短答を目指す方にこそ伝えたい、就職活動の考え方

はじめに

就職活動の基礎は、合格のための基礎

今年の論文式試験も終わり、会計士業界の就職活動が徐々に始まりつつあります。手ごたえがあった人もそうでない人も、採用イベントに参加すると、いよいよ会計士キャリアが始まるんだという実感も湧いてくるのではないでしょうか。
私は会計士講座を受講開始したその年の10月に、知人のつてで、大手監査法人のリクルーターの方、リクルートパートナーの方とお会いする機会をいただきました。まだ短答を1度も受けていない状態でしたが、現役で活躍されている会計士の実務エピソード、法人のキャリアパスの話などを聞き、とても感銘を受けたことを覚えています。

会計士受験生にとって就職活動は、試験合格と共にひとつのゴールであり、輝かしいキャリアを描くためのスタート地点です。そして、「ゴール」をイメージすることは、目標達成において、日々の継続的なモチベーションになる重要な要素です。

 

1.キャリアの最終目標を考える

人生の目標を中心にする

公認会計士資格と人生の目標は、どこかで必ず結びついているはずです。私の人生の目標は、本を読みたいときに読みたいだけ読む、幸せな家庭を営む、社会貢献とビジネスを両立して年収5千万円稼ぐ、でした。こう並べてみると、監査法人との関係があまりないようにも思いますが、本音をベースに深堀りしていくと、監査法人で何をしたいか、何をすべきかが明確になります。

私の例でいうと、「本を好きなだけ読む」「幸せな家庭」というのは、「勤務時間の裁量・柔軟性が大きい」あるいは「労働時間ではなく成果物で個人業績を評価する風土」という条件につながります。「独立して年収5千万稼ぐ」は、「成長意欲の高い風土」「実力次第で多くのチャンスをつかめる環境」に結びつくでしょう。

ジョブズに学ぶ、監査の先にあるキャリア

「監査をやるために会計士を目指したわけではない」と言い、監査法人をできるだけ早く「卒業」したいと考える人は少なくありません。しかし、私はどんなキャリアを描くとしても、監査業務は必ず役立つと確信しています。会計士1年目の私が断言する理由は、アップル創業者のスティーブ・ジョブズの名言、「点と点は、のちに必ず結ばれる」という言葉を信じているからです。

ジョブズは、貧しい両親が18年かけて必死に貯めた資金で大学に進学したものの、「やりたくない必修科目」に嫌気がさし、半年余りで退学してしまいます。その代わり、退学後は好きな授業だけを受け続け、そのうちの一つに「カリグラフィー(文字を美しく見せるための手法)」がありました。この経験と知識は10年後、世界初の美しいフォントを持つPC(マッキントッシュ)の実現につながりました。ジョブズが言う大切なことは、①直感に従い好きなことをやる、②点と点は「あとから」結ばれる、です。②の真意は、無理に詳細な計画をせずとも、「たった今」興味・関心があることに突き進めば、必ず人生のどこかで活きるという教訓です。受験生の皆さんにはこれをヒントに、就職先や監査業務のキャリアパスで好きなこと、興味のあるものを見つけてみてください。

 

2.監査法人でできることを考える

意外と多い、業務の幅

私の現在の業務は、監査スタッフ業務6社(上場2社、国内子会社1社、外資系3社)、リクルーター(採用活動担当者)、大学生向けキャリア支援活動、短答合格者採用者サポート、クレアール学習相談、合格者ブログ執筆です。これらに加えて、アドバイザリー業務やIPO監査など、まだまだ多くの可能性があります。そして、このように手を挙げたら多くを任せてもらえる「自由な環境」は、私にとって監査法人最大の魅力です。

