未来への不安は、今日の充実で回避できる

はじめに

リスクに立ち向かうカギは、常に「今」にある

「今から会計士を目指して将来性はあるか」。3ヶ月ほど前から始まった受講相談者を対象にしたセミナーで、ほぼ毎回聞かれる質問です。クレアールの受講生の多くは社会人であり、30前後からリスクを取ってキャリアチェンジすることに対する恐れを感じている人が多いのでしょう。そもそも、会計士を目指すきっかけも現職の将来性に不安があるためだといいます。公務員で、上司の給料を知って将来を考えた、事業会社の事務職で、このままでは何も武器を持たない組織の歯車でしかない、など。いわば、「現状維持リスク」を認識した結果として、新たなリスクを取って会計士を目指すということなのです。成功には、リスクが不可欠です。そのためには、不要なリスクと必要不可欠なリスクを見極める力が必要です。今回は、こうしたリスクに対する適切な心構えを、受験生の皆さんにご紹介します。

1. 「やらなかった後悔」>>「やってみた後悔」

現状維持は、退化だ

人は年齢を重ねるにつれて、新しいことを敬遠する傾向があります。実体験に基づく経験の蓄積が「このままが正しい」という現状維持バイアスを引き起こし、新しいこと、今までと違ったことに対して過大なリスクを認識する傾向をもたらすのです。

人間の細胞はおよそ60兆個、そのうち3000億個程度は毎日入れ替わり、数ヶ月もすると体内の大部分の細胞は新しいものに更新されるといいます。現代社会において、当たり前のように毎日が過ぎ去っていくなかでも、人は細胞単位で日々変わり続けているのです。「自然の摂理」を胸に刻み、「現状維持リスク」を認識しましょう。

「変化」こそ、安定を手に入れる最強の武器

会計士を目指すか否かに問わず、職業人生を豊かにするためには、変わり続ける必要があります。では、変わるとはなにか。私は、「与えること」だと考えています。会計監査の世界では、保守的な産業とも言われますが、私が尊敬する会計士の方たちは「攻める監査」を実行しています。法定監査業務を最低限の仕事とし、クライアント経理担当者からの会計相談に多くの時間を割く、工場往査の際に工場長をはじめ現場担当者と懇親を深め、ビジネスの理解と潜在的なリスクを把握する、監査業務の効率化を徹底し、監査資源を割くべき新たな論点を見つける。変化は、新たな需要を生み出します。目まぐるしく変化する時代においては、新しいサービスが生まれては陳腐化する、繰り返しです。逆説的ではありますが、新しい価値を創造し続けること、「変化」こそが安定を手に入れる最強の武器なのです。

2. 本当のリスクを知る

新たなチャレンジをしないリスク

現状に不安と不満を持ち続けながら変わらないことには、人生において退屈で無駄な時間を過ごすという「寿命無駄遣いリスク」があります。高齢化と言われる現代において退屈な時間を引き伸ばす人生は、想像以上に辛く悲しいものです。いくら「安定」が欲しいからといって、幸福度が低い状態で「安定」しても、人生の充実感どころか虚無感しか残らないのです。

会計士を目指し、合格できないリスク

受講相談者が抱く最大の不安は、「不合格で受験期間を終えるリスク」です。言い換えれば、会計士試験に費やした時間が無駄になってしまうという、「時間リスク」です。社会人であれば、28歳から4年間必死に仕事に打ち込んでいれば、仕事の理解と充実感、他より早い昇進などが得られたかもしれないし、学生であれば、4年間の学生生活をサークルやアルバイト、旅行や就活など青春を謳歌できたかもしれない。そうした機会損失こそ、不合格をしたときの最大のリスクです。

3. リスクを回避するためには、今日の充実を繰り返すしかない

『置かれた場所で咲きなさい』(渡辺和子著、幻冬舎)

会計士を目指すことだけが、チャレンジではありません。社会人なら現在の仕事で、学生なら現在学んでいる学問や所属する課外活動で、「変化」を起こせばよいのです。同様に、会計士を目指す場合でも、合格後の「現状維持」を最大のモチベーションにするようでは、必ずまた不安と不満がやってきます。「変化=与えること」をキーワードに、日常を再定義してみましょう。

今日の充実が、自分に必要な「道」になる

哲学の世界では、時間という概念においては「今」のみが存在し、過去と未来はそれぞれ過ぎ去った「今」、来たる「今」という位置づけです。不思議な感覚かもしれませんが、世の中には「今」という時間が同時に、画一的に流れているだけなのです。

未来は、「今」の連続によって作られます。未来にどれだけ大きなリスクが待ち構えていても、「今」の充実を続けることで必ず回避できます。これは当たり前の話で、受験当初、論文式試験が死ぬほど難しいと感じても、本気で3年間勉強したあとは「戦えるレベル」の難易度になっているものです。もちろん100%合格できるかはわかりませんが、「今」の充実の積み重ねが相当程度リスクを低減することは言うまでもありません。未来の希望とリスクが遠ければ遠いほど「今」に対する重要度が薄まりがちです。不安を感じたときこそ、毎日の「今」を見直しましょう。

おわりに

自分への投資は、ノーリスク・ハイリターン

私自身は、自己投資をノーリスク・ハイリターンだと捉えています。それは、仮に失敗したとしても、それを教訓にし続ける限り、次なる投資への再分配として必ず回収できると考えているからです。たとえば、私が最もお金をかけているのが書籍代。多いときで1度に2万円程度、月に7~8万円ほど本を買いますが、「本の衝動買いは、100%自分のためになる」と強く信じているため、無駄遣いしたという感覚は一度もありません。もちろん、正確な成果はわかりませんが、感覚として本をたくさん購入している時期の方が公私ともに充実している実感があります。これから会計士を目指そうという人、いま必死に目指している人へ。自分史上最高の勉強量さえクリアできれば、合否を問わず、必ず未来の自分を助けます。「今」の充実に全力を尽くし、日々、前進しましょう。