「社会人1年短期合格のススメ」 Vol.46.短答式試験対策 – 監査論 論点別の対策ポイント③ 法定監査・監査人の独立性

目次

はじめに

 今回の執筆記事につきましても、短答式試験の監査論について、学習を進めるうえで、個別論点の理解に役立つようなポイントをご紹介したいと思います。監査論の学習においては、未経験の業務に対する想像力が求められることが多いため、具体的な私の監査実務での経験談も交えながら、各論点のポイントをご紹介したいと思います。

利害関係に関する法令適用関係:法定監査(会社法監査・金商法監査)

 公認会計士又は監査法人が行う法定監査としては、主に会社法監査と金商法監査の2つが挙げられるのですが、実務に携わっていなければ両者の違いについてイメージを持つのは難しいのではないでしょうか。

 会社法監査とは、端的にいえば、世の中の全ての会社が順守すべき法規である「会社法」に準拠して実施される監査のことです。特に、会社法に規定される大会社(資本金の額が5億円以上又は最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した金額の合計額が200億円以上の株式会社)等については、会計監査人(すなわち、公認会計士や監査法人)の設置が義務付けられています。そして、そのような会社は会社法に従い、会社計算規則に従って貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、付属明細書等を作成し、会社法監査を受ける必要があります。

 多くの会社法監査では、上述の開示書類等を事業年度終了後およそ1か月~2ヵ月の期間に渡って監査を進めることが多いでしょう。ただし、金商法監査も求められるような会社では、よりタイトなスケジュールで監査を進めなければならなくなります。

 金商法監査とは、金融商品取引法に基づく監査のことであり、主に上場企業等を中心として実施されています。金融商品取引法とは、簡単に言えば、上場企業等の世の中への影響力の大きい企業に対して投資をする投資家を保護するための法律です。金融商品取引法では、投資情報を開示して投資の判断材料を投資家に提供する仕組みとなっており、企業の側に立てば、会社法に比べてより開示書類の内容を拡充しなければなりません。

 そして、金融商品取引法の主な適用対象となる上場企業においては、東京証券取引所に求めにより、遅くとも決算期末後45日(45日目が休日である場合は、翌営業日)以内に内容のとりまとめを行い、その開示を行うことが求められています。したがって、金商法監査においては、実質的に事業年度終了後45日(1か月半)以内に監査を完了しなければなりません。

 会社法監査と金商法監査の違いの詳述については、監査論テキストや企業法テキストに譲りますが、監査を担当する公認会計士や監査法人の目線に立てば、両者にはざっくりと上記のような違いがあります。監査論の学習を進めるうえで、両者の概括的なイメージを掴めたでしょうか。

監査人の独立性を巡る論点

 監査人の独立性を巡る論点は、主に公認会計士個人の場合と監査法人の場合で異なり、大会社等を対象とした監査の場合は別途、独立性強化策が講じられています。公認会計士試験(短答式)の監査論では、独立性に関する細かな論点(たとえば、どのような身分的関係を有しているのか、経済的関係を有しているのか 等)が詳細に問われることがあり、精緻な知識を身に着けておく必要があります。

 ここで、監査論のテキストで掲載されているこれらの独立性を巡る論点について、会計監査を実施する会計事務所ではそれらをどのように把握・管理しているのか、気になる方も多いのではないでしょうか。

 会計事務所の中には、海外にメンバーファームを有するグループの一員であることがあり、そのような大規模な事務所では各国共通のグローバルな独立性に関する管理システムを有していることが多いです。そして、そのような管理システム上で会計事務所の各職員が一定の期間ごと(例えば四半期・年次単位)で独立性に関するアンケートに回答することで、監査人としての独立性に問題がないか、確認しています。また、各監査業務へのアサイン時においても、改めて独立性に関するアンケートに回答することで、被監査会社に対する監査業務に従事して問題がないか、確認することが求められています。

 余談ではありますが、Big4と呼ばれる四大大手会計事務所では、それぞれがメガバンク等の各大手金融機関の監査を担当しているため、もし被監査会社の金融機関口座を有している場合には、入社時・入社後の口座解約や、各種取引の制限が課されることがあります。このように、独立性確保が必要となるという監査業務の特殊性ゆえに、このような各種制限を順守することが求められています。

おわりに

 今回は、短答式試験の監査論における、法定監査(会社法監査・金商法監査)、監査人の独立性を巡る論点に関するポイントや、具体的な監査実務をイメージいただけるような周辺知識をご紹介しました。監査論には、監査を実施したことがないにも関わらず、その知識をもとに問題の解答を求められるという特徴があるため、できる限りご自身の中で監査実務の具体的なイメージを持ちながら学習を進めることが重要です。

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