1. はじめに
前回の記事(頭の中で仕訳する練習をしよう!)で総合問題を楽に解くテクニックに少しだけ触れましたが、今回はそのテクニックを詳しくお伝えしていきます。レベルは日商簿記3・2級を想定していますが、1級や公認会計士、税理士の試験に進んでも役に立つものとなります。むしろ、試験のレベルが上がるほど今回紹介したテクニックが役立つことになります。
投稿が見つかりません。なお、このテクニックを使うためには、前回の記事で紹介したように、なるべく仕訳を頭の中で行う練習をしておく必要があります。
知っているだけで簡単に取り入れられるテクニックではありませんが、解答スピードを飛躍的に向上させることができますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
今回の記事では具体的な解き方を説明していきますので、サンプルとなる例題(日商簿記3級レベル)を用意しました。
サンプルとなる例題はこちらになります。
2. 仕訳を下書きする解き方(基本的な解き方)
日商3・2級の受験生の多くは、必要な仕訳を下書きし、その仕訳を集計しながら解答を作っていく方が多いと思われます。ひととおり仕訳を書いていき、仕訳によって各科目の増減を把握し、それを足し引きすることで各科目の期末残高を計算する方法です。
この方法は「基本」として当然にできるようになる必要があります。下記3.で紹介するテクニックを用いる場合であっても、この方法で解くことができるだけの実力は身に付けておく必要はあります。はじめは時間をかけながらでよいので、この方法を練習しながら、決算整理などの仕訳をスムーズにできるようにしつつ、それらがB/S・P/Lにどう反映されるのかを理解するように努めましょう。
この方法でも、日商3・2級に合格するだけならばなんとかなります。この方法を用いた場合、日商3級の第5問、日商2級の第3問ともに30分~40分前後で解き終えることが大まかな目標(目安)となります。
3. 仕訳を下書きしない解き方(テクニック)
上記2.の解き方に慣れ、少しでも時間短縮をしたい方のための解き方を紹介していきます。問題の難易度によって変わりますが、日商3級の第5問であれば10~15分前後、日商2級の第3問でも15~20分前後で解き終えることができます。
この解き方は、見出しにもあるとおり、なるべく仕訳を下書きしません。そもそも、仕訳は「各勘定残高の増減」をメモしたものです。「各勘定残高の増減」を把握し、適切に集計することができるのであれば、必ずしも仕訳を書く必要はないのです。
仕訳に頼らず、なるべく簡潔な下書きで「各勘定残高の増減」を把握し、解答に結び付けるのがこの方法の特徴となります。下書きの細かなルールは個人差があってもよいと思いますが、私自身が意識しているポイントは次のとおりです。
(1) 処理金額(各勘定残高の増減)の集計について
① 処理金額(各勘定残高の増減)は、問題文の決算整理前残高試算表などに直接増減をメモする。
② 簡単な計算で済む科目、問題文からそのまま移すだけで済む科目については、それに気付いた時点で解答を埋めておく。
→ 埋められる解答欄は、忘れないうちに埋めておきます。
③ 問題文の余白が足りなさそうな科目は、下書き用紙にT字フォームなどを用意して集計する。
(2) その他のポイント
① 問題文(決算整理事項などの文章)やその余白で解答につながる金額があれば、後で記入漏れが無いか確認できるよう〇で囲っておくとよい。
② 処理金額の集計や解答記入が済んだ問題文にはチェックマーク()を付しておく。難しくてとばした部分については、後で戻れるように印をつけておく。
→ 試験時間は限られていますので、難しい部分をとばすことも大切です。
その際、どこまで進んで、どこが未了となっているかを可視化することで時間配分を考えやすくなります。
この解き方に則した場合、例題の下書き(赤文字で書き込んだ部分)は下記のようになります。一通りの仕訳を書くよりも、下書き量をかなり削減することができているかと思います。
4. 最後に
いずれの解き方であっても、次の意識を持つだけでかなり気が楽になります。
① 総合問題は「個別問題の寄せ集め」であること
② 満点を取る必要はなく、部分点を積み上げることで合格点は獲得できること
総合問題といえども、商品売買に関する内容、貸倒引当金に関する内容、固定資産の減価償却に関する内容…といった形で、個別問題として取り組むものに分解することができます。そして、それら個別問題の単位に分解したもの(それぞれに対応した科目)を1つ1つ解答していけばよいのです。
また、ほとんど全ての試験は満点を取らなくても合格ができます。個別問題に分解した内容のうち、難しいものは後回しにする、場合によってはあきらめるといった対応をして、その他の確実に解答すべき内容で点数を積み重ねていくことが大切です。
以上の内容を参考に、総合問題に対する苦手意識を払拭し、果敢に取り組んでいただけると幸いです。