【論文対策応援記事】その① 理論科目をどう学習するか

目次

1. はじめに

公認会計士試験は、短答式試験(年2回)と論文式試験(年1回)の2段階を通過する必要があります。はじめは短答式に合格(or一定の免除規定を満たす)する必要がありますが、毎回合格率が10%前後となっています。論文式に進むと、そのうち35%前後が合格する状況となっています。また、一度短答式に合格すると、その年度を含め論文式を3回受けられます。そのため、「短答式に合格すれば、論文式は何とかなる」という感覚を持っている方も多くいるのではないでしょうか。

しかし、各回合格率10%前後の短答式を通過した中での35%前後なので、短答式よりも熾烈な競争となるのは確実です。しかも、短答式は財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の4科目であるのに対し、論文式は会計学(財務会計論と管理会計論)、監査論、企業法、租税法、選択科目の5科目(会計学は実質2科目分となるので、実質6科目)となります。試験科目も増え、マークシートではなく論述の形式で解答するため、「短答式に合格すれば何とかなる」というほど甘いものではありません。

そこで、論文対策応援記事と称して、論文対策に役立つ記事を不定期で書いていきたいと思います。今回は、理論(論述)の対策をどのようにすればよいか、インプット面を中心に紹介していきたいと思います。

2. 理論問題の大まかなイメージ

ひとくちに理論(論述)問題といっても、いくつかの種類・形式があります。公認会計士試験の論文式では、概ね次のように分類できます。

① 語句の穴埋めなど
② 1行程度の超簡潔な記述
③ 3行以内の簡潔な記述
④ 4~10行程度の記述
⑤ 20行近くかそれ以上の長い記述

企業法や民法のような法律科目は⑤が一般的ですが、それ以外の科目は①~④の組み合わせがほとんどとなっております。実際にどのような問題が出され、どのような答案用紙となっているかについては、公認会計士・監査審査会のHPでアップされているものをご覧ください。

(例えば、平成29年度試験の試験問題および答案用紙が次のリンク先から見みることができます。)

3. インプットにあたって意識すべきこと

当たり前のことですが、本試験では初見問題に対して解答を書く必要があります。初見問題で、そのとき問われたことに対し、答案用紙の行数以内で、点数をもらえる答案を書く必要があります。

つまり、問われ方や行数が変わる中、持っている知識を自在に使いこなす「現場対応力」が求められることになります。したがって、テキストなどの教材を使ってインプットするときも、最終的には現場対応できる(自在に使いこなせる)知識をインプットしていくことが必要となります。
そのためのコツとして、次の3点を紹介しておきます。

(1) 趣旨・理由を説明できるようにする
(2) 暗記するのは「文字の羅列」ではなく「キーワード」
(3) アウトプットを重視する

(1) 趣旨・理由を説明できるようにする

各科目とも、様々な角度から問われることになりますが、「どのような取扱いとなるか(結論)」だけでなく、「なぜそのような取扱いとなるか(趣旨・理由)」を盛り込んだ記述をすることが多くなります。
したがって、テキストなどを読んでいくときも、趣旨や理由に相当する部分を拾っていくようにするとよいでしょう。
また、趣旨や理由を把握しようとすることで、結論的なことも自然と頭に入ってきます。当然、その内容に対する理解を深めることにもなります。

(2) 暗記するのは「文字の羅列」ではなく「キーワード」

どの科目についても、テキストなどの教材を見るとたくさんの文章があります。これらを「文字の羅列」と考えて、それを覚えようとするのはとてつもない精神的苦痛を伴います。というより、読んで理解するだけでも相当時間がかかるのに、これらを丸暗記するのはほぼ不可能です(ごく稀な特殊能力をお持ちであれば別ですが^_^;)。

そこで、文章の流れを把握し、それらをつなげていくキーワードを覚えていくようにすると良いでしょう。そうすることで、「文字の羅列」に比べてより多くの内容を覚えることができます。しかも文脈の流れを意識することになり、理解を促進しやすくなります。理解が伴うと、忘れにくく、自在に使いこなしやすい知識となります。

