世界的会計事務所で働く仕事 公認会計士と監査法人

目次

1.はじめに

近年、長らく公認会計士の志望者数は減少が続いており、ようやく昨年度に僅かな上昇に転じました。その影響から、日本公認会計士協会も公認会計士の認知度・魅力を広めようと様々な活動に取り組んでいます。

私が考える公認会計士の最大の魅力とは、「世界的会計事務所で働けること」です。日本では「監査法人」という組織形態をとっており、日本の4大監査法人は世界Big4と呼ばれる世界的会計事務所の日本支店という位置づけです。今回は、公認会計士の魅力を「就職先企業」という観点からお伝えしたいと思います。

 

2.Big4が世界就職ランキングTOP10常連のワケ

マッキンゼー、BCG、マイクロソフトを超える就職人気

こちらの記事では2016年版の世界就職ランキング(主要12か国)が紹介されています。会計事務所はEY(3位)、PwC(5位)、Deloitte(6位)、KPMG(8位)と、すべてTOP10入りしており、毎年TOP10の常連となっています。主な要因は、優秀な人材に囲まれる環境、充実した研修・教育制度、将来のキャリアに向けた豊富な実務経験が積めるといった点です。

一方で、日本の就職ランキングでは、コンサルティング部門でPwC(3位)が掲載されているものの、「会計事務所」である監査法人は総合TOP100圏外となっています。

新卒採用を行う海外事務所、合格者のみ採用する国内事務所

海外と国内でなぜここまで差がつくのでしょうか。これは、「新卒採用」を行っているか否かの違いです。海外では会計事務所への就職の際、「公認会計士試験合格」は不要で、入所から約3年で実務の傍ら受験するのが一般的です。一方、国内事務所では、原則として「合格者採用」を行っており、入所前にまとまった勉強時間を確保し、かつ、合格を果たす必要があります。したがって、応募者が限定される国内の就職市場では、就職ランキングに入らないことも当然といえるでしょう。

国内事務所も「新卒採用」があれば就職ランキング上位になるか?

近年、売り手市場とされる会計士業界において、新卒採用に近い取り組みが行われています。
新日本とPwCあらたでは、「トレーニー制度」として、試験をまだ受けたことのない新卒者の採用を行っています(新日本は実務と並行、PwCあらたは受験専念)。また、類似する制度としては、短答式試験の合格段階で採用する「短答合格者制度」もあり、新日本、トーマツ、PwCあらたが行っています。

このように、会計事務所に入所するハードルは下がりつつあり、会計士を目指す人たちにとっては大変大きなチャンスです。さらに今後もこの傾向が続いていけば、世の中の職業を知る最大のチャンスである「就職活動」をきっかけに、公認会計士を目指す人も増えるかもしれません。入り口を広げることで優秀な人材が増え、会計事務所をさらに魅力的な企業としていく有効な手段になるのではと期待しています。

 

3.プロフェッショナル集団と豊富な教育環境

組織の中で独立して働く、会計事務所

「会計事務所」では、プロジェクト単位で業務を行います。会計監査であれば、監査クライアントごとにチームが編成され、チーム単位で年間のスケジュールを立てていきます。そのため、各個人は複数のチームに所属することから同期であっても業務のスケジュールは様々です。

ここで強調したいのは、「自分の仕事は自分で取ってくる」という醍醐味です。監査クライアントの規模や業種、監査チーム内の役割、あるいは非監査業務、海外赴任など、アサインされる業務には多様な選択肢があります。その中で、自分のキャリア希望に合致する仕事を任せてもらえるかは、まさに実力次第。一人の会計士として認められれば「個人」としてやりたい仕事をどんどん任せられるなど、明確なキャリアビジョンを持つ人にとって絶好の環境です。

監査、税務、最新の業界動向等、高品質なグローバル研修が受けられる

「会計事務所」とは、一般的に監査、税務、コンサルティング、その他専門業務を一括して行う専門家集団です。日本においては法人格が分かれているため、監査法人、税理士法人、コンサルティング会社、弁護士法人等、複数の法人の総体を指します。

人材教育という観点では、実に多くの研修を受講することができます。メンバーファーム(EY, Deloitte等)のグローバル研修プログラムに従って年次研修が行われるほか、外部講師による研修や他のサービス(税務、コンサルティング等)の研修も受けられるなど、個人の成長機会としてはとても恵まれています。個人的には、最近、コンサルティング部門主催の「AIの発展とシンギュラリティ」という研修を任意受講しました。文字通り「世界が変わる」変革期にいることに驚き、人間にしかできない仕事とは何か、という仕事の本質を考える貴重なきっかけとなりました。

