「与える」努力か、報われる

目次

はじめに

「与える」人は、神社で神様と約束をする

神社は、神様と約束をする場所です。神様と「会計士試験に合格する」という約束をすることで、日々、緊張感を持って努力を積み重ねる。お賽銭は、小銭を手放すことで、身についた欲を捨てさせていただく行いです。私利私欲を抑え、人の役に立ちたいという大きなモチベーションを、思い出す。神社は、こうした「与える」行為を通じて、幸福になるためのヒントを神様に教えていただく場なのです。

会計士受験生で与える人とは、自分の経験を誰かのために役立てられる人です。自分が得意な論点を、苦手な人に教えてあげる。簿記2級を学習している人に、会計の魅力を伝える。周囲の友人に、会計専門家の醍醐味を熱く語る。合格するまでの過程であっても、既に手に入れた財産は必ずあるはずです。受験生時代から「与える」習慣を身につけ、人に役立つ喜びを、努力の原動力に換えましょう。

1.「与える」は、自立心を育てる

まず、自分に「与える」

心の満足度をコップの水に例えると、与える人は、困っている人たちにコップから溢れた水を差し出します。自分のコップを満たしているから、人に与え続けることができるのです。自分のコップが満たされていないのに与えようとすると、心は消費され、疲弊していきます。理不尽なサービス残業や無目的に嫌われない努力をしている人は、自分のコップを満たさずに他人の欲求を優先しているため、心が荒んでしまうのです。

自分の心に水を与えるには、プラスの感情を研ぎ澄まし、自分の内にある「好き」を集めることです。私は受験生時代から今に至るまで、時間を見つけては「好きなことノート」に、その時欲しいもの、好きなもの、やりたいこと、あるいは感動したことなどを書き記しています。こうした取り組みは、自分の中のプラスの感情を呼び起こすとともに、「嫌い」に対して敏感になる訓練になります。「嫌い」な瞬間を認識し、少しずつ減らす努力をする。同時に、周囲の「好き」をどんどん増やす。「心の収支」を黒字化し、「与える」ための土台を築きましょう

自立心は、理不尽を打破する武器になる

コップが満たされた人は、精神的に自立しています。「残業時間を20%削減する」というノルマに対し、「不要な業務を効率化し、心身ともに健康な状態で、より重要な監査手続にコストをかけよう」と、好意的に解釈します。「監査事務所の品質管理基準のため、必須研修を〇〇時間受講するように」という業務命令も、「大手監査法人の研修を頭に叩き込めば、将来独立した時に役立つはず」と、自分ごとに置き換えてしまいます。この違いが、受け身と与える姿勢の差なのです。受け身の姿勢の人は、ノルマを義務と捉え、マイナスをゼロにする努力をします。与える姿勢の人は、どうせならノルマを何かに利用できないかと思考し、ゼロから1を生み出す努力をします。この努力こそ、「与える」努力です。まずは自分に「与える」努力から、自分を守る自立心を育てましょう。

2.「与える」は、創造力を生む

「与える」監査とは、攻める監査

会計監査で大切なことは、法令遵守と価値創造(コンプライアンス&バリュー)です。まず、財務諸表がビジネスの成果を正確に表しているか、会計基準、諸法令を遵守しているかを確かめる。そのうえで、財務報告の側面から経営者または現場従業員に対し、会計専門家として有用な助言できるか。この2点が、問われています。

会計監査は、不正や粉飾決算があるたびに規制が強化され、世間の目も厳しくなります。金融庁や公認会計士協会からの指摘も、際限なく増加しています。こうした背景のもと、「価値のある監査」とは何かを考えた時、与える姿勢から生まれる「攻める監査」こそ、私の理想だと気付きました。

監査の価値を、再考する

「攻める監査」とは、価値ベースで監査を考えることです。法令遵守に対する形式的な手続は効率化を徹底し、「本当にリスクがあるところ」に対して重点的に監査手続を実施する。監査は、「適正な財務報告」を担保するために存在することから、「財務諸表で間違いがありそうなところ=重要な虚偽表示リスク」に対してさえしっかり手続を行えば、問題ないはずです。でも、監査法人には、金融庁、会計士協会、所属メンバーファームなどからの外部検査があり、「結果」より「過程」への不備をリスクと捉える傾向があります。これらばかりに気を取られていては、本当の意味での監査品質は、一向に向上しません。

価値ベースの監査とは、「財務報告の間違いを減らす、有効な監査」をすることです。その中には、会計処理方法や経理規定の不備といった監査上の指摘だけでなく、不要な労力をかけて作成している決算資料の廃止、内部統制の効率化提案のような「実務ベース」の助言も含まれます。後者も、会社のリソースをリスクに応じて適切に配分するという観点から、「財務報告の間違いをなくす」ことに有用なのです。外部検査に対する受け身の姿勢ではなく、クライアントに向けた「与える」姿勢を大切に、価値のある監査をしましょう。

3.「与える」から、余裕が生まれる

余裕は、つくるもの

与える人は、原因と結果の法則を大切にします。現状、多忙で心身が疲弊している状況にあるのであれば、「なぜ、こうなったか」を考える。そして同時に、「どうすれば打開できるか」を考える。この思考回路が癖になっていると、「ストレス」という目に見えない不安の連鎖を、断ち切ることができます。「与える」ためには、心、時間、お金の余裕が必要です。現状、どれかに不足を感じているのであれば、原因を探りましょう。今より1ミリでも改善できれば、それが昨日にはなかった「余裕」になるのです。

与えるから、与えられる

私が尊敬する作家の里中李生さんは、人生において「快楽主義」を勧めています。退屈で平凡な人生より、刺激的で感動を求める人生の方が、得るものも、与えるものも大きい。だから、「快楽主義」で感動を与える人生こそ、最高である。

この言葉を知ってから、私の対人関係におけるキーワードが「感動」になりました。クライアント「満足度」ではなく、「感動度」を上げる。人に喜ばれる仕事ではなく、人を感動させる仕事をする。役に立つ言葉ではなく、感動を生む言葉を伝える。人に対して常に「感動」を意識すると、桁違いに「与える」力が問われます。

与える人は、与えられる人です。この人のために汗を流したいと懸命に働き、満面の笑みで感謝される。受験生に自分の経験を惜しみなく伝え、将来に目を輝かせる姿を見せてもらう。大きな挑戦を目の前に立ちすくむ人の背中を押し、のちに彼が誰かの「与える」存在になっていることを知る。ふと立ち止まると、与えたもの以上に、「与えられている」事実に気がつきます。感動を「与える」努力こそ、報われるのです。学習を通じて、大切な人を感動させましょう。

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