モチベーションに悩む受講生に伝えたい、「本当にやりたいこと」の見つけ方

はじめに

マインドセットチェンジ、「人生は絶対に面白い」

先日、「マインドセットチェンジ」という価値観の多様性についてのセミナーに参加しました。そこでは、後述する女子高生時代にエベレスト登頂を志し19歳で見事成し遂げた南谷真鈴さん、地元の漁師さんと全国の飲食店をつなぐため、大きな反発を乗り越えて漁業改革を行った坪内知佳さん、「全国公務員が1%ずつ意識・能力を上げたら、世の中めちゃくちゃ良くなるんじゃないか」をテーマに全国の公務員を集めて交流・セミナーを開催する脇雅昭さんなど、現状の価値観を打ち破り、世の中を良くするために変革を起こす人たちの話をたくさん聞くことができました。率直な感想は、「人生ってこんなに面白くなるんだ」。登壇者の皆さんそれぞれが、各分野に対して大きな野望や志、なにより「もっと世の中の笑顔を増やしたい」という思いでたくさんの行動を起こし、多くの成果を成し遂げていました。受講生の皆さんには、このエッセンスを少しでも取り入れていただき、自分の「本当にやりたいこと」を見つけるヒントにしてもらえればと思います。

 

1.自分を突き動かす心の声

余命半年、死ぬまでにやりたいこと

非常に興味深かったのは、「なぜこのような行動を起こしたのか」という問いに対し、皆さんが「死」というキーワードを語っていたことです。漁業改革の坪内さんは、ある病気で余命半年と宣告された当初は大学生で、有名企業からの内定を辞退し、地元の小さな島の漁業を日本中に広める決意をしました。公務員意識改革の脇さんは、父の死をきっかけに、2年ほどかけて構想を練っていた「よんなな会」の計画を、「今すぐやらなければ、死ぬときに後悔する」と思いたち、小さな行動を積み重ねた結果800人規模のセミナーとなりました。また、スティーブ・ジョブズは死について、「人生の決断の際に大切なツールである」と述べ、死に直面すると見栄やプライド、外部からの期待、失敗や恥への恐れなどは意味を無くし、「本当に大切なこと」すなわち「心の声」のみが残る、と直感の重要性を語っています。

19歳女性がエベレスト登頂を達成したモチベーション

7大陸最高峰日本人最年少登頂記録保持者の南谷真鈴さん(21)は、自分の生い立ちからなぜ登山の道を志したのか、人生において大切にしていることはなにかなどを力強い言葉で語ってくれました。彼女のモチベーションは、「自由」です。幼い頃から親の転勤で4年に1度は国が変わるという不安定な環境で育った影響で、彼女は思春期になって「自分のアイデンティティはなにか」と非常に悩みました。ところが、高校の課外授業で香港の山を登ったとき、普段の高層ビル群を見下ろすと、それらはとても小さく見え、「自分はこんな小さな悩みをしていたのか」「山に登れば、もっと大きな世界が見えるはず」と、心を突き動かされたそうです。それからというもの、いちばん高い山であるエベレスト登頂に向けて、当時17歳の女子高生だった彼女はスポンサー探しのために毎日100通以上のメールを送信したり、エベレスト登頂経験者を探してアドバイスをもらいに行ったりしながら、自分の夢に一歩一歩近づいていったのです。

 

2.やりたいことを見つけるには、「自分との時間」が不可欠

1日5分の内省が、5年後の自分を変革する

真鈴さんは、「心の声」に突き動かされて、エベレストに始まり世界7大陸最高峰を制覇しました。そこで彼女が強調していたのが、自分との内省の時間です。現代は、テレビ、インターネット、SNSなど外部からの情報が氾濫しているため、心の声に気づきにくい世の中になっています。彼女は、「一日、5分でもいいから内省の時間を作るべき」と言っていました。結局のところ、自分の頭でなんとなく思っていることのほとんどが、「他人が考えたこと」なのです。「お金=幸せ」「仕事=大変、努力」「モノ=便利、満足」。数え上げればきりがないですが、こうした無意識のうちに染み付いた「他人の価値観」で生きていると、「自分が何をしたいのか」と考える力がどんどん衰えていき、最終的にはただ毎日を生きるだけの無目的な人間になってしまいます。彼女はそのような人たちを、「魂が死んでいる人生」と表現していました。裏を返せば、自分の精神にしっかりと向かい本当にやりたいことを続けられている人は、肉体の衰えである年齢にかかわらず「魂が生きている」人生となるのでしょう。