 

4.世界的会計事務所とキャリア

海外事務所へチャレンジができる

国内4大監査法人では、シニアスタッフにおける約2年間の海外出向(現地監査チーム配属)と、マネージャー以上による約2年間の海外赴任(日系企業の営業業務)という2つの海外出向パターンがあります。そのほか、海外赴任先で絶大な信頼を得たために任期延長、さらには現地法人への転籍を経て現地パートナーになるといったキャリアを進む人もいます。もちろん、海外出向のために国内で信頼を積み重ねる必要があることは言うまでもありません。海外出向を勝ち取るためには、国内監査業務と並行して外資系企業の監査を希望する、積極的に語学学習を行うといった主体的な行動が大切です。

5年、10年を目途に新たな道へチャレンジする

5年では現場主査、10年では監査チームマネージャーを経験することとなります。前者においては、一通りの監査手続と現場マネジメント、クライアントコミュニケーションを習得する時期であり、後者においては、複数の監査チーム全体のプロジェクトマネジメント、人員・収益管理、高度な会計判断のクライアントコミュニケーション等のスキルを習得する時期です。いずれも、一つの区切りであり、本気で取り組んだ結果として得られる財産はかなりのものです。私の信頼するあるシニアの先輩は、将来の独立を見据えて大手企業税務部門に転職しましたが、在籍時には社内外から高い評価を得ていました。逆に、パートナーを目指して10年近く働いている優秀なマネージャーの方も多く知っています。明確な目標を掲げ、日々最高の仕事をしたい、という人には最高の環境なのではないでしょうか。

監査責任者:パートナーになる

会計事務所で定年まで働くとすれば、パートナーを目指すことになります。私の主観としては、監査部門のパートナーはどの方も監査と仕事が大好きです。一般的に、会計士は転職市場で選択肢が多いです。それにも関わらず同じ仕事を選んだのは、監査・会計を通じて社会に貢献するという仕事にやりがい・面白みを感じられたからではないでしょうか。
その意味では、受験生時代から、あるいはスタッフとして数年働いてみて「監査」にやりがい・面白みを見つけることができた人にとっては、この道は最高のキャリアとなるでしょう。国内に限らず、前述したとおり海外の現地パートナーという可能性もあります。

受験生の皆さんは監査法人の採用イベントをぜひ積極活用し、パートナーからいろんな話を聞いてみてください。監査に情熱をささげるパートナーに会うことができれば、監査業務の醍醐味に共感することができ、合格後の実務が「ワクワクする仕事」になるでしょう。

 

5.おわりに

世界的会計事務所は、欧米の「三菱商事」?

監査法人のリクルーター(採用活動担当者)になってから、所属の監査法人の魅力とともに、公認会計士の仕事について考える機会が増えました。先日、ある監査現場でイギリスの現地法人から出向している日本人マネージャーの方にお会いしました。彼はイギリス育ちで大学もイギリス、新卒で会計事務所に就職したという方で、一度日本で働いてみたいという思いから2年間の日本への出向を希望したとのことでした。興味深かったのは、イギリスでは会計事務所の就職人気は圧倒的にもかかわらず、学生への「公認会計士資格」の認知度が日本と対して変わらない点です。それにも関わらず「企業としての会計事務所」の魅力は圧倒的で、優秀な人材、成長環境、豊富なキャリア経験という点では、日本の就職市場でいう「三菱商事クラス」。毎年、優秀な学生が集まる企業の一つで、入社の難易度も高いのだそうです。

広めたい、監査法人の魅力

アシスタント時代を含め、監査法人に入所して1年半余りになりました。プロフェッショナルとしての個人が独立した専門業務、充実した成長環境や多様性に配慮した制度等には、1企業として十分な魅力を感じました。もちろん国内各法人でカラーが分かれますが、少なくとも4大監査法人では大きな違いはありません。受験生の方にとっては、公認会計士の資格や様々なキャリアの可能性に魅力を感じている方も多いかと思います。しかし、受かったら何となく監査法人に入るのではなく、「世界的会計事務所で働く」という意義を一度考えてみてください。将来ワクワクするようなキャリアプランを少しずつ具体化し、受験時代の「今」を最大限充実できるようになれば、合格はもう目の前です。

 

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