【簿記検定受験対策】山田講師による第150回日商1級の出題予想

今回は、2018年11月18日(日)に実施される第150回日商簿記検定の1級について、私の個人的な予想とアドバイスを提供していきます。

目次

【商業簿記・会計学の出題予想・アドバイス】

1級商業簿記・会計学の過去10回における出題傾向は次のようになります。

商業簿記 会計学
第135回 損益勘定と繰越試算表の作成
・割賦販売、未着品販売
・セール&リースバック取引
・ソフト・ウェア など
第1問:理論(誤りの指摘)
… 自己株式、繰延税金資産の回収可能性、貸倒の見積り、資産除去債務
第2問:リース会計(借手&貸手)
第3問:理論(穴埋め)…純資産の部
第137回 本支店会計
・在外支店
・外貨建有価証券
・為替予約    など
第1問:理論(穴埋め)
… 持分法、退職給付、債権評価、税効果、  包括利益
第2問:株式移転
第3問:資産除去債務
第138回 決算整理後残高試算表の作成
・為替予約
・売価還元法
・貸倒引当金
・リース取引(中途解約)  など
第1問:理論(穴埋め)
… ヘッジ会計、正規の簿記の原則、消費税、割賦販売の収益認識
第2問:連結包括利益計算書
第3問:理論…減損会計(穴埋め)
第140回 前T/B残高の推定、決算整理
・商品売買(会計方針の変更)
・有価証券・固定資産(リース、減損含む)
・ストック・オプション   など
第1問:理論(穴埋め)
… 為替換算調整勘定、共有支配下の取引、退職給付、資本連結、後発事象
第2問:分配可能額
第3問:連結C/F
第141回 決算整理後残高試算表の作成
・長期貸付金の売却(回収業務は残存)
・リース取引
・一般商品売買(原価率の推定含む)など
第1問:理論(語句の関連性)
… 取替法、退職給付引当金、株式報酬費用、自己株式
第2問:包括利益、現先取引、事業分離
第3問:連結P/L
第143回 損益計算書作成など
・代理店販売による手数料
・退職給付
・リース取引・税効果会計   など
第1問:理論(穴埋め)
… 使用価値、時価ヘッジ、希薄化効果、  移転損益、実績主義(四半期決算)
第2問:在外子会社の連結
第3問:工事契約会計
第144回 決算整理後残高試算表の作成
・商品売買(委託販売を含む)
・為替予約の独立処理
・固定資産、有価証券、新株予約権 など
第1問:退職給付会計、圧縮記帳、耐用年数の変更
第2問:連結貸借対照表の作成 (評価・換算差額等の取扱い含む)
第146回 損益計算書作成など(注記金額も一部出題)
・受注制作のソフトウェア
・その他有価証券
・退職給付
・税効果会計(評価性引当額含む) など
第1問:理論(穴埋め)
… 修正再表示、総合償却、償却原価法、 直接法(C/F)、共用資産
第2問:通貨オプションに係るヘッジ会計
第3問:事業分離(連結F/Sの作成含む)
第147回 本支店会計
・国内支店と在外支店・商品売買は売上原価対立法
・セールアンドリースバック
・200%定率法など
第1問:正しい文章の選択
第2問:税効果会計
第3問:共同新設分割
(連結F/S上の取り扱いを含む)
第149回 連結財務諸表の作成
・B/S、P/L、S/S(利益剰余金のみ)、包括利益計算書
・その他有価証券評価差額金あり
第1問:理論(穴埋め)
… 独立処理、区分法、評価 ・換算差額等、 トレーディング、見積現金購入価額
第2問:退職給付会計
第3問:吸収合併、のれんの減損

そして、私が考える第150回1級商業簿記・会計学の出題予想は次のとおりです。

第1予想 第2予想 第3予想
商業簿記 決算整理後残高試算表 損益計算書 連結財務諸表
会計学
第1問
語句穴埋め 誤りの指摘 〇×問題
会計学
第2問
・第3問
キャッシュ・フロー計算書 リース会計 資産除去債務
連結包括利益計算書 持分法 税効果会計

