「社会人1年短期合格のススメ」 Vol.21.日商簿記1級対策 -商業簿記・会計学 論点別の対策ポイント①-

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目次

はじめに

 前回のVol.20.では、日商簿記1級の会計学・商業簿記について、具体的な学習の進め方のコツ・ポイントをお伝えしました。今回は、会計学・商業簿記の学習を進めるうえでの、個別論点別の対策方法をご紹介したいと思います。日商簿記1級では、日商簿記2級・3級で学んだ知識に加え、新規論点・応用論点が学習分野に含まれますので、主にそれらを中心として具体的な学習の進め方をご説明したいと思います。

有価証券

 有価証券の基本的な会計処理は日商簿記2級・3級で学習しますが、日商簿記1級では約定日基準・修正受渡基準や減損処理、保有目的区分の変更等を新たに学習します。

約定日基準・修正受渡基準については、取得・売却の認識時点はいつなのかという時系列を意識して学習すれば、例題も難なく解くことができるようになります。また、減損処理については、減損処理が適用される状況(例えば、売買目的有価証券以外の有価証券のうち時価があるものについて、時価が著しく下落し、回復する見込みがあると認められない場合等)をしっかりと理解するようにすれば、本試験で出題されるオーソドックスな問題に十分対応できるようになります。

一方で、有価証券の保有目的区分を変更した場合の会計処理は、変更前と変更後の有価証券の種類によりそれぞれ会計処理が異なるため、理解・定着までにある程度時間がかかります。クレアールのテキストには、保有目的の変更に関するまとめ表が掲載されていますので、テキストの速読を繰り返す中で、丸暗記してしまいましょう。テキストの速読を繰り返せば、そのうちテキストのページの内容を丸ごと思い出すことができるレベルに到達します。暗記さえできていれば、会計処理自体は比較的単純ですので、頑張って暗記するように心がけましょう。

なお、日商簿記2級の学習内容(保有目的区分別の評価方法 等)についても忘れることがないよう気を付けるようにしてください。日商簿記2級で学んだ基礎知識は、日商簿記1級の本試験においては、解けて当たり前のオーソドックスな問題となります。もし本試験で日商簿記2級レベルの問題が出題されたら、必ず解けるようにしましょう。

退職給付会計

 退職給付会計は、日商簿記1級で学習することになる新規論点です。”退職給付”という言葉自体に馴染みがなく、はじめは抵抗を覚える受験生も多いのではないでしょうか。

まずは、退職給付会計がなぜ必要なのか、その存在意義を理解するようにしましょう。端的に言えば、従業員が退職した際に支給する退職金や年金の元手を確保するために企業に求められる会計処理です。余談ですが、日商簿記1級では”確定給付制度”に関する問題がよく出題されますが、これは一定以上の企業規模を持つ会社で採用されることが一般的であり、成長途上のスタートアップ企業ではそもそも退職給付会計が論点として存在しない場合もあります。何となく退職給付会計のイメージを持っていただけましたでしょうか。

次に、退職給付会計の会計処理のコンセプトを理解するようにしましょう。ここでは、例として退職給付会計の中でも比較的頻繁に出題される”確定給付制度”を取り上げたいと思います。確定給付制度の貸借対照表における取扱いの基本は、退職給付債務から年金資産の額を控除した金額を負債(=すなわち、会社がその差額分だけ補填する必要がある)として計上するということです。一方で、退職給付債務が年金資産の金額を上回る場合には、その差額を資産(=簡単に言えば、会社がその差額分だけ余剰がある)ということです。

そして最後に、具体的な会計処理を学習しましょう。退職給付会計では、勤務費用・利息費用・期待運用収益・数理計算上の差異等、聞いたことがない言葉がたくさん登場しますが、それら一つ一つを例題演習を通じて理解するようにします。はじめは骨の折れる作業ですが、具体的な会計処理を一度理解してしまえば、その後はスムーズに問題を解くことができるようになるはずです。

退職給付会計は複雑な会計処理であるものの、会計士試験短答式試験・論文式試験のいずれにおいても、頻繁に出題される典型論点です。はじめは苦手意識を持ってしまいがちですが、今後の学習も踏まえ、日商簿記1級時点でしっかりと理解するようにしましょう。

商品売買

 商品売買の会計処理は日商簿記2級・3級でもある程度学習しますが、日商簿記1級では仕入割引・売上割引等を新たに学習します。

仕入割引・売上割引については、日商簿記2級で既に学習した返品・割戻・値引との区別があいまいになりがちです。これらを区別するポイントは、どのようなできごとが起こったときに必要な会計処理なのか、頭の中でイメージすることです。たとえば、返品とは一度引き渡された商品が単に売り手に返却されることである一方、値引きは品質不良・破損等に起因して販売代金を差し引くことを意味しています。加えて、割戻とは一定期間に多額・大量の取引を行った場合に売上代金を返戻するものである一方、割引とは支払期日前に代金が支払われた場合に売掛金等の債権金額を一部免除することです。このように、それぞれの会計処理が必要となる場面を頭の中でイメージできれば、スムーズにそれぞれの用語を使い分けることができるはずです。

おわりに

 今回は、日商簿記1級の会計学・商業簿記について、論点別の具体的な対策方法をご説明しました。次回も今回に引き続き、論点別の具体的な対策方法をご説明しますので、乞うご期待ください。

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