後悔しない監査法人の選び方

目次

はじめに

論文後3ヶ月の充実度が、就職後10年の充実度

最近、所属する監査法人での期初(年度始まり)のキャリア面談を行いました。そこでは毎年必ず、5年後、10年後のビジョンを聞かれます。将来ビジョンを踏まえたうえで、現在のキャリアの方向性を整え、そしてその充実を図るための目標設定を行うのです。このとき思い出すのが、会計士試験のときに考えた「合格後の将来ビジョン」です。

このビジョンを就職活動までにしっかりと描けていると、監査法人内でも数多くあるキャリアの中から、自分にとって最適なものを選び続けることができます。私の場合は、在籍10年で事業会社を起業するという目標のため、中小規模のクライアントを中心として早めに主査を経験すること、一流の監査を学ぶために基準の厳しい米国企業の監査チームへ参加したり、英米への海外出向をすることが監査法人キャリアでの方向性となっています。今回は、この「将来ビジョン」を描くために就職活動をどう活用するか、そしてそれをベースとした最適な監査法人の選び方について、ご紹介いたします。

1. 情報を集める

売り手市場を、使い倒す

今、会計士就職市場は、空前の売り手市場です。この最大のメリットは、積極的な採用担当者に対してこちらの希望を伝えれば、好きな職階、職種の会計士と会う機会がいくらでももらえることです。受験生にとって、現役の監査法人勤務者に会う機会は、大学のOB、知り合い、予備校の講師や先輩など、非常に限られたものです。たとえ知り合いがいたとしても、年の近い若手会計士だけだったり、一人、二人といった人数では、情報が本人の主観に偏っていることが多く、必ずしも就職に有用な情報を得られるとは限りません。監査法人のリクルーター(採用活動を担当する若手会計士)を利用すれば、その法人の様々な職種、職階の人に会うことができ、就職活動の要である「情報」を最大限入手することができるのです。

とにかく、会計士に会いまくる

はじめは将来ビジョンも何もない状態のため、ひとまず監査業務に携わる各職階の会計士に会うとよいでしょう。マネージャー以上となると、監査と並行してアドバイザリー業務やIPO(新規上場支援)業務を行う人もいるため、興味があればそういった方向に話を聞いてみるとよいと思います。個人的に一番お勧めしたいのは、監査法人に、系列の税理士法人やアドバイザリー会社の会計士を紹介してもらうことです。「キャリアスタートは監査法人」と決めている人にとっても、10年後以降のキャリアはまだ決まっていないはずです。10年後以降のキャリアビジョンを探索することも、就職活動の大事な要素だからです。監査法人勤務者に将来のことを聞くより、将来働いているかもしれない場所で実際に働いている人に直接話を聞く方が、格段に情報の質が上がるからです。

少しずつ、方向性を定める

監査法人の各職階や、海外勤務者、アドバイザリー業務従事者、あるいは税理士法人やアドバイザリー会社など、改めて並べると会計士キャリアの多様性をより感じます。でも、一人の人間が歩んでいくキャリアは、ひとつしかありません。自分が聞いた話の中で、直感的に「面白そう」とか、「やってみたい」という感情があるものがあれば、それがあなたにとっての最適のキャリアなのだと思います。「面白そう」というポイントは、仕事内容でも、話した人の人柄でも構いません。「やってみたい」という感情は、自分の得意なことでも、好きなことでも構いません。大切なことは、選択肢を大きく広げたうえで、100%自分好みに選ぶことです。周囲の受験生や先輩会計士に惑わされず、自分の心に従って方向性を定めていきましょう。

2. 将来を考える

まず、人生を考える

仕事とは、人生において大半を占める重要な要素です。仕事を決めることは、人生を決めることでもあるのです。会計士受験生の皆さんは、就職活動を、将来を見据えるチャンスと捉え、この先の人生でどんなことを成し遂げたいのか、何を得たいのかを考えてみてください。もちろん、それらに正解はありません。ただ一つ、自分だけの「心の底からワクワクする何か」を意識して探してみてください。一定以上の収入を得て平穏な家庭生活を営みたい、給料がどんどん上がるような刺激的なキャリアで勝負し、裕福な暮らしを実現したい、家庭と趣味の時間を大切にしたワークライフプランを立てたい、などなんでも構いません。「人生」という単位で考えた時、自分は何を求めているのか。これらを掘り下げていくことで、仕事に対する目標や考え方が自然と見つかっていくのです。

