「社会人1年短期合格のススメ」 Vol.39.日商簿記1級対策 -工業簿記・原価計算 論点別の対策ポイント③ 総合原価計算

目次

はじめに

 前回は日商簿記1級の工業簿記・原価計算のうち、個別原価計算の具体的な学習の進め方やコツをご紹介しました。
今回も前回に引き続き、工業簿記・原価計算の学習を進めるうえでの、個別論点別の対策方法をご紹介したいと思います。

総合原価計算:まずは計算手法の位置づけをおさらいしよう

 総合原価計算について、日商簿記2級では単純総合原価計算や組別総合原価計算等の代表的な計算方法を学習しました。そのステップアップとして、日商簿記1級では純粋先入先出法や工程別総合原価計算における非累加法や非度外視法、副産物や連産品の計算方法を学習します。

 総合原価計算の学習を始める際には、個別原価計算と同様に、まずは計算手法の位置づけを頭の中で整理するようにしてみてください。総合原価計算とは、個別原価計算と同じく、実際原価計算にて製品別製造原価を算定する第3次の計算段階である「製品別計算」に含まれる計算手法です。そして、総合原価計算は①計算形態と②工程別計算の有無の2つの観点から、具体的な計算方法に変化が生じます。①計算形態の観点からは単純総合原価計算、等級別総合原価計算、組別総合原価計算の3つの種類に分類され、②工程別計算の有無の観点からは単一工程と工程別の2つの種類に分類されます。したがって、日商簿記1級で学習する総合原価計算は、大きく分けて以下の6種類となります。

①(単一工程)単純総合原価計算

②(工程別)単純総合原価計算

③(単一工程)等級別総合原価計算

④(工程別)等級別総合原価計算

⑤(単一工程)組別総合原価計算

⑥(工程別)組別総合原価計算

 実際に工業簿記・原価計算の学習を始めると、目の前の問題演習に気を取られてしまい、それぞれの計算手法の位置づけの理解が乏しくなることがあります。そうなると、出題された問題がどの計算手法の使用を求めているのか理解できないまま(すなわちフィーリングで)、問題を解答する癖がついてしまいます。その場合、問題文の読み違え等により凡ミスが増えてしまうことにもつながりませんので、これを機に改めて計算手法のそれぞれの位置づけを整理しておきましょう(私自身はフィーリングで問題を解く癖が付いてしまっていため、改めて計算手法の意味や位置づけを理解するのに苦労した経験があります)。

総合原価計算:累加法の問題点に着目し、非累加法の存在意義を理解しよう

 工程別総合原価計算について、日商簿記2級では累加法を学習しましたが、日商簿記1級ではその応用論点として、新たに非累加法による計算方法を学習します。累加法と非累加法は名称が類似しているため、最初のうちはどのような違いがあるのか分からず、困ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 そんな非累加法の理解を進めるためのコツは、累加法が抱える問題点に着目することです。

 工程別総合原価計算の累加法では、端的にいえば、第1工程から順番に期末完成品原価と期末仕掛品原価を計算して、各工程の期末完成品原価を次工程の当月投入原価に振り替えることで、徐々に後工程の期末完成品原価と期末仕掛品原価を明らかにします。しかし、この累加法の問題点として、最終工程以前で発生したコストが全て前工程費としてまとめられてしまうため、最終完成品原価の内訳を各工程別に把握することができないことが挙げられます。したがって、各工程別の生産効率の良否が把握困難であることや、前行程の計算が完了しなければ次工程の計算ができないこと等による計算や記帳の遅れにつながることがあります。

 一方で、工程別総合原価計算の非累加法では、上記のような累加法の問題点を解決するための工夫がなされています。非累加法では、各工程で発生したコストを最終完成品原価、自工程期末仕掛品原価、自工程以降の期末仕掛品原価の3つにそれぞれ区分して計算します。これにより、最終完成品原価の内訳を各工程別に把握することができるため、各工程別の生産効率が把握できたり、他工程の計算の終了を待たずに迅速に自工程の計算ができたりします(ただし、そんな非累加法であっても、計算方法や計算過程が複雑であるという問題点はあります)。  非累加法の学習を進める際には、上記の様に累加法の問題点とセットで覚えるようにしてみましょう。ただし、テキストの読み込みや講義動画の視聴だけでは累加法と非累加法を理解するのは難しいので、実際に手を動かして問題を解き、それぞれの計算方法の違いを体感するようにしましょう。

総合原価計算:連産品は定石の計算パターンを押さえれば十分

 日商簿記1級では、新たに連産品という論点を学習します。連産品という言葉を初めて目にする方も多いのではないでしょうか。

 原価計算基準によれば、「同一工程において同一原料から生産される異種の製品であって,相互に主副を明確に区別できないもの」を連産品と呼称することとされています。その具体例は「原油」です。「原油」は重油や軽油、ガソリン、灯油等の異種の製品を生産することができるため、連産品の一つと位置付けられています。

 そんな連産品には定石の計算パターンがあり、日商簿記1級の合格を目指すうえでは、その計算順序を覚えることが必要です。具体的には、まず通常通り総合原価計算をして結合原価を算定した上で、別途算定した積数によってその結合原価を各連産品に按分します。この計算パターンの基本をしっかり覚えるようにしましょう。

 なお、公認会計士試験でも連産品の問題が出題されることがありますが、日商簿記1級以上に複雑な計算が求められることが多いようです。公認会計士試験対策を見据えて、日商簿記1級の段階から少しずつ計算力を磨くように心がけましょう。

おわりに

 今回は、日商簿記1級の工業簿記・原価計算のうち総合原価計算について、具体的な対策のポイントをご説明しました。次回も今回に引き続き、論点別の具体的な対策方法をご説明しますので、乞うご期待ください。

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