公認会計士試験の制度変更の概要
公認会計士・監査審査会より、令和7年(2025年)6月12日に「試験のバランス調整について」が公表されました。これにより、公認会計士試験の制度の一部が変更されます。
まず、現在の公認会計士試験は、マーク形式である短答式試験を突破し、記述形式である論文式試験に合格する必要があります。変更後についても、この試験制度の大きな枠組みに変更はありません。
直近で影響があるのは、令和8年第1回短答式試験、つまり2025年12月に実施される短答式試験からです。
大きな変更点は、以下の2点かと思われます。
①短答式試験の科目ごとの試験時間及び問題数の変更
②合格率の変更※②は令和9年度から
それでは詳しく見ていきましょう。
①短答式試験の科目ごとの試験時間及び問題数の変更
まず、企業法、監査論の試験時間が短縮されます。今までは60分の試験時間でしたが、10分短縮され、50分となります。
こちらは受験生に与える影響はあまりないと思われます。元々、この2つの理論科目は時間が余る傾向にあります。この余った時間を計算科目に回させてくれ!と思ったのは私だけではないでしょう。
大きな影響があると思われるのは、管理会計論と財務会計論かと思います。
両者とも、試験時間が延長します。更に、その分問題数も増加するようです。
具体的には、管理会計論が15分延長の75分、財務会計論が30分延長の150分になります。
各科目の配点は変わらない(財務会計論は200点満点、それ以外は100点満点)ようですので、問題数が増えることで、問題ごとの配点が低くなります。
この2科目は問題によって1問の配点が8点のものもあり、1問ごとの合否に与える影響が大きいものでした。
1問あたりの配点を下げることで、特定の科目及び問題により合否に与える影響を軽減し、より実力が反映されやすくする旨、調整に関する概要にも記載されています。また、基本的な問題を幅広く出題するようです。なお、試験の難易度自体に変更はないとのことです。
試験時間が長くなり、また、問題数が増えることは受験生にとっては負担になりますが、問題自体の難易度が上がるのではなく、幅広い分野から出題されることについてはメリットと捉えても良いかもしれません。
特に、クレアールの学習法は基本的な問題を確実に解けるようにする、をモットーにしていますので、そういった側面から考えると有利に働くかもしれません。
また、簿記1級を取得している方であれば、財務会計論、管理会計論を得意としている方が多いと思います。そのような方であれば、しっかりとした基礎の土台がある分、幅広い問題にも対応しやすく、有利に働くのではないでしょうか。
②合格率の変更について※令和9年度から
端的に変更の概要を言いますと、短答式試験の合格基準を下げて短答式試験の合格者を増やし、論文式試験の合格基準を上げることで、合格難易度が上がります。
具体的には、まず短答式試験の合格基準を概ね70%とするようです。
昨今の短答式試験の合格基準は、受験者数の増加が相まって、得点率70%を超えており、72%〜74%に推移していました。そのため、短答式試験を突破する難易度が相対的に格段に上がっている状況でした。
そのような現状を踏まえ、合格基準を概ね70%として水準を一定に保つことで、短答式試験の合格者を増やす方向へ変更するようです。
一方で、論文式試験の合格基準は上がります。
今までは得点比率52%が合格基準でしたが、これが54%に上がります。
しかし、上述の通り、短答式試験の合格者が増えることになり、必然的に論文式試験の受験者数も増加することになりますので、合格者の人数は大きく変わらないものと推測します。こちらは必要な調整と捉え、受験生の皆さんはあまり意識する必要はないかと思います。
なお、こちらは段階的に変更していくとのことで、令和9年度試験から3年がかりで調整していくとのことです。そのため、直近の影響があるのは2026年12月の短答式試験からになります。
こちらの変更についても、昨今の短答式試験を突破するのは非常に過酷なものとなっていたので、プラスに捉えるべきかと思います。
短答式試験の本来のねらいとして、基本的な問題を幅広く出題し、論文式試験を受験するために必要な知識を体系的に理解しているか、を判定するためのものでした。その一方で、昨今の短答式試験を突破するためには、応用論点やより細かい部分まで手を伸ばさないといけないなど、かなり難しいものになっていました。クレアールは基礎基本を徹底することにフォーカスしていますので、応用論点などに手を広げるのは難しかったのですが、今回の変更でより基本に忠実に学習を進めることが出来るようになったと思います。
その他の変更点
公認会計士に求められる能力が拡大しているため、監査の品質強化やIT・サステナビリティ関連知識の必要性も考慮した出題内容の調整も検討されています。
サステナビリティについては、業界で非常に注目されている分野です。
私自身、怠ることなく日々知識のアップデートをしながら、本ブログで情報発信できたらと思います。引き続きよろしくお願いします!