「企業の求める人材と公認会計士試験」大倉雄次郎さん

大学で、会計プロフェッショナルの育成に取り組まれた先生の特別インタビュー。

大倉雄次郎さん  関西大学名誉教授(商学博士)・公認会計士・税理士
[プロフィール]東証一部上場企業(製薬会社)に入社し、働きながら税理士試験、次に公認会計士試験に合格し、財務経理統括部副統括部長を経て、大分大学経済学部教授に着任。平成14年に関西大学商学部教授(商学博士・公認会計士)となり、公認会計士の受験指導にも定評がある。平成21年4月1日付で関西大学名誉教授の称号を授与される。
[主な著書]「競争戦略と経営システムの構築」(関西大学出版部)。「ALL SECOM創造する経営」(日刊工業新聞社)。「連結会計ディスクロージャー論」(中央経済社)。「税務会計論—新会社法対応—」(森山書店)。「戦略会計論—経営・会計・税務の理論と実務—」(税務経理協会)。「連結納税会計論」(関西大学出版部)。「企業価値会計論」(中央経済社)。「新会社法と会計」(税務経理協会)等25冊。
[テレビ出演]NHK教育TV視点論点。
目次

トップ企業が求める人材

 世界的大企業で中村改革やパナソニックへの社名変更、パナソニック電工・三洋電機の完全子会社化など次々と布石を打っているパナソニック株式会社 大坪文雄社長は次のように語っておられます。

1. どのような環境変化が生じているか

 第一に、グローバル化です。企業経営では欧米、アジアをはじめ色々な国を視野に入れないと企業は成長しませんし、他社との競争にも勝てません。

 第二に、多様性、流動性です。経済的にはグローバル化はボーダーレスエコノミーといわれておりますが、それがもたらす多様性とか流動性が企業の中でも大変重要になっています。経営の視野や視点が国境を超えることによって従業員の国籍も広がっているのが今日の企業の実態です。

 第三に、スピード競争です。グローバルな経営を進めていく中で、マネジメントサイクルとか意思決定の時間軸というのはどんどんスピードアップされており、意思決定に長い時間を要する企業は、いかに優れた技術や人的資源を持っていても競争には勝てない。

 第四に、提携、協業です。
第五に、コーポレートガバナンスです。

2. マネージャーに求められる資質とは何か

 第一に、起業家精神です。これは自分の仕事がどんなに小さなものであってもその仕事を自分で事業として創出していく。生み出して、拡大して、成長させていくというマインドが求められている。

 第二に、戦略的思考です。戦略的思考というのは、わかりやすく言えば視野の広さであります。

 第三に、異文化吸収力です。異文化吸収力というのは、外国人の持つ価値観をうまく吸収して、それを前向きにエネルギーとして活用することも求められています。

 第四に、エネルギッシュです。エネルギッシュというのは、精神的なエネルギーです。肉体的にはもちろん精神的にも相当エネルギッシュでないと、グローバル時代を生き抜いていけません。

3. 新入社員に求められるもの

 第一に、独創性、創造力です。他の人にはない視点(目のつけどころ、目線の高さ)をもっているか、ということを踏まえて、独創性、創造力の可能性を探り出そうとしているわけです。

 第二に、論理的表現力です。グローバルな状況の中、あるいは最近のように色々な情報が等しく共有化できるような時代に、自分の考えをロジカルにきっちりと表現できるかどうかは、大変重要なことです。

 第三に、対人折衝能力です。もちろんそういう表現力は、老若男女を問わず、偏見なしに、あらゆる価値観を認めて集団の中で自分というものをうまく融合させながら、自分の存在をアピールできるかどうかという対人折衝能力を可能性として探ろうとしているわけです。

 第四に、語学力です。語学は企業では日常のツールです。

就活で求められている専門性

1. 専門的知識

 東京大学総長の佐々木毅先生は、次のように大学の役割の変化を話されています。
「大学は第一世代の戦前のエリート養成大学から、第二世代の大衆化大学の時代に幕を閉じ、今や第三世代の専門的・先端的能力の養成で社会の精神的バックボーンの担い手の大学に変貌しています。」 学生諸君はその専門性を高めるところにあります。

