「社会人1年短期合格のススメ」 Vol.25.日商簿記1級対策 -商業簿記・会計学 論点別の対策ポイント⑤-

目次

はじめに

 前回のVol.24.では、日商簿記1級の会計学・商業簿記のうち、リース取引、社債について、論点別の具体的な対策方法をご紹介しました。今回も前回に引き続き、主に日商簿記1級での新規論点・応用論点を取り上げ、それぞれの学習のコツをご紹介したいと思います。

税効果会計

 日商簿記2級では、税効果会計のうち引当金、減価償却およびその他有価証券に係る一時差異を学習しました。一方で、日商簿記1級ではその派生論点として、棚卸資産の評価損等に係る将来減算一時差異、圧縮記帳等に係る将来加算一時差異、税率の変更や繰延税金資産の回収可能性の検討を学習します。あくまで本試験対策をするという観点に立てば、日商簿記1級で学習する棚卸資産の評価損等に係る将来減算一時差異や圧縮記帳等に係る将来加算一時差異については、日商簿記2級で学習した一時差異の種類が増えるだけにすぎませんので、学習の負担はそこまで重くないでしょう。一方で、税率の変更や繰延税金資産の回収可能性の検討は日商簿記1級で新たに学習しますので、きちんと理解と復習をする必要があります。なお、税効果会計の学習はどちらかというと頭の体操に近い論点もありますので、主にテキストの例題演習を通じて問題や仕訳のパターンを覚えていくのが非常に効果的です。

まず日商簿記1級での対策を始めるにあたり、なぜ税効果会計が必要なのか、その理由を改めて理解するようにしましょう。税効果会計とはテキストに記載の通り、企業会計上の資産または負債の額と課税所得計算上の資産または負債の額に相違がある場合において、法人税を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とする手続のことです。これではかなり堅い言い回しですので、初めのうちは尻込みする方もいらっしゃるのではないでしょうか。税効果会計が必要となる理由を簡単に言えば、企業会計と税務会計のズレを調整することで一会計期間における損益を適切に算定したいから、といえます。企業会計は企業を取り巻く利害関係者に企業の状況を正しく伝えることを目的としている一方、税務会計は企業が公平に課税されることを目的としているため、両者には少なからずズレが生じてしまいます。具体的には、企業会計では収益や費用として計上できたとしても、税務会計上ではそれが収益や費用として認められないものが存在します。このようなズレを可能な限り調整するため、税効果会計が必要とされています。

次に、日商簿記1級で新たに学習する論点について、テキストの例題演習を通じて理解を進めましょう。特に、繰延税金資産の回収可能性の検討は注意して学習を進めましょう。なぜ回収可能性を検討するかというと、将来の税金負担額を軽減する効果を持つ繰延税金資産が、企業の状況に照らして本当に税金の軽減効果を有しているか、きちんと把握する必要があるためです。したがって、将来において税金の軽減効果を有していない(=回収可能性がない)と判断された繰延税金資産は仕訳計上せず、評価性引当額として財務諸表上で注記するにとどまります。

会計上の変更及び誤謬の訂正

 会計上の変更及び誤謬の訂正は、日商簿記1級で学習する新規論点です。新たに学習する用語・解法が多いため、初めて学習したときには一度では内容を理解することができないかもしれません。私が日商簿記1級の学習や本試験対策に取り組んでいた時には、正直なところ会計上の変更及び誤謬の訂正がよくわからなかったため、テキストの例題を無理矢理暗記してしまっていました(なお、私はその後の会計士試験短答式試験において、会計理論を学習するなかでやっと会計上の変更及び誤謬の訂正の内容を理解することができました)。しかし、本来は会計上の変更及び誤謬の訂正のそれぞれの意味合いをしっかり理解しながら学習することが大切です。

まず、会計上の変更及び誤謬の訂正の学習にあたり、会計処理のパターンを場合分けして整理してみましょう。会計上の変更及び誤謬の訂正の会計処理は、①会計方針の変更、②表示方法の変更、③会計上の見積りの変更、④過去の誤謬の訂正の4つの会計処理に大別されます。クレアールのテキストでは、会計基準の適用範囲と原則的な取り扱いをまとめたマトリックス図表が掲載されていますので、ぜひ参考にしてください。

次にこれら4つの会計処理がそれぞれ何を意味しているのか、理解するようにしましょう。たとえば、①会計方針の変更では企業が採用していた会計方針を変更するときに用いられますし、②表示方法の変更では財務諸表の表示方法を変更するときに用いられます。当たり前ではありますが、具体的に何を変更することを目的としているのか、改めて理解しましょう。

そして、これら4つの会計処理ごとに、”原則的な取り扱い”と”原則的な取り扱いが実務上不可能な場合の取り扱い”を学習してください。その際には、テキストの例題演習を通じて実際の数値例をもとに理解を進めるのがとても効果的です。 会計上の変更及び誤謬の訂正は内容をスムーズに理解するのに時間がかかり、学習や本試験の対策が滞りがちな分野と言えます。一方で、学習の際には会計処理のパターンを場合分けし細分化して理解することが非常に効果的です。

おわりに

 今回は、日商簿記1級の会計学・商業簿記のうち、税効果会計と会計上の変更及び誤謬の訂正について、具体的な対策方法をご説明しました。次回も今回に引き続き、論点別の具体的な対策方法をご説明しますので、乞うご期待ください。

講座パンフレットやお得な割引情報などを無料でお届けします。
講座についてのご相談を受け付けております。お気軽にお問合せください。
講座のお申し込み案内ページです。講座をお申し込みの方はこちらからどうぞ。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次