お金と時間と資格試験

1.はじめに

時間=人生、お金=価値と感謝の交換手段

時間とは人生の一部であり、人の命そのものです。お金とは、価値と感謝の交換手段です。たとえば、寿命80年だとすると、生きている時間は70万時間、1日24時間ずつ残り時間が減っていきます。また、ランチで800円のラーメンを食べたとき、その中に含まれる調理・配膳・片付けサービス、飲食スペースの利用、無料飲料の提供等の「価値」に対し、800円分の「感謝」をしたと考えることができます。このように考えると、公認会計士のような難関試験には、「人生の一部」と「受講料以上に感謝できる価値」という2点が不可欠です。

また、20代の1時間は80代の10倍以上価値があると言われています。これは、20代で経験した記憶は、その後60年にわたって様々なかたちで人生に貢献するからです。以上を踏まえ、人生の一部である「時間」と価値と感謝の交換手段である「お金」、資格試験の関係性を考えていきます。

2.会計士試験に注ぐお金と時間

お金は、総額30~50万円

クレアールで順調に合格までたどり着いた場合、このくらいのコストがかかります。1年あたり約15万円、1か月約1万2,500円の計算です。こうしてみると、通信専門のため費用はかなり抑えられているように見えます。大手予備校ではこの2~3倍程度かかりますが、それでも1か月2~3万円は、「自己投資」として許容できる現実的な金額でしょう。

問題は、この金額を上回る価値が「公認会計士試験合格」にあるかどうかです。もちろん、たいていの場合、合格の副産物として生涯年収は上がります。ですがそうではなく、公認会計士というキャリアに憧れ、希望や目標を持てるかどうかで判断していただきたいのです。会計士が「ワクワクする仕事」かどうか、また、そのための初期投資が月2~3万円の価値があるかどうか、しっかりと考えてみてください。

時間は、2~4年間

大学2年生は4年生~浪人2年目に、24歳の社会人は26~28歳に合格する計算です。こうしてみると案外短い印象もありますが、前述のとおり20代の時間は極めて貴重です。たとえば、大学在学中にチャレンジするということは、多くの大学生が過ごすサークル活動、アルバイト、コンパにクラブといった青春を、ほとんど放棄することとなります。社会人にしても、通常の業務を終えたあと仲間と飲みに行く時間、仕事を早く覚えるための積極的な残業、1日に限られた平日の娯楽時間などはほとんど消えてしまいます。

ここで伝えたいことは、時間とは人生の一部であり20代の時間は貴重だということ、それを対価に公認会計士を目指すという覚悟を改めて実感していただきたいということです。受験生時代に見た、なかなか合格せず長期にわたって受験生活を送っていた人たちは、これらの「時間に対する意識」が揃って希薄でした。「合格者ブログ」を読み、合格のためのモチベーションを上げようと励んでいる皆さんには、ぜひこの意識を持っていただきたいです。

3.合格後のお金と時間

800万、1500万、3000万を稼ぐ

大手監査法人に勤務した場合の、1~10年目、11~20年目、21~30年目のざっくりとした平均年収です。昇進のスピード、所属する法人の給与体系によっても様々ですが、他法人の同期を含めて聞いた範囲では、現時点の水準はこれくらいだと考えています。ただ、これは監査法人に勤め続けた場合であるため、転職やヘッドハンティングによってはさらに高い年収となることもあるでしょう。

個人的に私が「ワクワクした金額」は、いずれでもない「独立起業して稼ぐ5000万円」です。独立した人の年収はまさに実力次第で、5000万円も夢じゃないと聞きます。私は会計事務所というよりは事業を起こす実業家になりたいと考えていますが、いずれも事業主としてリスクをとるキャリアであるため、それに見合った対価を得られる点が魅力です。5000万円という金額は、「日常生活でお金を気にしなくなるレベル」というのを本で読んだからというだけです。お金の不自由さから解放されるくらい稼ぎたいという目標になりました。

繁忙期の残業時間:80~100時間、年間平均残業時間:40時間

かつて会計士は「季節労働者」と言われたほど、繁閑の差が激しいです。12月決算、3月決算の時期は土日も出勤するなど多忙を極める反面、有価証券報告書が提出される6月半ばから7月上旬、8月などはほとんど業務もなく、定時帰りや休暇取得が多いというのも特徴的です。転職した場合は様々ですが、一般的に経理職に転職した場合、休暇取得機会が減る代わりに日常業務の負担も大幅に減るという話をよく聞きます。
監査法人のキャリアにおいては、職階によって忙しさが変わります。基本的には職階が上がるごとに忙しさも増していきます。

