1. はじめに
2018年4月2日付で、2019年度(平成31年度)以降における日商簿記検定試験の出題範囲が公表されました(詳細は日本商工会議所HPに記載されております →平成31年(2019年)度以降の簿記検定試験出題区分表の改定等について) 。改定後の出題範囲が適用されるのは、2019年6月の試験(第152回)からとなります。
今回の記事では、最も影響を受ける日商簿記3級について、改定の概要を紹介していきます。
2. 改定の趣旨など
詳細は日本商工会議所HPで公表されている『商工会議所簿記検定試験出題区分表などの改訂について』に書かれておりますが、改定の趣旨などに関するポイントを整理すると次の2点になります。
(1) より実務に則した内容となるように出題内容を整理
→ 追加する内容もあれば、削除する内容もあります。
学習負担が大きく増えることにはならないと考えられます。
(2) 個人商店を前提とした内容から、小規模の株式会社を前提とした内容へ改定
→ 個人でビジネスを起こす場合はともかく、どこかの会社に就職する方にとっては、試験対策で学んだことが役立ちやすくなります。
3. 具体的な改定ポイント
各テーマの具体的な改定ポイントは以下のようになります。
(1) 現金預金について
- ① 複数の口座を開設している場合の管理が追加されます。
- ② 期中に当座借越勘定を用いる方法(2勘定制)が削除されます。
→ そのかわり、期中の当座借越額を当座預金勘定の貸方記入として処理し、決算整理で当座借越勘定などの負債勘定に振り替える処理が出題範囲に含まれることになります。
(2) 有価証券取引が削除
→ 有価証券は2級以上での出題範囲となります。
(3) その他の債権・債務について
- ① 商品券を発行する取引が削除されます。
→ 発行商品券として、1級の出題範囲となります。
- ② これまで「他店商品券」勘定とされていたものについて、「受取商品券」勘定へ改定されます。
- ③ 差入保証金が追加されます。
- ④ 電子記録債権・電子記録債務が追加されます。
- ⑤ クレジット売掛金が追加されます。
- ⑥ 手形の裏書譲渡・割引が削除されます。
→ 手形の裏書譲渡・割引は、2級以上の出題範囲となります。
(4) 商品売買における「値引」が削除されます。
→ ただし、「返品」は引き続き残ります。
(5) 有形固定資産について
- ① 減価償却の直接法が削除されます。
→ 直接法は2級以上の出題範囲となります。
- ② 固定資産台帳が追加
(6) 純資産について
- ① これまで個人商店を前提としていた引出金が削除されます。
- ② 資本金勘定だけでなく、利益準備金勘定、繰越利益剰余金勘定が追加されます。
→ 株式会社を前提とした純資産科目となります。
- ③ 株式会社の設立、増資が追加されます。
- ④ 剰余金の配当が追加されます。
- ⑤ 純損益の繰越利益剰余金勘定への振替が追加されます。
→ 決算振替において、これまでは純損益を資本金勘定に振り替えていましたが、改定後は繰越利益剰余金勘定へ振り替えることになります。
(7) 収益と費用について
- ① 法定福利費が追加されます。
- ② 「収益・費用の繰延と見越」が「収益・費用の前払・前受」に修正されます。
→ 「繰延」や「見越」という表現が試験問題で使われなくなります。「繰延」や「見越」という表現が出され、「前払?」「前受?」「未収?」「未払?」と悩むことは無くなります♪
ただし、私の個人的な意見にはなりますが、経過勘定(前払費用、前受収益、未収収益、未払費用)の本質を理解するため、「繰延」や「見越」といった表現も踏まえて学習していただきたいと思います。
(8) 税金について
- ① 個人商店を前提としていた所得税が削除されます。
- ② 法人税・住民税・事業税が追加されます。
- ③ 消費税(税抜方式)が追加されます。
(9) その他
- ① 月次決算による場合の処理(簡易な内容に限定)が追加されます。
- ② 決算整理後残高試算表が追加されます。
→ ただし、改定以前から学習内容には含まれていました。
- ③ 繰越試算表が削除されます。
→ あくまで私個人の考えになりますが、出題範囲からは除かれても、簿記一巡の手続を理解するために学習上触れる可能性があります。簿記一巡の手続を理解しておくことは、個々の処理内容を理解するためにも非常に重要です。今後、どこかで簿記一巡の手続を紹介する記事も書いていきたいと思います。
- ④ 役員貸付金勘定・役員借入金勘定が追加されます。
4. 最後に
ひとまず、今回の記事では改定ポイントを列挙させていただきました。今後、改定された内容も含め、少しでも受験生に役立つ記事を書いていければと思います。
なお、この記事は2018年5月頃にアップされているかと思います。この記事を読んでいる受験生の中には、まだ2018年度の試験(第149~151回)が残っている方も多くいると思われます。2018年度中に受験のチャンスを残している方は、できるだけ早く合格しておきましょう!