通信講座の悩みを『シンプルに考える』

目次

はじめに

勉強の悩みは、すべてシンプルに解決できる

先日、LINE株式会社前CEOの森川亮氏の著書、『シンプルに考える』(2015年、ダイヤモンド社)を読みました。「物事の本質はシンプルである」というメッセージを、LINEの成功秘話や自身の野心的なキャリア経験を交えて伝えています。「戦わない」「差別化は狙わない」「計画はいらない」。目次には、一見、刺激的な言葉が並ぶものの、その本質は、情熱、ユーザー志向といったシンプルな原則を愚直に貫くことの大切さでした。

「シンプルに考える」ことは、簿記講座や公認会計士講座においても重要です。特に通信専門であるクレアールでは、一人で壁を乗り越えなければならない場面が多くあります。当校のみを利用して学習した私の経験も踏まえ、受講生の悩みの解決法をシンプルに考えていきます。

 

1.悩み①:モチベーションが上がらない

本当に会計士になるべきか、自分に問う

「なぜ会計士になりたいのか」というシンプルな問いに、一言で答えられるでしょうか。モチベーションに悩む最大の原因はここにあります。大切なことは、それらを少しずつ言語化していき、受験期間にわたって具体化していくことです。私は受講当初、就職の強みにする、自己成長の手段にする、自信を手に入れるという理由で勉強をしていました。2年半の受験期間では何度もスランプに陥り、浪人生活にもかかわらず半年ほど勉強から離れた時期もありました。そんなとき、私を救ってくれたのは本でした。小説から実用書、哲学書まで様々な本に触れることで、自分の内面と向き合い、「本当にやりたいこと」を少しずつ言葉にしていきました。その甲斐あって、論文式試験の頃には「大企業の監査で内部統制と連結会計を習得する、海外赴任でリーダーシップを学ぶ、高い品質の監査を提供する会計士になる、社会貢献とビジネスを両立させて5000万円稼ぐ」など、自分がワクワクする目標と試験合格とを結びつけることができたため、自然とモチベーションが湧いてくる状態にすることができました。

モチベーションより、小さな習慣の積み重ね

他の回も含めて、モチベーションの明確化が大切であることを繰り返し述べてきました。それでも「モチベーションが上がらない!」という受験生のために、一つの事実をお伝えします。それは、モチベーションは小さな習慣の積み重ねから生まれる、ということです。『小さな習慣』(スティーブン・ガイズ著・田口未和訳、2017年、ダイヤモンド社)では、従来のモチベーション→行動という図式ではなく、小さな習慣(たとえば、ダイエットのために毎日1回腕立て伏せをする)→モチベーション(もっと痩せたい)→行動(10回ずつにする、週に1回ジムに通う)という流れが重要であると説いています。そのために、モチベーションにかかわらずできる小さな習慣(計算問題を毎日必ず1問解く、理論テキストを1ページ読む)を続けてみてください。唯一の条件は、必ず100%の達成率となるように目標設定をすることです。感情に左右されずに小さな習慣を積み重ねていくうちに、自然と具体的なモチベーションが湧きおこり、より大きな行動につながるのです。

 

2.悩み②:成績が思うように伸びない

9割の原因は、「勉強量」

成績が伸び悩む最大の原因は、勉強量にほかなりません。といっても、会計士試験の範囲は膨大なため、厳密には「各科目に割くべき勉強量」が足りないことが原因です。たとえば、短答は4科目ありますが、なかでも計算2科目、特に財務会計論の習得所要時間は膨大で、私個人は監査論の4~5倍程度の時間を要しました。しかし、ある程度学習が進んでいるのにも関わらず成績が伸び悩む受験生の多くは、計算科目を習得せずに理論科目に時間を割き、全体的に合格点を1~2割下回るという結果に陥っています。大切なことは、1にも2にも、まず計算科目を仕上げることです。極論、簿記1級を合格するまでは理論2科目はノータッチでも構いません。この場合には一発合格は厳しくなりますが、そもそも一発合格をするためには絶対的な勉強量が桁違いに必要です。一般的な勉強量をもって臨む人の場合、勉強時間の配分方法が合否に直結するため、目先の短答より、次々回の短答とその先の論文に向けて計算科目を仕上げることが最良の戦略なのです。

科目別攻略法は、トライアンドエラーが最良かつ最短

自分が持っている勉強時間を各科目に振り分けたあとは、学習内容の工夫です。多くの受験生はここについても悩みを抱えています。講義、テキスト、問題集は何回繰り返すべきか、どの教材をメインで学習すべきか、過去問は必要か、など。有限である時間を1分たりとも無駄にしたくないという気持ちは大切ですが、友達から借りたノートを眺めるだけでは身につかないように、自ら考え、理解しながら、ノート作りならぬ「戦略づくり」をしなければ、思うような効果が挙げられないのです。