ところで、最近、大手の各監査法人では働き方の多様性に注力しており、残業抑制だけでなく、在宅勤務や時短勤務等、柔軟な働き方を導入しています。個人的には、AIの技術発展により監査のあり方と働き方が大きく変革するのではと期待しています。現在の監査で最も時間がかかっているのは実証手続であり、そのほとんどが証憑突合などの単純作業とその文書化です。これらをAIに任せることができれば、会計士は「職業的専門家としての判断」に専念することができ、労働時間を削減するとともに監査の質を向上させることができると考えています。

 

4.お金と時間で後悔する人、充実する人

お金で充実するためには、お金を忘れること

資格試験は自己投資であり、受講料は投資費用だと述べました。また、合格後のリターンとして高い水準の年収が得られることも述べました。しかし、必ずしもお金を目標とすることが効率的・生産的であるとは限りません。確かに会計士は監査法人勤めでも高水準の給与ですが、資格不要な他業種の銀行や商社と比べると、場合によっては劣っていることもあります。各監査法人でも給与・賞与は異なるため、他法人の同期とかなりの差がつくこともあります。

お金を最大のモチベーションにしてきた人は、その時点で大きな後悔をします。あれだけお金と時間をかけたのに、どうして資格不要のあの職種に負けるのか、同じ仕事なのにどうしてあの同期に負けるのか。

反対に、お金以外のキャリア目標や希望・憧れをモチベーションにしてきた人は、合格後に次々と開かれる新たな道へ、どんどんと引き込まれていきます。目標の先にはまた新たな目標が見つかり、遠い先の憧れや希望が現実になる。こうして仕事が充実していった対価としてあとから収入も増えてくるため、結果的に充実感もお金も手に入れることができます。したがってお金はもちろん大切ですが、まずはお金以外の目標を掲げ、それに向かって受験勉強を進めていくことが最も生産的だと思います。

お金持ちより、「時間持ち」

人生のチャンスを得るために不可欠であるお金と時間のうち、特に「時間」は受験において極めて重要です。なぜなら、時間とは人生そのものだからです。お金はあとから取り返せるのに対し、失った時間は一生かけても返ってきません。時間は貯めることも、1日24時間以上に増やすこともできません。

20代と80代の「1時間の価値」が異なるといったように、初めて迎える本試験までの1年と不合格からの1年の価値も違います。さらに、全力を出し切った末の不合格と怠惰による不合格では、人生における意味合いがまるで違います。大切なことは、1日、1分、1秒に対して覚悟を持って過ごすことです。やる気の出ない日は思い切って趣味を楽しむもよし、遠回りとわかっても難しい問題に納得するまでチャレンジするもよし、スランプに陥ったときは長期間勉強から離れるもよし。自分の時間=人生に責任を持ち、「今」に集中することができれば、合格に不可欠な「トライアンドエラー」の質を高めることとなり、結果として合格への最短距離に近づきます。まずは今この瞬間に学んだ「時間の大切さ」を心に刻み、直近の学習姿勢を振り返ってみてはいかがでしょうか。

5.おわりに

10年の学生生活を無駄にし、2年の資格勉強で人生を変える

私の中学から大学までの学生生活を振り返ると、すべてが中途半端でした。小学校から始めた野球をなんとなく惰性で大学まで続けたものの、実力は大学まで補欠のまま。勉強も中学受験が頂点で、大学進学は付属高校の内部進学試験で滑り込み合格。大学生活ではなんとなく講義を受け、なんとなくサークル、アルバイト生活を過ごすという、平凡な学生生活でした。自分を変えるきっかけとなったのは、就職活動の挫折を機にはじめた会計士試験の受験です。就活失敗の原因分析のための人生の振り返りから、会計士としてのキャリアビジョン、将来の人生目標の設定など、少しずつ「人生の意味」を明らかにしていきました。同時に受験勉強で成果が出る度に、自己成長への満足と自己肯定感を得ることができました。

目標があるからこそ、時間を大切にできる

会計士受験の経験を踏まえ、中途半端な自分の原因は、明確な目標を持たずに漠然と生活してきたことにあると気づきました。裏を返せば、目標があるからこそ、「今」という時間を大切にすることができるということです。ある人は、「人生における幸せとは、幸せを追い求めるその過程にある」と言いました。資格試験も同様で、合格の本来の価値は本試験の出来ではなく、合格に至った過程=勉強した時間にあるのです。そのためには、「自分のワクワクする目標」を見つけ、「今」という時間を大切にしてください。ゴールが明確にさえなれば、合格は時間の問題です。まずは今この瞬間を大切にし、一歩ずつ前進していきましょう。