2. 専門的知識・能力を備えた人間の要求

 「工業社会の終焉は新たに知識社会を生み出したといわれています。主要巨大企業の内部でも、かつては管理職が独占していた知識と情報を一般従業員が手に入れつつあります。そして知識の再分配が行われると、知識を土台とした力の再分配もまた行なわれることになる。」 従来のホワイトカラーとブルーカラーの区別はなくなり、情報の共有化により差別化としての専門的知識・能力を備えた人間が要求されています。

3. 専門的知識のつけかた

 専門的知識をつけるためは、まず大学のゼミで担当教員の専門的知識を恰も学生自身のものにするべく、レポート学習やプレゼンテーション練習を通じて会得することです。

 次に、会計プロフェッシナルを目指すならば、日本商工会議所簿記検定1級、公認会計試験や税理士試験への挑戦などでその専門能力を高めることです。

 企業は、君を採用して会社の戦力になるか否かを見ているのです。さらには企画能力、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、それに何よりも行動力をみているのです。

就活で人間性が問われる

 次に東北大学総長、首都大学東京学長を歴任した世界的半導体、光通信の世界的研究者である西澤潤一先生の言葉を聞いてください。

 「天才と言われる人にも頭脳のずば抜けた人はほとんどおらず、立派な仕事をされたのはその集中力によっている。とは、宮城音弥先生(心理学者)の卓見である。自分をごまかさない、納得いくまでモノを考える。考えた結論をもとに試してみる。こうした姿勢は非常に大事だと思う。こつこつと自分をごまかさずに考えていくプロセスこそ大切であろう。地べたをはいずりまわりながら落ち穂を拾い、考えを一つ一つ積み上げていく手法である。不器用の勝利という言葉がある。不器用だからと逃げずにそれを克服することを考えるところに初めて進歩がある。」君たちもこの20数年生きてきていろいろと考え、これから就職をする今、期するものがおありでしょう。それを全身全霊でこの就職活動にぶつけてこの局面を打開してほしいのです。結局はあなた自身を売りこむのが就職活動だから「人間性+専門性」が大事です。

公認会計士試験にどう立ち向かうのか

1. 夢を叶える公認会計士の仕事

 公認会計士の仕事は、監査法人で監査業務に従事するだけでなく、事業会社における財務諸表作成、部門管理、業績評価、M&A業務、大学教授に至るまで、幅広く大変魅力深い仕事です。小職も一般企業、M&A、国立大学・私立大学,出版と様々な仕事をしてきました。努力が報われる資格それがまさしく公認会計士なのです。

2. 合格するタイプの受験生と心構え

 大学ゼミなどで多くの受験生を見てきましたが合格するタイプには、次の特徴があります。

 第一に、日商1級合格者です。大学の祝賀会やゼミの公認会計士試験の論文試験合格者を見ると例外なく日商1級合格者です。日商1級合格→短答式試験合格→論文式試験合格の順番です。それは日商1級の試験範囲と短答式試験範囲・論文式試験範囲は少なからず重なっているからです。

 第二に、日商1級合格から遅くても2年で公認会計士試験に合格できるので、短答式試験に合格した年度又は次年度で論文式試験に合格するパターンです。そのためには学生・無職なら1.5年から2年間受験勉強6000時間で合格できるのです。社会人なら3年間受験勉強6000時間で合格できるのです。

 第三に、公認会計士試験は社会人にとって仕事での必要性から受験者数が増加の一途をたどっています。受験勉強も通学は勤務時間や距離との関係で困難であるため、通信のDVDやWEB講義を利用するのが当たり前になって合格者も増加しています。

 第四に、どのような受験パターンであってもゴールは論文式試験に合格ですから、新会計基準がIFRSへの収斂のため毎年改正されており、これに対応しなければなりません。

 第五に、実社会の会計の仕事は理論・制度(基準)・会計処理(計算)の三位一体が要求されており、受験勉強もこれを意識して行わなければなりません。

関西大学『葦』NO.126、86-93頁より一部引用させていただきました。
佐々木毅(東京大学総長)「第三世代の大学を考える」『文部科学時報』平成14年10月号、
アルビン・トフラー著・徳山二郎訳『パワーシフト』フジテレビ出版
「科学の求道者・西澤潤一」『私の履歴書』日本経済ビジネス文庫 日本経済新聞出版社、2007年327頁

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