久々のブログ更新になります(;´Д`A “`
つい先日、とある受講生からメールで受けた質問をいただきました。
お電話含め、似たような質問が連続していましたので、当時の回答をブラッシュアップして、紹介しておきたいと思います。同じような境遇にいる方、とくに「通常のカリキュラムよりも短い期間で短答式本試験を迎える方」の参考になれば幸いです。
(お問い合わせの概要)※ 質問メールの原文を一部修正しております。
元々2020年12月短答合格を目標にしていたのですが、2020年5月実施予定だった短答式試験が8月にずれ込んだことにより、もしかしたら間に合うかもしれないと8月合格を目指すことに致しました。 残り2ヶ月となり、まだ講義も全て消化していない中で、優先順位をどうつけるべきか迷っております。 科目ごとの進捗は下記の通りです。
- 計算科目(簿記、管理会計論) 全講義受講済み、例題or問題集といった基本教材は3回転。 基礎短答答練(各科目2回分)は解いており、正答率は5~6割。 過去問に一部着手済み。
- 理論科目(財務諸表論、監査論、企業法) 講義を30~80%ほど受講済み。 肢別型の問題集を同時進行。
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(中略)
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計算力養成に注力していたため、理論科目を急いで進めている最中です。あと2ヶ月で間に合わせるには効率を上げるかつ、選択と集中が重要だと考えております。長文で申し訳ありませんが、アドバイスを頂けますと幸甚です。
以下、この質問に対する回答(実際にお送りしたものを一部修正)となります。
1. 目標時期を早めることは、次のようなメリット・デメリット
まず、目標時期を早めることは、次のようなメリット・デメリットがあるかと思います。
(1) メリット
①早いうちに一通りの範囲を一巡できる。
②試験が差し迫ることによる締め切り効果が得られる(おしりに火がつくことによって、勉強を必死に進められる)。
③うまくいけば、論文も含めて受験期間を短縮できる。ひいては、合格後のキャリアを早くスタートさせることができる。
(2) デメリット
①学習スケジュールがハードになる。
②「先に基礎をしっかり固める」「まず計算を固める→その後に理論学習の割合を増やしていく」といった、当初想定していた学習を早く切り上げることで、身に付けるべき基礎・計算力が疎かになってしまう。
2. 上記1.を踏まえた対策上の注意点
合格目標を早めるにあたっては、上記1.のうち、デメリットの②に最も気を付ける必要があるかと思います。そのためには、スケジュール的に厳しいものはあるかもしれませんが、次のようなことを意識すると良いかもしれません。
(1) 日商簿記レベルの復習・ブラッシュアップも含め、計算力の強化は引き続き優先させる(今回ご質問いただいた方は、当初目標としていた2020年12月本試験を見据えたのであれば、順調に計算対策が進んではいるようです。しかし、現時点で合格に必要最低限の計算力を身に付けるまでもう少し計算対策が必要と思われます)。
(2) 答練や過去問などを用いた実戦対策は、いたずらに数を増やすのではなく、最小限の数の問題を最大限活用する。
(3) 講義はなるべく省略しない。講義時間を短縮するのであれば、倍速機能に慣れる、講義時間中の密度を高める工夫(*)をするなどの取り組みから行っていく。
* 講義時間中の密度を高める工夫としては、例えば、次のようなものが考えられます。
- その場で覚えられることであれば、なるべくその場で覚える。
- できる範囲で、関連する他のページとのつながりを見い出し、リファレンスを振っていく(ヨコのつながりを見い出すことで、理解も進みやすくなります)。
- 聞き逃した箇所への巻き戻しを禁止する(「聞き逃せない」という生講義と同じ緊張感を持って受講する)。
3. 理論対策について
理論科目については、肢別型の問題集を活用し、アウトプットに直結したインプットを図っていくのは有効な手段だと思います!
