ミニ四駆から学ぶ、トライ&エラー精神

はじめに

考え、行動する習慣は、すべてに活きる

今、ミニ四駆が熱い――。ミニ四駆といえば、90年台前半にブームとなった子供向け玩具ですが、近年では大人の趣味としても再注目されています。私が通う「タミヤ プラモデルファクトリー新橋」では、子供時代にブームを味わった20代後半から30代を中心に、連日多くの大人たちが楽しんでいます。ミニ四駆の魅力を一言で言うと、改造におけるトライ&エラーの面白さです。現代のミニ四駆では、坂道での着地や高速コーナーでの安定が求められる立体コースが主流のため、スピード以前にコースアウト対策が非常に重要になっています。いかにコースアウトせずスピードを伸ばせるかを、多様なパーツを組み合わせて追求するのです。特に面白いのは、正解が一つに限られないこと。直線重視とコーナー重視、安定重視とスピード重視、さらにはそれぞれの中でも複数のアプローチがあるなど、自由度が極めて高いのが大きな特徴です。

試行錯誤力は、会計士試験とともに人生を豊かにするために欠かせない要素です。今回はミニ四駆から学んだトライ&エラーの精神を、受験生の皆さんにご紹介します。

1. ミニ四駆を、知る

モーターと電池で7割が決まり、その他3割で勝負する

ミニ四駆は、電池によってモーターを動かし、壁面で囲われた専用コースを前後左右のローラーで伝いながら走行するマシンです。特徴的なのは、スピードの7割はモーターと電池で決まってしまうということ。裏を返せば、その他要素3に対して0.1ずつの積み重ねが非常に重要なので、かなり奥が深い世界とも言えるでしょう。

最大の魅力は、セッティングの奥深さ

ミニ四駆の魅力は、簡単に組み立ててすぐ走らせられる手軽さと、「改造」と呼ばれる公認改造パーツ(グレードアップパーツ、通称”G.U.P”)を組み合わせて0.1秒でも早いマシンを追求する奥深さです。セッティング最大の面白さは、各パーツの理解と試行錯誤にあります。ノーマル状態のマシンに速いモーターをつけると、必ずどこかでコースアウトします。このとき、なぜコースアウトしたのかを分析し、原因を突き止め、対策をして効果があったときが、たまらなく楽しいのです。なぜなら、これらを通じて各パーツの働きを実体験から理解し、今後よりスピードを上げていくための「基礎知識」を習得できるからです。私はまだミニ四駆をはじめて1ヶ月余りですが、前後のローラーやバンパー、重り、あるいはモーターの設置位置(フロント、ミッドシップ、リア)などの違いを地道に試し、日々、基礎データの収集を行っています。

2. コースアウトしないマシンを作る

コースアウトは、即失格

現代のミニ四駆レースでは、5レーンコースを5周して順位を争います。大きな大会になればなるほどコースの難易度は増し、予選走行では5台ともコースアウトしてしまうことも少なくありません。こうした背景から、ミニ四駆の基本として「コースアウトしないマシン作り」が肝になります。

なぜコースアウトしたかを、追求する

一口にコースアウトといっても、その原因は様々です。たとえば、上り坂ジャンプ後のコースアウト。これもいくつか原因がありますが、よくあるのが着地時にバタついてコースアウトすることです。この場合はマスダンパーと呼ばれる重りを、前後左右のバランスを見ながら装着することで対策できます。そのほかには、ジャンプ前のスピードを抑える目的で「ブレーキ」と呼ばれるリアバンパー+樹脂テープを装着することも有用です。大きな大会では、このブレーキの高さを0.1mm単位で調整することがカギになるとも言われています。もちろんこうした安定化セッティングはスピードを犠牲にしますが、まずはコースアウトしないマシンを作り、その後に余分な部分を削ぎ落としていくという方法が王道なのです。

3. スピードと安定性のトレードオフを見極める

セッティングの王道を、学ぶ

ミニ四駆はコースによって必要なセッティングが大きく異なりますが、どのコースでも必要な基本セッティングも存在します。たとえば、駆動部分のベアリング化。ノーマル状態ではタイヤをつなぐシャフトの接合部分やモーターのギヤ部分にプラスチック部品が使用されていますが、これを専用のベアリングに変えることで駆動効率が向上します。また、セッティングというよりメンテナンスとして、各部へのグリスアップ(注油)、タイヤ表面の清掃、モーターの慣らし運転(モーターは新品購入後、10分程度空運転をすると本来の性能を発揮する)など、基本となる手入れの積み重ねも、スピードアップには大切です。

コースに応じて、スピードと安定性のバランスを見極める

レースで勝利するためには、絶対的なスピードと、5周の間にコースアウトしないだけの最低限度の安定性が求められます。スピードを追い求めると安定性は失われていくため、究極的には、6週目にギリギリコースアウトしてしまうくらいの安定性を備えた、最高に速いマシンが理想なのです。ここで必要となるのが、コースに合わせた最適なセッティングを行うこと。たとえば、ジャンプが少ないコースではマスダンパーの重りは軽めで済みますし、平面のコーナーが多い場合はアルミローラーにしてコーナースピードを高める必要があります。逆に、タミヤ主催公式大会などで見られる高難易度コースでは、コーナーを安定化させるスライドバンパーや、リヤブレーキのシビアなセッティングなど、かなりスピードを犠牲にして、安定性を追求する必要があるのです。

セッティングのコツは、ボトルネックを見つけること

いずれにしても、セッティングをするためにはまず基本セッティングを施したうえで、試行錯誤の積み重ねが必要です。その際の方針として重要なのは、初めてのコースを走るときに最も難易度の高いセクションを見極める、いつも通うコースで他のマシンと比べて出遅れる区間を探し出すなど、「ボトルネックを明確にすること」です。なぜなら、セッティングの変更は、「効果がある順にする」のが大原則だからです。高価なパーツをどれだけたくさん購入しても、有効に機能しなければ意味がありません。今あるパーツの範囲で様々なパターンを試し、パーツの役割や特性を理解した上で、ボトルネックから改善する。そうして少しずつセッティング力を高めていくことが、最速ミニ四駆レーサーになるための最短距離なのです。

おわりに

「結果」より「過程」が大事なのは、将来に差がつくから

ミニ四駆の世界では、大会入賞者や上級者が自身のセッティングを公開していることも多いため、時間とお金さえかければほとんど同じマシンと速さがすぐにでも手に入ります。でも、そうして手に入れた速さは、コースが変わればすぐに失われてしまうとともに、各セッティングの意味を理解しないままに行った装備では、「セッティング力」というミニ四駆に欠かせない能力が一向に身につかず、なによりミニ四駆最大の面白さである「自分だけのマシン作り」を味わうことができないのです。

実は会計士試験においても同様のことが言えます。合格体験記を読み漁り、合格者には各科目別の攻略法を事細かに聞き、最短で合格する最高に効率的な勉強法を知りたがる人がいます。でも、本当にそれでいいのでしょうか。会計士試験を合格するということは、会計・監査の専門家として、社会の問題に対して助言する立場につくということです。勉強法を真似しただけで受かった人は、その後のより専門的な知識を習得する力が乏しいと思うのです。むしろ、専門家として継続的に知識を習得するための準備段階として、会計士試験受験を大いに活用してほしいと思っています。合格後、30年以上続くであろう専門家キャリアの大切な礎として、自らの頭で考え、行動し、改善する「トライ&エラー力」を磨きましょう。