(3) アウトプットを重視する

テキストや模範解答を「読むだけ」では、論述の答案を書けるようにすることは難しいのではないでしょうか。はじめはツッコミどころ満載であっても大丈夫です。自分の言葉で文章を書けるようになるには、アウトプットとその軌道修正を積み重ねていくことが重要です。

アウトプットの手段としては、クレアールアカデミーが推奨している「スピーチ」や、論文答練を「書いて提出する」ことがあります。

日常的には短時間で多くの情報を回しやすい「スピーチ」を中心として学習していけばよいと思います。ただ、それだけでは「自分がどんな答案を書いてしまうのか」が分からないと思いますし、「どのように採点されるか」も分かりません。どんなにレベルの答案になろうとも、限られた回数の論文答練を必ず「書いて提出」することを徹底しましょう!

4. インプットの具体例

具体例を用いて、上記(2)で書いたキーワード暗記の感覚を紹介していきたいと思います。少し難しいかもしれませんが、次の問題を解くために必要となる基礎のインプットを考えてみましょう。

(問題)
わが国の討議資料「財務会計の概念フレームワーク」における資産の定義に照らし、繰延税金資産が資産として計上される根拠を述べなさい。

(模範解答)
討議資料「財務会計の概念フレームワーク」では、資産を「過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源」と定義している。繰延税金資産は、将来の法人税等の支払額を減額する効果を有し、法人税等の前払額に相当するため、報告主体の将来キャッシュ・アウトフローの減少をもたらすから、「報告主体が支配する経済的資源」と認められる。また、過去に生じた会計上の資産または負債の金額と税務上の資産または負債の金額に差異が生じたことに起因して発生するから、「過去の取引または事象の結果として」発生したものと認められる。したがって、繰延税金資産は資産として計上される。
※ アンダーラインは、解答にあたってのキーワードとなります。

この問題を解答するにあたっては、(1)資産の定義と、(2)繰延税金資産の内容を理解しておく必要があります。2つの知識を組み合わせて解答する応用問題ですが、その基礎となる知識は、それぞれ次のように整理しておくことができます。

(1) 資産の定義について

模範解答のとおり、資産とは、「過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源」をいいます。たった一文だけですが、「文字の羅列」として捉えると覚えづらく、また忘れやすいものとなるでしょう。
そこで、この文章に含まれる3つのポイントを把握し、そのキーワードを頭に入れるようにします。

① 過去の取引または事象の結果生じたものであること
② 報告主体(つまり当社)支配していること
③ 経済的資源であること

ポイントを3つに区切ってキーワードを抜き出すことで、覚えやすく、忘れにくいものとなります。答案で記述する際も、多少の「てにをは」は変わってもキーワードを外さずに書くことができます。

また、3つに区切っておくことで、これらの内容をブレークダウンする形で内容・理解を掘り下げていくことができます。

(2) 繰延税金資産の内容について

繰延税金資産は、一時差異等による将来の法人税等の支払額を減額する効果を資産として計上したものになります。一般的には、法人税等の前払額に相当するものと考えられています。

キーワードとしては、「一時差異等」、「将来の法人税等の支払額を減額する効果」、「法人税等の前払額に相当」といったところでしょうか。

ここで「一時差異」とは、貸借対照表に計上されている資産および負債の金額と課税所得計算上の資産および負債の金額との差額と定義されています(「等」の内容については割愛します)。

5. 最後に

上記4.の模範解答は、繰延税金資産の内容が資産の定義に合致することを説明しているのですが、複数の知識(キーワード)をどう組み合わせるか、その場で思考しながら文章を作っていく必要があることは実感していただけるかと思います。

最終的に、このような問題に対する解答を初見で書いていけるようにするには、普段から「自在に使いこなせる」ようにインプットしていくことがとても重要となります。

以上、理論対策に悩んでいる方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

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