人生における仕事の意味

社会は、「しごと」で作られています。私が今、原稿を書いているこのPCも、外国のどこかの工場で人の手によって、あるいは人が作った機械によって作られたモノです。毎日食べる食料も、生産、加工、物流、流通、小売、飲食店など、実に多くの人を介して、我々の口に入ります。同時に、世の中は需給関係で成り立っています。どれだけ素晴らしいものを与えても、欲しい人がいなければいずれは淘汰されていきます。今現在の社会は、何十年、何百年の淘汰の結果として厳選されたモノたちで成り立っているのです。

サラリーマンは、労働市場の商品であるとともに、社会を構成するモノの提供者でもあります。前者は個人として、後者はチームとして、それぞれ社会に与える存在なのです。自分の将来キャリアを考えるうえでは、この2つの視点を常に持ち続けることが大切なのではないでしょうか。

3. 好き嫌いで決める

決断とは、心の底にある直感に気づくこと

就職活動の意義は、決断の際の選択肢を厳選することにあります。予備校通いの受験生にとて、監査法人勤務の現役会計士の世界は、新鮮かつ刺激的に映ることでしょう。特に、採用活動で表に出る会計士は、人事部や採用担当パートナー(会計士)から推薦された現場の精鋭たちがほとんどです。まさに法人の顔となる優秀な会計士たちが募る採用活動は、会計士業の魅力を知るうえで絶好の機会なのです。この中で、自分の琴線に触れるモノ、人、言葉に出会うことこそ、就職活動の最大の意義なのです。

最後は、「好き」と「楽しい」で決める

決断の失敗とは、その選択をあとから後悔することです。また、後悔は必ず「正しい」から生まれます。最高の決断とは、選んだ後、自らの手で正解に導く努力を自然に起こせるような、お気に入りの、愛着を持った選択肢を選ぶこと。世間が「正しい」とする常識、たとえば収入は高いほうがいい、休暇は多いほうがいい、会社規模は大きいほうがいいなど。これらに頼り、自分の心の声に耳をすませることなく「正しい」を根拠に決断すると、ほとんどの確率で後悔を引き起こします。

決断の成功とは、その選択によって人生が充実することです。「好き」と「楽しい」で決めた道であれば、途中で条件が悪くなったとしても、自分の手で正解に近づけることができます。最高の決断とは、選んだ後、自らの手で正解に導く努力を自然に起こせるような、お気に入りの、愛着を持った選択肢を選ぶことなのです。

おわりに

「就職活動は、10年勝負」

私が現在所属している監査法人を選んだ理由は、短答合格者採用の際、イレギュラーな応募だったにも関わらず前向きに対応してもらったこと、入所後に数々の「カッコいい先輩」を見つけたこと、そして働いていくうちに事務所のメンバーファームのブランドに誇りを持てるようになったこと、などです。要するに、今の法人が自分にとっての「お気に入り」になったので、合格後もお世話になることにしました。その決断から約2年、仕事の中での挫折はいくつかありましたが、法人選びの決断に関しては全く後悔していません。それどころか、先述したキャリア面談での将来ビジョンについて、法人が提供する機会の豊富さに、とてもワクワクしています。これは単に私がラッキーだったのではなく、選んだ決断を最大限、正解に導こうという努力を怠らなかったからだと思っています。何も難しい話ではなく、仕事の一瞬一瞬を最大限楽しみ、最大限貢献しよう、という心掛けの成果だと思います。

監査法人選びは大切な決断ではありますが、その成否はあくまでその後の自分自身に懸かっています。会計士受験生の皆さんは、「現場の精鋭たち」が集まる採用活動へ、自分なりのテーマを持って参加してみてください。自分だけのお気に入りが見つかったとき、会計士キャリアで最高のスタートダッシュが切れることでしょう。

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