1級の商業簿記は毎回決算を伴う総合問題となっております。第147回で本支店会計、第149回で連結財務諸表といった複数の会計単位を1つにまとめるようなテーマが出題されましたので、次は一般的な総合問題の可能性が高いと考えております。一般総合問題の場合、出題サイクルを考えると決算整理後残高試算表が出題されそうな状況です。外部公表用の財務諸表が出題される場合、貸借対照表or損益計算書のいずれか一方で出題されることが多いのですが、第146回が損益計算書であったことを鑑みると次は貸借対照表でしょうか。いずれにしても、商業簿記の総合問題ではあらゆる内容を盛り込むことが可能です。テキスト例題レベルの基本は幅広く復習しておきたいところです。

なお、連結会計については商業簿記で出題される可能性が低くなりますが、会計学で出題される可能性もあります(会計学の出題傾向を見ていただければ、何かしらの形で連結会計に関わる出題が頻出となっていることが分かります)。前回出題されたからと言って連結会計を全く無視することは危険です!

会計学の第1問は毎回ちょっとした語句穴埋めなどの理論問題となっております。配点は5点前後と予想されております。幅広い会計理論の中からヤマを張るのはなかなか難しいところがありますので出題内容の具体的予想はご容赦ください(^^;)。ただし、日商1級対策においては理論のためだけの学習は企業会計原則の一般原則などごく限られた内容だけで十分です。基本的には計算対策で登場する専門用語や理解があれば合格に必要な点数は取れることがほとんどです。計算対策学習で登場する専門用語を疎かにしないように気を付けましょう!

会計学の第2問・第3問は、しばらく出題がなされていないキャッシュ・フロー計算書、リース会計、資産除去債務などを出題予想として挙げております。キャッシュ・フロー計算書についてはテキストで習う程度の連結キャッシュ・フロー計算書はできるようにしておきましょう。リース会計については貸手の処理が問われることもありますのでご注意ください。資産除去債務は、そろそろ見積の変更を伴うケースが出題されてもおかしくないと思われます。加重平均割引率を使うようなケースについても抑えておきたいところです。

連結包括利益計算書については、前回の商業簿記で軽く出題されてはいたのですが、当期発生額や組替調整額を求めるような問題の前触れかなとも考えられます。連結会計を会計学で出題する場合には格好のネタとなりますので、可能であれば対策しておきたいところです。
税効果会計は第147回で出題されたばかりですが、かなり基本的な問題となっておりました。会計学で出題されなくても商業簿記で税効果会計を織り込んだ出題がなされる可能性も高いため、税効果会計の復習は怠らないようにしておきましょう!

持分法については、第147回の第3問(共同新設分割)の中で出題されていますが、持分法を前提にしたより発展的な内容でした(通常の1級対策では扱わないため捨て問となっていました)。それ以前は計算問題としての出題が第126回(商業簿記)より後からなされておりません。そろそろ持分法特有の知識を問う問題があってもおかしくないため第3予想に入れております。

