください。

3. 商業簿記について

オーソドックスな形式の決算整理後残高試算表作成問題でした。ボリュームが多いので満点は難しいのですが、部分点を積み重ねていけば7割を超えることは十分にできます。また、会計学が短時間で終わる内容だったので、浮いた時間を商業簿記に充てることも可能でした。

商品売買や為替予約のように、状況把握とその対処に手間がかかるものもありましたが、後から落ち着いて考えてみれば基本知識の活用によって解答可能でした。

有価証券の保有目的の変更(B社社債)は、1級対策の中では少し応用的な範囲かと思われますので、対処できなくても気にする必要はないでしょう。ちなみに、今回のB社社債のように、一度満期保有目的で取得しても、その後満期を待たずに売却してしまえば残った分を満期保有目的だということができなくなります(詳細は金融商品会計に関する実務指針の69項参照)。「満期まで持ちます」と言っていたのに、その宣言を破って途中で売ってしまったのですから、そんな会社が引き続き「満期まで持ちます」と言っても信頼性が落ちるためです。オオカミ少年の話と似ています。

そして、B社社債のうち売却しなかった60%ですが、その他有価証券に分類されますので、基本的に時価評価の対象となります。この点、「期末時の時価がいくらですよ」というニュアンスの問題文が無かったので正式な解答(公表されません)は分かりませんが、期末時に40%を1口97.50円で売却しており、その「1口97.50円」というデータを使って期末時の時価評価を行うことができます。したがって、解答速報を作成する際には「1口97.50円」に基づいて時価評価を行っております。

4. 会計学の問題1について

指定された語句について、それと最も関連性の高い別の語句を選択する問題となっており、連想ゲームのような問題でした。基本的な語句が多く、5つ中4つは簡単に正答することができます。

しかし、1つだけこの記事を書いている今でも私の中で最終的な解答が絞り切れていないものがあります。それは3つ目の語句である「生産高比例法」です。これに関連する語句として、当校含めどの学校も「ソフトウェア」を最も関連性の高い語句として模範解答にしております。この点、私は「ソフトウェア」ではなく「誤謬の訂正」も正解ではと思っています(学校としての正式なコメントではなく、あくまでも個人的な意見であることをご了承ください)。これを読んでいる皆さんは、「生産高比例法」に関連性の強い語句として、「ソフトウェア」と「誤謬の訂正」のいずれかと問われたらどっちを選びますか?

 (1) 「ソフトウェア」とする理由

私の理解する「生産高比例法→ソフトウェア」の理由は次のとおりです。

「生産高比例法」

減価償却方法の1つ

ソフトウェアも減価償却する資産の1つ

「ソフトウェア」

「ソフトウェアを生産高比例法で減価償却することもあるかな?」と考えたりもしましたが、ソフトウェアを生産高比例法によって減価償却するケースが実際にあるかは微妙です。というのも、生産高比例法を適用する要件について、企業会計原則の注解20で次のような記述がなされております。

総利用可能量が物理的に確定でき、かつ、減価が主として固定資産の利用に比例して発生するもの、例えば、鉱業用設備、航空機、自動車等について適用することが認められる。

この要件に照らして考えると、ソフトウェアは、〇ギガバイトとか〇時間のような総利用可能量が設定されているでしょうか?私が知らないだけで世の中には「総利用可能量が物理的に確定でき、かつ、減価が主として固定資産の利用に比例して発生する」ようなソフトウェアが存在するかもしれません。そのような場合には生産高比例法によって減価償却することも可能です。 ですが、まず「総利用可能量が物理的に確定でき」という要件を満たすようなソフトウェアが思い当たることがないかと思います。したがって、「ソフトウェア→生産高比例法で減価償却することもある」というような連想は通常できないと思います。

なので、「ソフトウェア」が本問の正解だとしても、「減価償却」というキーワードをいったん挟んだ少し強引な連想になると思われます。

 (2) 「誤謬の訂正」とする理由

こちらも多少強引かもしれませんが、次のような連想によって「誤謬の訂正」も「生産高比例法」に関連しうる語句といえます。まあ、他の語句であっても、それに関連した処理や計算、表示に誤謬があることを想定して「誤謬の訂正」に結び付けることができてしまいますが(^^;)

「生産高比例法」

減価償却方法の1つ

減価償却は固定資産の耐用期間にわたって行う

過去に行った減価償却計算に誤謬が含まれることも想定できる

誤謬があれば「誤謬の訂正」を行うべき

「誤謬の訂正」

以上より、「ソフトウェア」も「誤謬の訂正」も関連性のある語句にはなります。そのうえで、問題文では「最も関連性の高い語句」が問われておりました。果たしていずれの方が「最も関連性の高い語句」に該当するのか、皆さんも暇があれば考えてみてください。

5. 会計学の問題2について

問題に示された状況に応じて、ア~エの4つの文章(金額の一部が空欄状態)が用意されており、その中から正しい文章を選び、その文章に含まれる空欄の金額を埋めるという問題でした。

出題形式が珍しいものでしたが、1つ1つの難易度は決して高いものではありません。 ただし、状況1の文章にトレーディング目的で保有する場合のものが含まれていたり、状況2がリース料前払のケースだったり、状況4では繰延税金資産の回収可能性を考慮しなければいけなかったり、多少踏み込んだ内容が含まれておりました。なので、学習が追い付いていない方にとっては十分な得点を稼ぐことが難しかったかもしれません。そういう意味では、実力に応じて差が出る問題ともいえます。

できる限り満点を狙いたいところですが、上述のような細かい内容も含まれていました。したがって、最低でも5つ中3つ以上は死守したいところです。

6. 会計学の問題3について

財務報告の目的を25文字で記述する問題でした。概念フレームワークの文章(第1章第2項)から抜きす形で「投資のポジションとその成果を測定して開示すること。」と書けば、「。」も含めてピッタリ25文字となります。「モーニング娘。」を思い出したのは私だけでしょうか。

できるならば「投資のポジション」と「成果」という2つのキーワードを盛り込みたいところでしたが、「財政状態」と「経営成績」や、「情報提供機能」と「利害調整機能」など、別のキーワードを盛り込んで書いた受験生もいたと思われます。どこまでの範囲で点数を与えてくれるかはわかりませんが、概念フレームワークに書かれているものであることを問題文で限定しておりませんでしたので、それなりに解答の幅を認めるような採点が望まれます。

7. 次回の試験にむけて

商業簿記の総合問題はもちろん、今回は会計学も様々なテーマを織り交ぜる形の出題がなされました。これは、ヤマ当てに頼って偏りのある対策をするのではなく、ヤマが外れても基本的なところであれば対応できるくらいの学習をしていただきたいというメッセージが込められているように思います。

出題予想の記事でも書いていましたが、今後1級を目指す方は「基本的なことを網羅する」と「重要度に応じた優先順位付け」のバランスを大切にしていただければと思います。

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