「公認会計士の仕事と使命」鴫原 孝瑛さん

鴫原 孝瑛さん  公認会計士
[プロフィール]2007年 横浜国立大学 経済学部 国際経済学科を卒業後、有限責任監査法人トーマツに入社。現在まで、監査業務、IPO支援業務など幅広い業務に従事。
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公認会計士を目指したきっかけ

 大学では、経済学部に進んだのですが、大学在学中になにか手に職をつけておきたいなと考えたのがきっかけでした。独学で簿記検定を受検したところ、2級までは、すんなり合格できたこともあり、最初は軽い気持ちで商業系の上位資格である会計士か税理士を目指そうと考えました。

 会計士の仕事について具体的なイメージはなかったのですが、合格してからの選択肢が多そうということもあり、会計士になろうと決めました。勉強しながら、講師の先生や合格して監査法人で勤める先輩の姿を見て、会計士になりたいという気持ちが強くなっていきました。

監査法人での業務・役割

 現在、有限責任監査法人トーマツの横浜事務所において、大きく分けて監査業務とIPO支援業務の2種類の業務を実施しています。監査業務は、上場企業や非上場企業(これからIPOを目指す会社を含む)に対して、財務諸表監査を実施するというものです。IPO支援業務は、これからIPOを目指す会社に対して上場を目指す上での課題抽出調査を実施したり、IPOを目指している会社に対して懸案となっている課題解決のため助言や指導業務を実施するというものです。

 監査法人での私個人の役割としては、監査業務及びIPO支援業務両方において、主任業務(監査業務やIPO支援業務の実務を実施する主担当者、実務実施上のチームリーダー的ポジション)を担うことが多くなりました。監査業務、IPO支援業務どちらにおいても、監査法人ではチームを組んで仕事を行うため、監査調書の作成や査閲、クライアントからの相談対応だけでなく、業務の受注申請処理、チームメンバーの配員や業務割当、クライアントや調書査閲者とのスケジュール調整等の業務も実施しています。

 監査業務に関して日常的に感じていることとしては、監査業務を効果的かつ効率的に実施すること、リスクアプローチを徹底するということは簡単そうで、とても難しいことだということです。例えば、売上高の検証を行うにしても、会社が営む事業毎や取引種類毎に会社の業務フローを理解して、どの取引が重要な虚偽表示のリスクが高いのか、特別な検討を必要とするリスクに該当するのか、リスク対応手続としてどのような監査手続を実施することがよいか、監査チームで喧喧諤諤議論して監査手続を決定しています。関与メンバーの知恵や経験を総動員できるようにして、監査の品質を高める努力を継続しています。

 最近一番面白いと感じる業務は、IPO支援業務の特に課題抽出調査です。今まで監査法人とあまりお付き合いがなかったクライアントに調査に伺い、経営者や経理部長、営業部長、人事総務部長など様々な人にヒアリングを行い、決算書や議事録等の査閲を行い、その結果IPOの観点から、改善すべきポイントを抽出し、具体的な改善案を提示します。自分がよく知らなかった業界の会社に調査に行くと、会社の理解だけではなく、業界の理解からスタートしなければならないため、大変苦労しますが、報告会などで経営者から直接、取りまとめた調査報告書について感謝されることもあり、そのような場面ではとても充実感を得られます。

会計士の仕事とやりがい

 会計士の独占業務は財務諸表監査ですので、ここでは監査という仕事の必要性についてふれておきたいと思います。警察官や検察官などと違いテレビドラマ化されるような職業ではなく、少し地味に感じられるかもしれませんが、そもそもなぜ監査を実施する会計士という職業が必要なのでしょうか。

 これは、資本家から経営者への財産の委託の結果として、会計報告があり、当該会計報告の適正性を担保するために監査が存在していると言われています。したがって、監査という仕事は、資本主義経済の前提を担う重要なインフラであるということができます。仮に、会計士という職業がなくなると、資本家から経営者への財産の委託ができなくなり、資本主義経済はうまく回らなくなります。具体的には株価がつかなくなる、企業の資金調達が出来なくなる、企業の資金調達コストが大幅に上がると想定されます。

 それゆえ、会計士の仕事は、社会から大きな期待や関心を受けています。監査法人はあくまで民間企業の一つですが(監査法人は警察、検察、税務署とは、国家権力を背景としていないという点で性質が異なります)、粉飾決算のような事件があると、監査法人の責任まで問われるニュースがでてくるのはそのためだと理解しています。責任が大きな仕事ではありますが、それだけ社会的な意義のある仕事であると確信をしています。

会計士を目指される方へのメッセージ

 会計士に合格するには、それなりの勉強期間が必要です。その勉強期間は暗く長いトンネルの中を走っているような感覚かもしれませんが、会計士を目指すことが出来る期間というのは、長いようで実は短いです。合格するには、「今だけ」と思って勉強に集中するしかありません。もし、勉強中何かに迷われることがあれば、お近くの監査法人や会計事務所で働く会計士の話を聞いてみることもよいかもしれません。何か、会計士という職業を考える上でのヒントがあるかもしれません。

 会計士を勉強する上で、身につけている知識や理論、考え方、簿記や管理会計の計算技術は将来の実務に100%生きてきます。会計士出身で活躍されている方の分野は幅広いです。勤務会計士としては、監査法人、税理士法人、コンサルティング会社、一般事業会社がありますし、独立して自分の会計事務所を設立する人もいます。中には、ベンチャー企業の経営にCEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)として参画する方もいます。将来の選択肢が広いのはやはり会計士ならではではないかと感じます。

 皆さんは将来どんな会計士になりたいですか?将来、どこかでお仕事をご一緒できましたら、とても幸いです。

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