「社会人1年短期合格のススメ」 Vol.36.日商簿記1級対策 -工業簿記・原価計算 学習のコツ 総論

目次

はじめに

 以前の記事では、日商簿記1級のうち商業簿記・会計学について、学習を進める際のコツや各論点別の具体的な学習ポイントをご紹介しました。日商簿記1級は日商簿記2級と異なり、学習内容がパワーアップするだけでなく追加論点も複数登場しますので、それぞれの学習内容や特徴に沿った学習が必要であることをご紹介しました。

今回はその続きとして、日商簿記1級のうち工業簿記・原価計算について、私の学習経験も踏まえながら学習上のポイントをご紹介します。まずは工業簿記・原価計算の科目自体について、概括的に学習の進め方のコツをご紹介したいと思います。

工業簿記・原価計算の学習の進め方のコツ

 日商簿記1級の工業簿記・原価計算では、特殊原価調査や差額原価収益分析等の新規学習論点の他、日商簿記2級の学習論点(部門費計算・個別原価計算・総合原価計算・標準原価計算等)について、応用的な計算処理を新たに学ぶことになります。

これはあくまで私の体験談ですが、日商簿記2級までは問題集を2周程度解けばおおよその学習論点を理解できた一方、日商簿記1級は問題集を5~6周程度しなければすべての学習論点を理解できなかったため、かなり大変だった思い出があります(もちろん効率よく学習された方であれば、もっと早期に本試験合格レベルに達することができるかもしれません)。また、学習内容が深くなるだけではなくより幅広くなるため、一度学習した論点を忘れないように記憶をケアするのが大変でした。

 そんな日商簿記1級の工業簿記・原価計算については、私は具体的に①から③の方法で学習を進めるように心がけていました。

① まずは講義動画をスピーディーに消化する

 まず、工業簿記・原価計算の学習を始めた初期段階では、商業簿記・会計学の学習の進め方と同様に、全ての講義動画をできる限り早めに視聴し終えるようにしていました。特に工業簿記・原価計算は複雑な計算方法を学習するため、問題演習無しでは学習内容を理解するのは不可能だと考えていました。したがって、まずは講義動画に全て目を通して日商簿記1級の学習範囲の全体像を把握するように心がけていました。

この段階での注意点は、各講義動画の内容で分からないことがあれば、分からないままにしないようにすることです。講義動画を視聴したときにその内容をきちんと理解できていれば、仮にその内容を忘れたとしても、復習のタイミングで内容を思い出すことができますので、復習のときの二度手間を減らすことができます。

 また、商業簿記・会計学と並行して工業簿記・原価計算を学習するようにしていました。もちろん商業簿記・会計学の学習を全て完了した後に工業簿記・原価計算の学習を開始することもできますが、商業簿記・会計学を学習する間に日商簿記2級の工業簿記の学習内容を忘れてしまう恐れがあると考えていたためです。商業簿記・会計学と工業簿記・原価計算の学習を並行するとなると、1日当たりの学習の進捗ペースはゆっくりになってしまうため初めのうちは不安に思うかもしれませんが、日商簿記2級の記憶のケアができ、後々の復習の手間を減らすことができますので、ぜひ試してみてください。

② 各論点の内容を一言でまとめてみる

 日商簿記1級の工業簿記・原価計算の講義の視聴を終えたら、各論点の間の関連性を頭の中で整理するようにしていました。特に原価計算については、個別原価計算や総合原価計算、標準原価計算や直接原価計算など、名前だけ見れば一見同じような原価計算方法を学習することになります。これらの一見見分けのつかない各論点について、自分自身の言葉で問題ありませんので、(1)何の目的のために(2)どのような計算をするのか、頭の中で整理してみてください。たとえば、個別原価計算とは(1)種類の異なる製品を個別受注生産するために(2)特定の製造指図書別に製品別の原価を集計する、と整理できます。

このように、工業簿記・原価計算の各論点について、「一言で言えば何なのか」頭の中で整理しておけば、後々復習するときに混乱することも少なくなるかと思います。

③ テキストの例題の復習とテキスト速読を並行する

 各論点の内容を一言でまとめて頭の中である程度整理できたら、復習を何度も繰り返すようにしていました。具体的には、次の(1)(2)の2つの方法を並行して実践していました。

  • 日商簿記1級テキストの例題を完璧に解けるようにする

クレアールの日商簿記1級の工業簿記・原価計算では、テキストと問題集がそれぞれ配布されますが、問題集の問題をすべて解くのは骨が折れるため、私はテキストの例題だけを何度も解くようにしていました。クレアールのテキストには各学習論点のポイントを踏まえた例題が掲載されていますので、テキストの例題のすべてを完璧に解くことができれば、工業簿記・原価計算の学習の内容をまんべんなく身に付けることができたと判断することができます。

テキストの例題のすべてを完璧に解くことができるようになるには相当な時間がかかるため大変ですが、必要不可欠な下積み期間と割り切り、問題演習にひたすら取り組んでみてください。ちなみに、私がテキストの例題のすべてを完璧に解けるようになったのは、テキストの全例題を5~6周程度復習した頃でした。

  • テキストの速読

商業簿記・会計学と同様に、日商簿記1級テキストの例題の復習と並行して、テキストの速読を進めていました。速読とは、端的に言えば、普段読書する何倍ものスピードで読むことを意味しています。具体的には、各テキストを順にページをめくり、各学習論点の内容・計算方法・間違えやすいポイント等に目を通すようにします。場合によっては、各学習論点の計算方法等を声に出して理解するようにすることもとても効果的です。もちろん、各テキストのすべてのページを1日で速読することは困難ですので、たとえば、4日~1週間程度でテキスト3冊を1周速読できるようにしていました。 こうすることで、定期的にテキストの内容を理解・復習することができ、忘れないように記憶をメンテナンスし続けることができます。それに加えて、テキストの例題を解くときに、速読した内容を思い出すことができ、スムーズに問題復習ができます。初めのうちは速読という学習方法に戸惑うかもしれませんが、復習に適した学習方法ですので、ぜひ試してみてください。

④ クレアールの答練・公開模試を繰り返し解く

 日商簿記1級のテキストの例題を完璧に解くことができるようになったら、クレアールの答練・公開模試を繰り返し解くようにしていました。この段階では、実際の日商簿記1級の本試験の問題形式に慣れ、試験合格レベルの実力を身に付けることを目標に学習を進めます。クレアールの答練・公開模試は、各実施回の日商簿記1級に合わせて作成されていますので、まずはそれらを完璧に解くことができるようになるまで学習を進めてみてください。

なお、既に学習した内容を忘れないようにするため、テキストの速読も並行するようにしてみてください。もしクレアールの答練・公開模試を完璧に解けるようになり、本試験まで時間的余裕があれば、直近の過去問題に手を出してみても良いかもしれません。私が日商簿記1級を受験したときには、直近の過去問題を解く時間はありませんでしたので、クレアールの答練・公開模試のみを演習して本試験に臨みましたが、それだけでも実際の本試験問題に十分に立ち向かうことができました。

おわりに

 今回は、日商簿記1級の工業簿記・原価計算について、具体的な学習の進め方のコツをご紹介しました。皆さんの試験勉強にて今回ご紹介した学習の進め方のコツをご参考いただき、少しでも活用いただけたら嬉しいです。次回以降は、工業簿記・原価計算の個別論点別に、学習を進めるうえでのコツやポイントをご紹介したいと思います。

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