多様性を認める組織

入社時年齢、前職、学歴、その他バッググラウンドは非常にさまざまです。在学中合格から新卒入社の人は1~2割程度で、浪人やフリーターを経て入社する人や、事業会社で経理や営業、SEなどをしながら合格して入社する人も少なくありません。入社後に関しても、早朝出社で夕方頃に帰る朝型勤務の人、育児等の時短勤務の人、さらには成果はきっちり残して残業を極力しない人というように、働き方も多様です。特に働き方に関しては、各大手法人で積極的な取り組みを行っており、ITテクノロジーを利用した業務効率化と並行して推し進められています。

たくさんの「点」を描く

前述のジョブズの名言、「点と点は、のちに必ず結ばれる」においての「点」とは、「熱中した経験」です。学生時代の部活動や趣味・特技など、好きなこと、情熱を注いだものすべてがその対象になるのです。私の場合は、幼少期に熱中した「クルマ」、学生時代に熱中した「野球」、浪人時代に没頭した「本」が、人生における「点」でした。監査法人勤務をはじめてからは、「会計監査」「ブログ執筆」「受験生指導」も新たな「点」として加わりました。

監査法人に限らずプロフェッショナル・ファームと呼ばれる専門家集団(会計士、コンサルティング、弁護士等)に所属していると、個人の能力を向上させる多様な成長機会と業務経験が得られます。この利点を最大限生かすためには、法人内外の選択肢から好きなこと、熱中できることを選ぶことが必要です。こうして得られた「点」の数々は、のちに必ず何かの形となって大きな「線」となります。したがって、社会人キャリアの序盤における監査法人経験は、非常に将来性のある選択肢なのではないでしょうか。

 

3.どんな人と働きたいかを考える

オーダーメイド型の採用活動を活かす

会計士業界は現在人不足で、就職活動では売り手市場が続いています。大手監査法人の採用活動は、説明会よりも飲み会が主になりつつあるのではないでしょうか。リクルーターを中心に、時にはマネージャーやパートナーを連れて、担当する受験生ひとりひとりに法人の魅力を伝える。このような趣旨で、より受験生個人に目を向けた採用活動が繰り広げられているのです。私も受験生時代は、リクルーターの方に「海外駐在経験のある人」というお願いをして、ベルギーに2年間駐在した経験のあるパートナーの方と食事をご一緒させていただいたことがあります。

監査法人選びは、条件より直感

就職活動に主体的に取り組めば、こうした飲み会の機会も多く得ることができますが、多くの人から話を聞くことでかえって悩みが増えてしまうケースも少なくありません。大手か中小か、大手なら4つのうちどれか。比較の対象は、業務内容、希望のとおりやすさ、人や社風、給与待遇など人によって様々。多くの人は、各条件をじっくりと比較して就職先を吟味しますが、私は直感でスパッと決めてしまうことをお勧めします。なぜなら、直感というのは根拠がまだ言語化できていないだけで、心の底では本音ベースの確固たる根拠が存在しているからです。つまり、「なんとなく、良さそう」と思うその気持ちこそ、決断における最大の根拠になり得るのです。

 

おわりに

最後は、好き嫌いで選ぶ

私が現在勤務する監査法人を選んだ決め手も、直感でした。細かく挙げれば、自由な風土、アシスタント時代に出会った憧れの先輩方、働き方の柔軟性等多くあります。それでも、最後の決め手は、「なんとなく、ここで働いたらカッコいいな」「なんとなく、今の自分に雰囲気があっているな」といった程度の気持ちでした。言葉にするとあいまいな感じも受けますが、心の中では十分自信のある根拠でした。そして合格してまもなく1年を迎える今、監査という仕事を心から楽しめていること、組織の雰囲気、人材育成、その他諸制度への高い満足度から、この決断が自分にとってベストだったと改めて感じます。

就職活動の成否は就職内定受諾時ではなく、就職後からその後5年、10年の充実度で決まります。受験生の皆さんは、就職活動の早い段階もしくは受験期間を通じて自分の好きなこと・やりたいことをじっくり探し、最後は思い切って好き嫌いで決めてみてください。その先には、必ず自分の思い描くキャリアが待っているはずです。