じぶん成長ノートで、本当の自分を知る

私は一人暮らしでテレビのない部屋に住んでいることもあり、大好きな読書とともに「じぶん成長ノート」と題したノートに、やりたいこと、欲しいもの、今感じていることなど自分の頭の中にある言葉をよく書き出すことを習慣にしています。ノートにこうした願望や感情を書き出すと、未来にワクワクしたり怒りや悲しみを吐き出してすっきりしたりと、思考と感情の整理に役立ちます。また特にその効果を感じるのが、多忙で「じぶん成長ノートタイム」を作れなくなったときです。普段は人よりも仕事のモチベーションが高いといわれる私ですが、目の前の仕事に振り回され内省の時間がなくなると、「仕事はつまらなく大変なもの」「仕事とプライベートは別」「仕事は我慢して続けるもの」といった世の中の常識に染まっていることにふと気が付きます。世の中の流れに逆らうことだけがすべてではないですが、「自分はなにがしたいのか」というポイントは目的のない人生を歩むうえで極めて重要です。日中は誰しも他人に囲まれて、無意識のうちに見栄やプライド、偏見や固定観念に囚われて生きています。だからこそ、夜寝る前の5分の内省時間で「何にも縛られない素のじぶん」を少しずつ見つけていくことが、やりたいこと探しだけでなく「自分の人生」を生きるためにとても重要なのです。

 

3.会計士が、社会を変える

すべての仕事は社会貢献

公務員の意志・能力を底上げして世の中を良くしたい、という脇さんの考え方の根底には、「やらされている仕事」と「やりたい仕事」のパフォーマンスの違い、すなわち「ワクワクすることの重要性」がありました。印象的だったのが、街中のゴミ収集車をめちゃくちゃ派手なカラーリング+ざまりん(神奈川県座間市ゆるキャラ)という斬新なデザインにした試みです。彼の問題意識は、ゴミ収集車の清掃員は街中をキレイにする素晴らしい仕事なのに、ゴミのイメージやにおいの問題で怪訝な顔をされることが多いというところにありました。「もっと清掃員の方にスポットライトを浴びせたい」。こうした気持ちから、前述のカラーリングを施したゴミ収集車を投入してみたのです。結果は、大成功。まず、子供たちの人気者になりました。子供たちはゴミ収集車を見つけると、「ざまりん!」と笑顔で指をさしてくれるようになり、清掃員に対して親御さんたちも笑顔を見せるようになりました。さらに、子供の注目度が高まった副次効果として、清掃員が安全運転を以前に増して心がけるようになったり、これまでは規則で仕方なくやっていた洗車作業も自主的に毎日のように行ったりするようになりました。「ワクワク」がベースにあれば、モチベーションだけでなくパフォーマンスも向上し、なによりみんながハッピーになる。脇さんの発想力・行動力もさることながら、人をワクワクさせることの大切さを身に染みて感じました。

社会に対し、会計士ができること

会計士は、他の職業以上に社会的使命を考えることが多いでしょう。それは、監査証明業務という法律で定められた独占業務を担うからです。資本市場の透明性を担保するため、財務諸表に信頼を付与する仕事。お役所的な側面からいうと、「間違いのないことを確かめる」という単調な仕事ともいえます。

でも、こうした仕事が本当に世の中を良くするために働いているのでしょうか。そもそも会計士が支える資本市場は、世の中のためになっているのでしょうか。また、財務諸表の信頼性は、企業の財政状態・経営成績が会計基準に準拠して適正に表示されていることをもって測られていますが、そもそもこの会計基準は正確な物差しとして機能しているのでしょうか。さらには、世の中の価値はお金だけで測れるものなのでしょうか。私にも確固たる答えは見つかっていません。一つ言えるのは、これからの会計士には法定監査などの枠にはまった仕事ではなく、その枠自体を疑ってかかる力、それらを世の中にあったものに変えていく力が必要なのではないかということです。AIの技術などは監査の枠組みを変えるほんの一例にすぎません。今ある選択肢から選ぶという受動的考えではなく、自分で新たな価値や仕事を生み出すという能動性が大切なのではないでしょうか。

 

おわりに

すごい人に会えば、やるべきことが見えてくる

日頃から本を通じて成功者の考え方に触れている私も、多ジャンルの「すごい人」から生で話を聞けたことで、とんでもなく大きな刺激を受けました。冒険家の真鈴さんからは、「心の声」に従えば、どんなに大きな夢も現実に近づけられること。漁業改革の坪内さんからは、死を目の前にすると「本当に大切なもの」に気づくということ。公務員改革の脇さんからは、士気の低い同僚を見て「彼らが全員1%向上すれば」と考える「逆転の発想力」と、「ワクワク」の計り知れないパワー。本にしたらそれぞれ10ページくらいにまとまる内容でしたが、彼らの話し方や表情から、情熱、愛情、なにより成功も失敗もワクワクして乗り越えている姿がとても伝わったことで、非常に大きな刺激を受けました。

「本当にやりたいこと」がまだ見つかっていない受講生の皆さんは、自分のキャリアを「会計士畑」という狭い狭い世界から選ぼうとしていませんか。世の中はとても広く、まだまだ広がっていきます。まずはいろんな「すごい人」に出会い、刺激を受け、感じるがままに目標を探してみてください。そうしていくうちに、自然と「モチベーション」という言葉を忘れるくらい、日々のやる気が高まるはずです。