【公認会計士試験対策】簿記の学習方法⑪(退職給付会計と税効果)

はじめに

今回は退職給付会計と税効果の論点の学習について取り上げます。どちらも難易度が高い論点ですが、本試験では必ず出題される論点なので確実に習得する必要があります。

退職給付会計

退職給付会計の論点は計算の過程がやや多いため、苦手とする方が多い分野かと思います。様々な用語が出てくるので混乱する方が多いかもしれませんが、やっていることは実に単純で、期末時点で企業が認識すべき退職給付債務の金額を算出しているのみです。テキストでも採用されている補助簿の図を書いて求める方法を反復して身につけましょう。
また、出題形式によっては期末時点の退職給付引当金残高と当期の退職給付費用処理額のみ解答させる場合も想定されます。このような場合、退職給付会計の論点の理解がいまいち進んでいない方でも受験上のテクニックとして以下さえ押さえておけば確実に得点を取ることができます。

  • ① 退職給付債務(実績)-年金資産(実績)-未認識数理計算上の差異(不利差異)-未認識過去勤務費用(不利差異)=当期末退職給付引当金残高
  • ②当期末退職給付引当金残高ー前期末退職給付引当金残高=当期退職給付費用発生額

上記の数式に登場する退職給付費用(実績)と年金資産(実績)は必ず問題文中に明記されているので、数理計算上の差異や過去勤務費用が発生しないケースの問題なら一瞬で解答を導き出すことができますし、数理計算上の差異が当期発生のような場合も簡単に未認識部分を求められるので、期末退職給付引当金残高を求めることはそれほど大変ではないと思います。当期の退職給付費用発生額についても、数理計算上の差異等が前期、当期ともに発生していないケースや前期の引当金残高が明記されているようなケースであれば簡単に求めることができますが、前期末から数理計算上の差異が発生しているようなケースでは上記①の数式と同様に前期末引当金残高を算出する必要があるため、少し手間がかかります。

いずれにしても、計算の手間が増えれば増えるほど他の受験生の正答率は低くなりますので、他の受験生が確実に得点するであろう問題で差をつけられないためのテクニック、簡単な問題で回りに差をつけられないためのテクニックとして、ぜひ押さえておいてください。
なお、上記の数式は検算にも使えます。数理計算上の差異の費用処理額等、退職給付引当金算出過程の数値を問われる問題の場合、ご自身が数理計算上の差異や期待運用収益等を積み上げて計算した退職給付引当金残高と、上記①の方法によって算定して退職給付引当金残高が一致する場合、計算過程が相当程度確からしいことを確認できます。

税効果会計

税効果会計の論点は、初学者の方がとっつきにくい論点の一つだと思います。短答式から挑戦している方にはしばらく先の話になりますが、租税法の学習が進むと非常にしっくり来るようになります。誤解を恐れずに分かりやすく言うと、会計と税務の制度の違いによる税金負担の違いを調整する目的の会計処理です。まだあまりピンとこないかもしれませんが、会計上当期の費用となっているものでも、税金計算上では当期の費用ではなく翌期以降の費用として取り扱われる場合があります。この場合、翌期以降の費用になり軽減されるはずの税金を当期中に既に支払ってしまっているため、会計上は税金の前払的ニュアンスで繰延税金資産及び法人税等調整額を計上することで、両者の差異を調整しています。

複雑な計算が必要な論点ではないため、テキストの例題の仕訳が切れるようになったところで理解したと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、形式的な仕訳のみで理解していると問題の形式が変わったときに対応できなくなってしまいます。会計上の資産・負債と税務上の資産・負債の帳簿価額の差額を調整することが税効果会計の目的であるという点を意識学習を進めてください。
また、問題を解く際には次の点を意識すると良いと思います。

  • 税効果会計において重点が置かれているのは繰延税金資産・負債のBS計上額である(法人税等調整額としてP/Lに計上される額ではない)ため、まず繰延税金資産・繰延税金負債を仕訳の中心として考え、繰延税金資産・負債の相手勘定に該当するものがない場合、法人税調整額として計上する。
  • 期末に計上すべき繰延税金資産・負債の金額を求め、前期末計上額との差額を法人税等調整額として処理する(こうすることで税率変更にも対応可能)。

税効果会計の考え方は他の論点でも必要となるため、確実に押さえましょう。

おわりに

今回は退職給付会計と税効果会計の論点の学習について取り上げました。どちらも重要かつ難解な論点なので、私も学習に多くの時間を割きました。一つの論点の学習に時間がかかると不安になってしまうかもしれませんが、間違いなく時間をかけていい論点だと思いますので安心して学習してください。
また、今回は退職給付会計の試験上のテクニックを紹介しました。本来、会計処理の趣旨に照らして順序通りに計算すべきですが、会計士試験の合格という最大の目標を優先するのであれば簡単かつ確実に解く方法があるのであれば積極的に採用するべきだと思います。