ただし、丸ごとコピーでなければ、合格者や講師推奨の方法論を学ぶことは有用です。たとえば、当校HPの「講師コラム」の「公認会計士試験対策では過去問を活用した方が良いのか?」では、山田先生が過去問を解く重要性を述べています。私も受講時にこの「過去問の使い倒し方」を教えていただき、大いに活用しました。本試験問題は各試験科目における著名な学者・実務家により、1年という歳月をかけて作成される「コストのかかった」問題です。

さらには、国家試験として実務家になるための知識を問う観点から、奇をてらった問題ではなく「本質を深く問う内容」になっています。そのため、一見、難しそうな問題でも基礎を習得するのに絶好の良問であるケースが多く、学習の前半で過去問を活用することは極めて重要なのです。コラム内にあるとおり、具体的な活用法は各自の勉強スタイルに合わせてください。「絶対的な攻略法」を探すのではなく、攻略の基礎を知り、そこから自分流にカスタマイズすることが、トライアンドエラーを成功させるカギとなります。

 

3.悩み③:受験の孤独に耐えられない

本質的には、すべての受験生は孤独である

会計士試験では、2~4年程要する長い道のりが待っています。その過程で様々な悩みや不安が訪れますが、通信講座ではそれらを一人で抱え込んでしまうことも、少なくありません。では、通学講座で仲間に囲まれ、適宜悩みを打ち明ける仲間がいれば、不安・悩みを解決し、孤独は解消されるのでしょうか。否、必ずしもそうではありません。通学講座で合格した監査法人の同期は、休憩室でいつも勉強の愚痴をこぼしているグループは、決まって受験が長期化している人たちだったと言います。もちろん、お互いを高めあう勉強仲間を見つけ、適度にコミュニケーションを取ることは試験合格に有用でしょう。しかし、いずれにおいても受験生活の9割以上は、孤独に一人きりで机に向かわなければなりません。その意味で、すべての受験生は孤独なのです。大切なことは、この本質を受け入れ、孤独の必要性に気が付くことです。

孤独に耐えるとは、自分を受け入れること

世の中の多くの人は、「孤独」という言葉に対して、不安、独りぼっち、寂しいといった否定的な印象を持っています。でも、よく考えると受験生に限らず人は皆、孤独なのではないでしょうか。この世に産み落とされた瞬間も「ひとり」、自分という人生を歩むのも「ひとり」、この世から旅立つ瞬間も「ひとり」。哲学的な話かもしれませんが、すべての人は、自分の人生を「ひとり」で生きているため、他人の体に入り込んで「一緒に」人生を生きることはできないのです。そして、孤独に耐えるとは、自分を受け入れるということです。心理学の世界では、自己受容は母親から与えられる愛情が源泉だと言われています。幼いわが子が様々な失敗をしても笑顔で受け入れ、少しずつ躾けていくように、自身の不安や短所を自分の一部として「仕方ないか」と一旦受け入れ、必要に応じて少しずつ改善していくという心構えが自己受容なのです。

孤独の先にある財産、自己肯定感

自己肯定感とは、「自分には価値がある」という漠然とした“根拠のない自信”です。この自己肯定感は「意欲的」「主体的」な活動の源泉になることから、生涯にわたって自分の人生を豊かにしてくれる大切な感情です。
そしてこの自己肯定感こそ、自分の弱点を丸ごと受け入れられた人、すなわち孤独に耐えられた人が手に入れられる最大の財産です。会計士試験においては、長い受験期間のモチベーションの源泉として大いに役立つことでしょう。そのためには、漠然とした不安や孤独感をしっかりと受け入れ、周囲の力を借りながらも、「ひとり」で困難を乗り越える覚悟と意識が大切です。

 

おわりに

悩み = たった一つの課題 + 実体のない不安のかけ算

本来、悩みとは、漠然とした不安や否定的な想像そのものであり、実体がありません。たとえば一年前の今頃、どんな悩みを抱えていたか思い出せるでしょうか。私も含め、多くの人はこの問いに答えられないのではないかと思います。大切なことは、悩みの根底にある、たった一つの「課題」に目を向けることです。モチベーション、成績、孤独、という悩みに対しては、それぞれ、根本的な受験目的、勉強量、自己受容という課題があります。これら一つ一つの課題に向き合い一歩ずつ乗り越えていくことで、合格に近づくとともに自己肯定感も高まります。何事も行動あっての結果です。悩みを感じたら、課題を探る「行動」、解決策を考える「行動」、壁を乗り越える「行動」をぜひとってみてください。

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