【公認会計士試験対策】簿記の学習方法⑫(金融商品会計と株主資本)

目次

はじめに

今回は金融商品会計と株主資本の論点の学習について取り上げます。どちらも難易度が高い論点が含まれますが、本試験では必ず出題される論点なので確実に習得する必要があります。

金融商品会計の概要

金融商品会計は文字通り各種金融商品の会計処理を取り扱う論点です。実際に取引をしたことはなくとも、名称を聞いたことはあるというものが多いかと思います。会計処理の内容としては、取得時・期末時・売却時・権利喪失時等の各時点における金融資産の時価を測定し財務諸表に計上するだけであるためそこまで複雑ではありませんが、各種金融取引の具体的内容・時価評価の対象となる部分・取引の流れを掴んでおかないと正答することが難しくなってしまうので、学習の際は単に仕訳を追うだけでなく取引の背景をイメージしましょう。「何故この部分を時価評価しなければならないのか分からない」等の疑問があるようでしたら、講師に質問して取引のイメージが掴めるまで説明してもらいましょう。

ヘッジ会計

ヘッジ会計は金融商品会計に独特の処理です。ヘッジ取引とは、価格変動リスクのある資産や負債(ヘッジ対象)について、当該リスクに対応する金融資産(ヘッジ手段)を保有することによって価格変動による影響を相殺する目的で実施される取引です。ヘッジ会計では上記の取引目的が会計上も反映されるように、ヘッジ対象に関する損益とヘッジ手段に関する損益を同一の会計期間に認識するように調整します。

ヘッジ対象とヘッジ手段の損益を同一の会計期間に認識するということがヘッジ会計のポイントなので、実際に学習する際は必ず念頭に置いた上で実際の仕訳のどこでヘッジ会計の調整が行われているのか意識しながら学習を進めると定着が早くなると思います。

これだけだと取引のイメージがいまいちピンとこない方もいらっしゃるかもしれませんので、ひとつ例を出して説明します。

例えば変動金利による銀行借入に対して、金利変動のリスクをヘッジする目的で固定金利払いの金利スワップ契約を締結したとします。この場合、毎期の金利受け払いにかかる損益はそのまま計上し、金利スワップ自体の資産価値(時価評価額)については繰延べます。この取引の目的は変動金利によるリスクを固定金利に変換することによってヘッジする目的であるため、金利の利払いにかかる部分は損益科目として処理し、副次的に発生するにすぎない金利スワップ契約自体の資産価値にかかる損益については毎期の損益に反映させず、ヘッジの終了時点、すなわち借入金の返済期日が到来し当初のヘッジ目的が達成される時点になってようやく損益として処理されることになります。

とにかく、ヘッジ対象の損益(上記例の借入金利息)が発生するタイミングでヘッジ手段の対応する損益(上記例の金利スワップ利息)を認識し、対応しない損益(上記例の金利スワップ時価評価額)はヘッジの終了時点まで繰延べることを意識してください。ヘッジ手段に対応する損益が発生していても、ヘッジ対象の損益が発生していない場合はヘッジ対象の損益が発生するまで繰延る必要があります。このポイントさえ押さえておけば、ヘッジ対象・手段が異なる問題でも対応できるようになるはずです。

株主資本の学習方法

株主資本の論点は本試験での出題頻度が高い論点です。

株主資本の論点のうち、資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式に関する論点については基本的に仕訳のルールが単純かつ複雑な計算が求められないため、理解しやすい論点だと思います。株主資本等変動計算書を埋めさせる形式の出題もありますが、こちらについては実際に手を動かした経験がないと解答の際に戸惑うかと思いますので、テキストの例題は間違いなく解けるようになっておく必要があります。また、仕訳処理や計算は極めて簡単なのですが、配当が絡む場合や欠損金が生じている場合などには特殊なルール・処理が求められるケースもあります。油断していると問題文中に示されたこれらの条件に気付かずに通常通りの処理をしてしまう可能性もあるので、株主資本の論点が出題されたらまずは各種処理の条件をクリアしているか確認することをおすすめします。

株主資本の論点のうち、分配可能額の論点については上記よりも難易度が高いと思いますが、本試験での出題可能性もそれなりに高いためしっかり対策しておく必要があります。分配可能価額については、利害関係者保護の観点から不当に高い配当額ために(できるだけ企業の獲得利益の範疇で配当を実施させるように)計算上ルールが複数設定されていますが、前述の趣旨を念頭に置いた上でも全ての計算ルールを完全に理解するのは大変だと思います。私の場合も、なかなか完全にルールを覚えることができなかったため、何度も問題を解き、例題の計算過程を頭に定着させました。他の論点と異なり出題のパターンも数パターンしか想定されないと思いますので、どうしても理解しきれない方は私のように計算処理の方法だけ身体に染み込ませる方法で乗り切ることもやむを得ないと思います。

終わりに

今回は金融商品会計の論点と株主資本の論点の学習について取り上げました。金融商品の論点は特殊な点が多く、なかなか理解が進まないかもしれませんが、実際の取引の流れや目的が会計処理に色濃く反映された論点になっていると思います。取引の流れや目的が会計処理にどのように反映されているか掴んでしまえば安定した得点源にできる論点だと思いますので、学習が行き詰まった時は仕訳の背景をイメージしてみましょう。

 

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