しかし、「一問一答で問われたピンポイントの結論を、意味を理解せずに丸暗記する」ような努力をした場合、それは成果に結び付きにくいという点に注意が必要です。肢別型の問題集は、勉強している感を得やすい受験生に人気の教材なのですが、それを利用した安易な暗記に走る受験生が多くいたりもするものです(決して、ご質問いただいた方のことをそう決めつけているわけではございません(;”∀”)あくまでも一般論として読んでいただければ幸いです(;”∀”))。
ではどうすればよいかというと、「それ自体を暗記ツールとして用いる」のではなく、「インプットのとっかかり」として利用することがお勧めです。講義の復習にあたって、関連する範囲の問題を見て、それを解答するために必要な知識・理解を調べるといった感じでテキストや法規集を読んでいくのです。テキスト・法規集ともに、それ自体を前から読んでいくよりも、問題から入り、必要なことを調べる形で読んでいく方が、次のような効果を得やすくなります。
(1) 実戦に直結した(問題を解くために必要な)知識から確認していくことができる。
(2) 受け身ではなく能動的にテキストを読んでいくことが出来るため、印象に残りやすい。
(3) 読むべきポイントが明確なため、一歩踏み込んで深く読んでいくことができる。
4. 法規集について
上記にしれっと盛り込んだ「法規集」についても言及しておきますね。
学習期間が短く、少しでも分量を減らすためにテキストのみで済ませたいところかもしれませんが、実戦レベルに適応するには、各科目、次のような原文を確認することも必要となってきます。
科目 | 必要な原文資料 | |
---|---|---|
財務会計論 | 会計基準など | 会計法規集 |
管理会計論 | 原価計算基準 | |
監査論 | 少なくとも監査基準などの企業会計審議会から公表されている基本的な基準。必要に応じて、監査基準委員会報告書なども。 | 監査実務指針集(※) |
企業法 | 会社法・商法・金融商品取引法の条文 | 左記の法律が盛り込まれたものであれば何でも大丈夫です |
※ 公認会計士法やその関連規則、職業倫理といった一部欲しいものが抜けているのですが、受験生にとってはこれが市販されている中では最も便利かもしれません。
理想的には、中央経済社から販売されている『監査法規集(第4版)』が改訂され、最新の基準などを反映していたものがあればよいのですが…
一見、学習の負担が増えて大変なことのように思うかもしれません。
しかし、「購入したもの=必ず全部に目を通して覚えるべきもの」ではございません。必要な範囲(それを利用した方が効率的となる範囲)で活用すればよいのです。テキスト含め、書かれている内容のうち重要な部分を把握し、それをご自身の知識(理解含む)として身に付けていくことが重要となります。
また、コンパクトに整理されたテキストの記述よりも、原文を見た方が理解しやすい場面もたくさんあるものです。
テキストのみならず法規集も活用することにより、「アウトプットツールは最小限」に、「調べるためのツールは手広く用意」し、前者を用いて後者のうち重要な部分を効率的に学習していくのが、効率的な学習方法かと思います。
5. 最小限の数の問題を最大限活用する
答練や過去問、問題集といったアウトプットツールは、市販や他校のもの含めて手を広げだすときりがなくなってきます。
しかし、いくら問題の数を増やしたとしても、本試験は必ず初見の問題となります。出題予想が当たって同じ論点や似た問題が出ることもあるかもしれませんが、問い方や条件、論点の組み合わせなどは現場で把握・対応すべきものとなります。
そのため、いくら問題の数をこなしたとしても、それだけでは本試験での成果に結び付きにくいものとなってしまいます。結局のところ、問題そのものよりも、様々な角度・形式で問われても使いこなすことのできる基礎・基本を身に付けることが重要となるのです。
そのためには、限られた数の問題でいいので、消化できる分量を活用し、テキストや法規集に載っている基礎・基本の知識・理解を充実させることがおすすめとなります。そうすると、上記でご紹介したような「問題をとっかかりにしてテキストや法規集を調べる」学習が非常に有効となってくるかと思います。