【工業簿記・原価計算の出題予想・アドバイス】

1級工業簿記・原価計算の過去10回における出題傾向は次のようになります。

工業簿記 原価計算
第135回 第1問:仕掛品勘定の記入など
第2問:材料費(理論)
第3問:標準原価計算(理論)
第1問:CVP分析
第2問:差額原価収益分析
第137回 第1問:原価計算基準前文(理論)
第2問:工程別組別実際総合原価計算
第1問:直接原価計算
第2問:直接原価計算(理論)
第138回 第1問:標準原価計算
… 配合差異・歩留差異など
第2問:標準原価計算(理論)
第1問:直接原価計算(理論)
第2問:直接原価計算
(予算編成的側面が中心)
第140回 本社工場会計
・費目別計算
・各種差異の推定
・工場損益、企業全体の損益の算定など
設備投資の意思決定
第141回 第1問:費目別計算など
第2問:補助部門費の配賦(理論)
第1問:CVP分析
第2問:事業部制
第143回 第1問:実際総合原価計算
第2問:原価差異の会計処理(理論)
品質原価に関する差額原価収益分析
第144回 第1問:標準原価計算(理論)
第2問:標準原価計算    (原価差異の会計処理)
第1問:設備投資の意思決定
第2問:差額原価収益分析(事業部間の内
部振替価格の検討を含む)
第146回 第1問:部門別計算
第2問:部門別計算(理論)
第1問:活動基準原価計算
第2問:価格決定など(正誤問題)
第3問:設備総合効率の分析
第147回 個別原価計算(ロット生産)品質原価計算も含む 第1問:連産品の原価計算
・追加加工の意思決定
第2問:CVP分析など
第149回 本社工場会計 問題1:価格決定
問題2:原価要素の分類

そして、私が考える第150回1級工業簿記・原価計算の出題予想は次のとおりです。

第1予想 第2予想 第3予想
工業簿記 工程別標準原価計算 実際総合原価計算 予算編成
原価計算 予算実績差異分析 設備投資の意思決定 事業部制
(CVP分析も含む)

工業簿記の第1予想は第134回や第128回で出題されていたような工程別標準原価計算を挙げてみました。前回(第149回)が本社工場会計でありながら標準原価計算の設定となっていたのですが、かなり難易度の低いものとなっていました。また、標準原価計算自体は繰り返し出題された実績もあります。標準原価計算自体をしっかりと問う問題が第149回含めて3回分空いていることを考えると、しばらくご無沙汰な工程別標準原価計算の対策をしておきたいところです。上記に示した出題実績より昔になりますが、第134回や第128回の過去問を入手して練習をしておくことをおすすめします。

また、実際総合原価計算も一定の頻度で繰り返し出題されている中、第144回から出題がなされておりませんので、第2予想で挙げてみました。

予算編成については、第101回や第122回というかなり昔に出題されていた典型タイプの問題がずーっと出ておらず、一応の対策をしておいていただきたいため第3予想で挙げさせていただきました。

原価計算においては、第144回~第147回にかけて差額原価収益分析を含んだものが続いていたため別タイプの問題になると考えております。そのため、過去2~3回に1回くらいの頻度で出ていた設備投資の意思決定を第1予想にしようかとも迷ったのですが、第2予想に下げております。代わりに、第131回で出題されて以降すっかりご無沙汰な予算実績差異分析を第1予想としております。なにはともあれ、予算実績差異分析も設備投資の意思決定も出題サイクルを考えると対策は必須と考えられます!

第3予想には事業部制を掲げさせていただきました。事業部制を採っていることを前提に、事業部の業績評価、内部振替価格、CVP分析など様々な内容を問うことができますので、これらの基本を総ざらいしておきたいところです。

【最後に】

出題範囲が膨大な1級では、「①基本的なことを網羅する」ことと「②重要度に応じた優先順位付け」という一見矛盾する2つの姿勢の両立(バランス?)が大切です。つまり、テキスト例題レベルの基本的なことはできる限り穴を作らないようにしていただきたいのですが、細かいことまで網羅的にすることは難しいのである程度重要度に応じて学習範囲を絞ることも大切です。このバランス感覚が実現できるようになったとき、きっとその方の合格可能性がぐっと高まっていることでしょう。ひとまず、この記事のような出題予想で重要なテーマを把握しつつ、テキスト目次などから学習範囲を俯瞰して弱点と思われる箇所を克服するようにしてみてください。最後まであきらめずに取り組めば、意外とギリギリまで実力が伸びていくものです。この記事を読んでいただいた皆様の合格を応援しております!

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