短答に合格したら、監査をしよう

目次

はじめに

監査をするために勉強するか、勉強するために監査をするか。

合格前から監査の現場で生きた監査を学ぶ経験、お金をもらって勉強するという誇り、生涯の目標になり得る「憧れの会計士」との出会い。監査法人で働いてみないと得られない魅力が、短答合格者採用制度にあります。一方、こうした恵まれた環境でも、成果を出せない人がいます。私が所属する監査部門では、昨年度の短答合格者採用職員の論文合格率が、制度を始めて以来、最悪でした。そこで今回は、彼らがなぜ論文合格できなかったのかを分析するとともに、短答合格者採用の最強活用法を受験生の皆さんにご紹介します。

1. 仕事と監査の、つながりを大事にする

今、目の前にある仕事の意義を考える

短答合格者採用職員へ振られる仕事のほとんどは、「作業」です。売上テストにおける証憑突合、人件費の分析的実証手続の基礎データの更新、取締役会議事録のコピー取り。こうした監査手続の一部である切り取られた「作業」を繰り返していると、監査をしている実感が湧きづらく、ただの単純労働者になってしまいます。これでは、受験生が1日8時間コンビニでアルバイトしているのと同じで、せっかくの監査実務経験を勉強に活かすことができません。

監査調書を読めば、仕事が楽しくなる

監査手続としての売上テストは、監査計画のリスク評価に始まり、テスト方針の決定、サンプリング、証憑突合、テスト結果の評価と、多岐に渡ります。この流れの一端を担っているという自覚を持つことが、「作業」ではなく「監査手続」をするということです。そのために、監査調書を隅々まで読んでみましょう。監査調書は、短答合格者採用職員であっても、すべての項目を閲覧することができます。ポイントは、企業及び企業環境の理解、リスク評価、経営者ディスカッション、当期の監査戦略会議議事録などの監査計画です。パートナーが積極的に関与する監査の高い視点に触れ、目の前にある仕事を意味のある「監査手続」にしていきましょう

2. 伸びる人は、仕事に全力で取り組む

平日の学習時間を生かすか殺すかは、自分次第

短答合格者採用職員の仕事は、学習時間確保のために定時帰りが徹底されています。平日は毎日18時頃から学習できる環境が整っていることから、毎日2~3時間は継続的に学習できるのです。でも、職員の中には「業務後の学習が、1日の本番」と割り切り、仕事に対して消極的な人がいます。そこまででなくても、仕事でなるべく疲労感を抑え、夕方以降の学習時間に集中したいと考える人は少なくありません。

仕事に全力を出すと、経験と充実感が得られる

定時後に事務所に集まって勉強する職員たちの中で、集中できる人とそうでない人がいます。その違いは、仕事に全力を尽くした否かです。仕事に全力を尽くす人は、主体的です。自らが選んで決めた「働きながら勉強する」という道を、最大限活用しようという意識があります。この意識は、単調になりがちな仕事を「監査経験」へ、8時間の労働時間を「充実感」へと昇華させます

仕事に手を抜く人は、「やらされている」意識を持ち、仕事に義務感を感じます。義務感は、不満と疲労感を生みます。結果として、仕事に手を抜くほど、定時後の学習時間へのエネルギーを失ってしまうのです。

充実感は、受験生としての自信になる

私が短答合格者採用職員だった時、一番に考えていたのは「どうすれば監査チームに貢献できるか」でした。私なりの答えは、「圧倒的な作業スピード」です。データの入力や加工作業、コピー取りなどに対し、自分なりの最速法を試行錯誤しながら、最短の時間でこなしていく。結果として、仕事でご一緒した主査の方達には、大変重宝していただきました。試験に対しても応援の言葉を多数頂き、たくさんの人に支えられているという充実感が得られました。これこそ、私が論文式試験当日に感じた、最大のアドバンテージです。「私は、監査法人の看板を背負って、本試験を受けている」。この誇りが、自分の実力以上の結果を生み出してくれました。

3. 生涯の目標となる、憧れの会計士に出会う

出会いは、人を変える

今も昔も変わらない、本質的な仕事のモチベーションがあります。それは、「憧れの先輩」です。優秀な先輩は複数いても、自分の琴線に触れるたった一人の憧れの先輩の存在は、貴重です。憧れの先輩を追いかけることは、仕事の習熟とともに、人間性をも磨きます。

師匠に、出会う

私は、短答合格者採用職員時代に出会ったある先輩会計士が、今でも憧れの存在です。朝5時に始業し、17時に退社するという超朝方勤務、リスクが低い手続は流し、高リスクの手続に対しては人の3倍以上の労力をかけるリスク・アプローチの徹底さ、「クライアントのためにする」という視点で監査を行いクライアントから絶大な信頼を勝ち取る人間力。いずれも、私が目指している「一流の監査人」像にぴったり当てはまるものでした。

仕事でつまづいたり、思うような成長ができない時、憧れの先輩の姿を思い出します。彼の仕事に対する姿勢、監査への考え方を振り返り、今の自分の軌道修正をするのです。こうした師匠ともいうべき人との出会いは、監査法人の中に溢れています。自分の直感を信じ、「カッコいい」と思った先輩に対して積極的に声をかけていきましょう。

会計士の仕事を、知る

一般の監査法人就職活動に成功する秘訣は、大規模採用イベントの座談会を活用し、様々な会計士業務の生の情報に触れることです。インターネットや知人からの情報である程度、志望する業務が決まっている人もいますが、それはあくまで「今、知っている範囲で選んだ場合」の話です。その仕事を実際にしている人から話を聞かなければ、本当の魅力がわからないからです。

「監査法人在籍の受験生」という立場は、将来キャリアを描くうえで強力です。座談会にわざわざ参加しなくても、現場の先輩や彼らの紹介により、いくらでも多様な業種の情報が手に入る立場にあるからです。ただし、そうした出会いを手に入れるためには、主体的に動かなくてはなりません。自分のキャリアに責任を持ち、合格前から積極的に行動を起こしましょう

おわりに

手に入れた責任感で、監査法人に恩返しをする

私自身の経験として、短答合格者採用制度に感謝しています。大学卒業後、親の世話になりながら浪人生活を過ごしていた私にとって、この制度は自立のきっかけとなりました。働きながら会計士を目指す道を選ぶとき、応援していただいていた先輩会計士の方からは心配の声を多く聞きました。でも、私は働くことを選びました。生活費や身の回りの世話を含めて、すべて自分の責任で行い、自分の力で結果を出したかったからです。もちろん、そのまま受験に専念していれば、合格時の会計知識は間違いなく今より高かったかもしれません。しかし、私はそれと引き換えに、「責任感」という財産を手に入れました。

今、私の所属する監査法人では、短答合格者採用職員の論文合格率が、制度開始以来最悪という危機に瀕しています。今回、テーマに取り上げて対策を挙げてみたものの、根本的な原因については実際に職員と話をしなければわかりません。そこで人事部に掛け合い、事務所内の合格支援制度強化に携わることになりました。私は受験生時代、監査法人のこの制度を「使い倒して」合格を勝ち取ることができました。今度は監査法人が、現役受験指導を行う一若手職員を「使い倒して」欲しいのです。合格請負人として、そして誰かの憧れの会計士として、これからは気をより引き締めて、日々の業務に取り組みます。

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