「社会人1年短期合格のススメ」 Vol.40.日商簿記1級対策 -工業簿記・原価計算 論点別の対策ポイント④ 標準原価計算

目次

はじめに

 前回は日商簿記1級の工業簿記・原価計算のうち、個別原価計算の具体的な学習の進め方のコツをご紹介しました。今回も前回に引き続き、工業簿記・原価計算の学習を進めるうえでの個別論点別の対策方法をご紹介したいと思います。

標準原価計算:まずは実際原価計算との違いを押さえよう

 標準原価計算について、日商簿記2級ではパーシャル・プランやシングル・プラン、標準原価差額分析等の、代表的な計算方法を学習しました。そのステップアップとして、日商簿記1級では修正パーシャル・プランや、減損・仕損・配合差異・歩留差異等がある場合の計算方法を学習します。

 日商簿記1級の学習論点に取り組む前に、「実際原価計算」と「標準原価計算」の違いは頭の中で整理できているか、確認をしておきましょう。「標準原価計算」とは、すなわち「実際原価計算」の問題点を解消するために生まれた計算手法です。具体的には、「実際原価計算」には原価の発生から集計まで手間と時間がかかる問題点がある一方、「標準原価計算」ではあらかじめ定められた原価標準に生産量を乗じて原価を算定するため、迅速な原価計算が実行できる特徴があります。

 また、実際原価は実際価格に実際消費量を乗じて計算した原価である一方、標準原価は標準価格(予定価格・正常価格)に標準消費量を乗じて計算した原価です。原価計算が得意な方にとっては当たり前ですが、直接原価計算等のその他の原価計算手法を学習する中で徐々に違いが判別できなくなる可能性がありますので、この前提はしっかりと理解しておきましょう。

標準原価計算:修正パーシャル・プランはシングル・プランとパーシャルプランのハイブリッド

 標準原価計算の勘定記入方法は、仕掛品勘定の借方に実際原価を記入するのか、それとも標準原価を記入するのかという違いにより、シングル・プラン、パーシャル・プラン、修正パーシャル・プランの3つの記帳方法に大別されます。

 シングル・プランは仕掛品勘定の借方に原価要素別の標準原価を記入する一方、パーシャル・プランは仕掛品勘定の借方に原価要素別の実際原価を記入します。ここで、「シングル」や「パーシャル」という名前が用いられる理由を知っておきましょう。「シングル(Single)」には”ただ1つの”という意味があるため、仕掛品勘定の借方に実際原価のみが記入される記帳方法は「シングル・プラン」と呼ばれています。一方で、「パーシャル(Partial)」には”部分的な”という意味があるため、仕掛品勘定に実際原価と標準原価がいずれも記入される記帳方法は「パーシャル・プラン」と呼ばれています。カタカナばかりの記帳方法ですが、このように理解すれば難なく理解できるのではないでしょうか。

 そして、日商簿記1級で学習する「修正パーシャル・プラン」は、仕掛品勘定の借方に原価要素別の「標準原価と実際消費量の積」を記入するという特徴があります。こうすることで、製造現場で管理可能な消費量差異を仕掛品勘定で認識でき、原価管理上優れているといわれています。これはすなわち、「シングル・プラン」と「パーシャル・プラン」のそれぞれの特徴を併せ持っていると考えることもできるため、「修正パーシャル・プラン」はハイブリッドな記帳方法と覚えれば理解が進むのではないでしょうか。

標準原価計算:仕損と減損はコストの負担関係の違いを理解しよう

 標準原価計算で仕損と減損が発生する計算問題が出題された場合には、少々計算が複雑になってしまうため、身構える方も多いと思います。このような問題は公認会計士試験でも出題されますが、私自身も苦手意識がありました。

 そんな仕損と減損をマスターするために、まずそれぞれの特徴に着目して理解するようにしましょう。まず、仕損とは製造過程における失敗のことを指しており、品質基準を満たすことができないため、通常製品と同様に販売できないというように考えてみてください。一方で、減損とは、製品の製造のために投入された材料等について、製造中に蒸発する等して減ってしまうことを指しています。このように考えれば、仕損と減損の違いがイメージを持って理解できるのではないでしょうか。

 そして、原価計算上、両者はコストの負担関係が異なります。具体的には、仕損は完成品や月末仕掛品にそのコストを負担させる一方、減損は発生原因となった良品に自動的にそのコストを負担させる点に違いがあります。この違いは、教科書的な説明よりも計算で慣れたほうが理解が早く進むと思いますので、ぜひテキストの練習問題を何度も解きながらその違いを体感するようにしてみてください。

おわりに

 今回は、日商簿記1級の工業簿記・原価計算のうち標準原価計算について、具体的な対策のポイントをご説明しました。次回も今回に引き続き、論点別の具体的な対策方法をご説明しますので、乞うご期待ください。

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