短答合格は、人生を変える

はじめに

短答合格すれば、「今のままの自分」で会計士になれる

私が短答合格したのは、3度目の短答試験でした。直前の試験で十分な手応えを感じていたものの、今回で不合格だったら会計士を諦める覚悟で望んだところ、上位1%での合格ができました。その時にはじめて、「このまま行けば、論文も合格できる」と、会計士試験合格が現実的な目標に感じたことを、今でもはっきりと覚えています。会計士試験は長丁場ですが、私の感覚では短答合格は8合目。がむしゃらに、自分なりの方法で試行錯誤してきた受験生にとっては、それまでのトライ&エラー力を武器に、残りの2合を駆け上がることは難しくありません。今回は、短答合格者の皆さんへのお祝いとともに、これまでの受験機関の振り返りとして、ご自身の成果を紐解くヒントをご紹介します。

1. 短答合格の大前提は、計算力

退屈な計算の毎日に、彩りを

クレアール会計士講座を受講してまず始まるのが、簿記検定コースです。一にも二にも、まず、計算力。この考え方は、私が合格してから今に至るまでも全く変わらない、合理的かつ王道の戦略です。ただし、理論を学ぶ前に計算ばかりするということは、最初はどうしても丸暗記に近い形となり、退屈な学習期間になりがちです。私の場合、演習を繰り返し解いていくなかで多数の疑問点が生じ、その都度、質問担当講師の先生に質問をしていました。時折、実務や業界動向の話を織り交ぜながら該当箇所を解説してもらうことが、理解の促進とともに「会計学」への興味へ繋がりました。

計算力は、ある日急上昇する

財務会計論の石井先生がよくおっしゃっていますが、計算演習を繰り返していると、ある日を境に急激に成績が上がることがよくあります。おそらく、一度方法を覚えれば安定して点数を稼げる計算科目の特性上、日々、覚えては忘れての繰り返しの中で少しずつ蓄積された記憶が、ある一定の点から定着するのでしょう。短答合格者の皆さんのほとんどは、これを経験しているのではないでしょうか。あの時、愚直に計算演習に邁進した自分を、ぜひ讃えてあげてください。

2. 理論科目の暗記法が、個性だ

財務会計、管理会計は、計算との両輪で勝負する

短答試験で問われる理論問題は、基礎論点を横断的に問う傾向があります。したがって、範囲は膨大なものの、Aランクを中心に基礎を漏れなくカバーすることさえできれば合格水準なのです。特に、計算科目の理論問題は、「計算方法の根拠規定」がそのまま理論の論点になります。基準設定の背景や趣旨など、若干深掘りする必要があるものの、計算・理論の両輪をうまく噛み合わせ、体系的な理解を習得することが、合格への近道なのです。

企業法は原則中心に問題演習を、監査論は監査基準の熟読を

企業法は、正攻法である芦別問題集を愚直にこなすことに尽きるのですが、大切なポイントは「原則中心に」条文を覚えることです。一つ一つの条文にはそれぞれ趣旨(目的)があり、コアとなる考え方が詰まっています。数としては多く見える例外規定は、原則を適用しようとするとどうしても矛盾が起こってしまう場合に、やむなく個別に場合分けして規定を定めているに過ぎないのです。まさにニッパチの法則で、数の少ない原則条文が多くの場合に適用され、数の多い例外規定適用の頻度は少ないのです。

監査論は、体系的理解がカギになりますが、そのための手段は人それぞれ。監査基準委員会報告を一通り読む人もいれば、監査基準を熟読する人、テキストを読み込む人、問題演習をひたすら繰り返す人。ただ、実務論である監査論を学ぶには、教科書の文字だけだと分かりづらいのも事実です。ある受講生から監査論が苦手との相談を受けた私は、監査実務歴2年ながら、実際の実務ベースで過去問を解説して説明することにしました。すると、1時間あまりの解説にもかかわらず大きな糸口がつかめたようで、その後の理解が進み、直後の短答試験で8割を取れたとのことでした。

テキストの汚さが、個性

最近は、クレアールでも講義用レジュメが予め配布されたり、移動時間に講義を視聴する人が増えた影響で「板書」の機会が減っているように思います。それでも、短期間で合格する受講生を見ていると、ほとんどの人がテキストなりノートにぎっしりとメモを書き連ねています。私も、勉強法を研究した結果として「情報はテキストに集約すべし」との教訓を実践していました。講義中に先生が重要性を強調した論点、答練で何度も間違えた論点、テキストに載っていない重要論点などを、テキストの余白部分にひたすら書きました。

全く同じ講義、テキスト、答練を使っても、合格する人としない人がいます。短答合格を果たした皆さんは、教材の使い方に関しても、自分に最適な習得方法を見つけるために工夫を凝らしたことでしょう。その工夫こそ、トライ&エラー力であり、会計士試験で得られる最大の財産です。今後、論文試験に向けて、ぜひその習慣を継続していきましょう。

3. 短答合格を、大切な人へ捧げる

合格を伝えた人に、感謝しよう

短答合格者の皆さんが合格を伝えた人は、誰でしょうか。両親、家族、友人、予備校関係者、受験生仲間、あるいは職場の同僚。合格の報告は、それまでの長い道のりで応援してもらったことに対する恩返しになります。同時に、彼らへの感謝を伝える絶好の機会でもあるので、短答合格を一つの区切りとして、ぜひ感謝を伝えてみてください。

今度は、自分が誰かの目標になる

短答合格は、会計士試験の8合目です。ここまでの道のりを諦めず、自分なりの工夫で攻略してきた人は、受験生全体の中でも1割程度と一握りの存在です。短答合格者の皆さんは、これから論文合格、会計士キャリアのスタートとさらに前進していくなかで、後ろ姿を追いかける受験生たちの「目標」になっていきます。皆さんの中には知人や先輩の紹介で「憧れの会計士」を見つけ、その背中を一所懸命に追いかけた人もいるかもしれません。今度は、皆さんがその背中を見せる番です。少し気が早いかもしれませんが、「勝者の責任」を胸に、ぜひ素晴らしい会計士キャリアを描いてください。皆さんの活躍が、受験生にとって一番の応援メッセージになるのです。

おわりに

自ら下した決断を、自らの手で正解に導く

会計士試験への受験は、すべての受験生にとって大きなチャレンジです。「時間」という取り返しのつかない資産をリスクに晒し、どれだけ勉強量を増やしても100%になることはない試験合格を目指すことは、心身ともに大きなエネルギーを要します。人生で決断を下すことには、勇気が必要です。もしかしたら誤った選択をしたのかもしれないし、もっといい方法があったのかもしれない。大きな決断のあとには、こうした不安がつきものです。でも、人生の醍醐味は、決断を「正解」に変えてしまえる努力の可能性ではないでしょうか。これこそ、トライ&エラーによって生み出される最高の成果だと思うのです。短答合格者の皆さんは、会計士試験の8合目まで辿り着きました。「今のままの自分」で勝負できると確信し、8月の論文試験まで駆け上がりましょう。