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「社会人1年短期合格のススメ」 Vol.31.日商簿記1級対策 -商業簿記・会計学 論点別の対策ポイント⑪

目次

はじめに

 前回のVol.30.では、日商簿記1級の会計学・商業簿記のうち、連結会計の学習のポイントをご紹介しました。今回も前回に引き続き、主に日商簿記1級での新規論点・応用論点を取り上げ、それぞれの学習のコツをご紹介したいと思います。

持分法

 「持分法」は、日商簿記1級で学習する新規論点です。解説講義を初めて視聴したときには何となく「連結会計」と似ているようにも思えますが、会計処理はそれぞれ異なるため注意が必要です(私が日商簿記1級を学習していたときには、「連結会計」と「持分法」の区別がつかず苦労した経験があります…)。

 学習の際には、まずは「持分法」の意義を理解するようにしましょう。持分法会計基準によれば、「持分法」とは投資会社が被投資会社の資本及び損益のうち投資会社に帰属する部分の変動に応じて、その投資の額を連結決算日ごとに修正する方法をいいます。そして、「連結会計」の対象は連結会社であったのに対し、「持分法」の対象は非連結会社及び関連会社に関する投資である点で異なっています。

 日商簿記2級で学習した「連結会計」では、親会社の財務諸表と子会社の財務諸表を合算したうえで、連結修正仕訳をこれに加えることにより、連結財務諸表を作成します。そして、これらの会計処理により、「連結会計」では親会社のみならず子会社の資産及び負債も連結財務諸表に計上されることとなります。

 一方で、「持分法」においては、投資会社(=親会社)と被投資会社の財務諸表を合算せず、被投資会社の取得後剰余金のうち投資会社(=親会社)の持分部分だけを連結財務諸表に取り込み、その金額だけ投資会社(=親会社)の被投資会社株式勘定の評価額を増加させます。したがって、投資会社(=親会社)の財務諸表上では、被投資会社の個別財務諸表上の資産及び負債が単純に計上されるわけではない点で、「連結会計」と差異が生じます。

 「持分法」に関する会計処理は通常は「連結会計」ほど複雑ではないため、テキストの例題の練習を着実に進めることで、比較的早い段階で本試験水準の学習レベルに到達することができると思います。もちろん今後の会計士試験においては、「持分法」の応用論点を学習することが必要になりますが、まずは日商簿記1級で「持分法」に対する基礎的な理解を深めるようにしましょう。

連結キャッシュ・フロー計算書

 「連結キャッシュ・フロー計算書」は、日商簿記1級で学習する新規論点です。個別財務諸表を対象とする「キャッシュ・フロー計算書」に対し、「連結キャッシュ・フロー計算書」は連結財務諸表を対象として作成されます。過去の日商簿記1級の本試験問題においては、「連結キャッシュ・フロー計算書」は「連結会計」や「持分法」よりも出題頻度が低いかと思いますので、学習の進捗が芳しくない方であれば、重要度の高い他の論点の対策を進めたほうが良いと思います。ただし、会計士試験ではもちろん「連結キャッシュ・フロー計算書」の学習内容を十分に理解する必要がある点には留意してください。

 「連結キャッシュ・フロー計算書」の学習を進める際は、日商簿記1級の段階ではテキストの例題をしっかりと解けるようになることを目標とするようにしましょう。原則法と簡便法の2種類の作成方法があることを知り、テキストの例題を通じてそれぞれの解答方法の特徴を掴むようにすれば、効率的に学習を進めることができるはずです。

 また、「連結キャッシュ・フロー計算書」は「キャッシュ・フロー計算書」と同様に、企業のキャッシュ(すなわち現金等)の動きに着目している点に留意するようにしましょう。具体的には、キャッシュ(現金等)がどのように動くかイメージを膨らませるように心がけてください。たとえば、減価償却費は会計上は費用計上されるものの、実際にはキャッシュ(現金等)の流出は生じていないため、「キャッシュ・フロー計算書」上でその分調整をする必要があります。もちろん、テキストの例題や本試験問題では減価償却費以外の様々な取引も問題文で問われることになりますが、キャッシュ(すなわち現金等)の動きに着目するという基本動作を忘れないようにしてください。

セグメント情報

 「セグメント情報」は、日商簿記1級で学習する新規論点です。「1株当たり情報」と同様に、あくまで財務諸表の開示上で必要となる情報であり、個別財務諸表や連結財務諸表の作成に必要となる会計処理ではない点に留意ください。

 「セグメント情報」とは、売上高、利益(又は損失)、資産その他の財務情報を、事業の構成単位に分別した情報です。「セグメント情報」を開示することにより、企業の財務情報を構成単位別に理解することができるため、たとえば事業が多角化しているような企業を理解する場合等では非常に有用です(もしご興味がある方がいらっしゃれば、有名企業の有価証券報告書のセグメント情報に関する注記をご覧いただければ、イメージが膨らみます。

「セグメント情報」の学習を効率的に進めるためには、報告セグメントの決定に用いられる集約基準・量的基準を暗記し、テキストの例題を通じて「セグメント情報」の開示で必要とされる各種数値の計算方法を体に叩き込むことが効果的です。ただし、「セグメント情報」は「連結キャッシュ・フロー計算書」等と同様に、過去の日商簿記1級の本試験問題においては、比較的出題頻度が低い分野かと思いますので、学習の進捗が芳しくない方であれば、重要度の高い他の論点の対策を進めるほうが良いと思います。

おわりに

 今回は、日商簿記1級の会計学・商業簿記のうち、持分法、連結キャッシュ・フロー計算書、セグメント情報について、具体的な対策方法をご説明しました。日商簿記1級は日商簿記2級と異なり、学習量・難易度ともにレベルアップしますが、焦らず一つ一つ着実に学習を進めていくようにしましょう。

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