[2023年最新版] 公務員試験の今がわかる!その動向を解説します

公務員という職業に関心を持ったものの、「公務員は人気だから狭き門に違いない」「競争倍率が相当高いはず」と思っている方も多いと思います。

ここでは、公務員試験を取り巻く動向について、さまざまな側面から客観的なデータも参考にしつつ検証いたします。

目次

倍率の推移からわかる公務員試験の動向

 まずは、過去10年間の公務員試験倍率について実施データをご覧ください。

 上記のデータは2012年から2022年の受験者数、最終合格者数および競争倍率の推移をグラフにしたものです。

国家公務員、地方公務員で特に受験者数の多い「国家一般職(大卒程度行政区分)」「特別区Ⅰ類(東京23区)」を一例としてご紹介していますが、10年前と比較していずれも受験者数が減少しています。

 一方で最終合格者数は若干の波はあるものの増加傾向となっているため、競争倍率も低下が続いています。「公務員=人気の職業」というイメージをお持ちの方にとっては意外なデータに思われたのではないでしょうか。

 受験者数の減少におけるもっとも大きな原因は「少子化の影響」が挙げられます。
20年前と比べても新成人の人口は減少しているため、当然のことながら受験対象の人口が減ることになりますが、これは行政だけでなく民間企業も含めて人材確保が難しくなるという問題を引き起こしています。

もう一つの原因に「試験スケジュールの遅さ」も挙げられています。

 民間企業と比べて公務員試験の実施スケジュールは遅く、大学4年次の春から試験シーズンが始まり、秋頃まで行われています。

 卒業を目前に控えた年の瀬に採用が決まる、ということもあるため、「卒業までに内定をもらわなければ」という学生の多くは焦って民間企業の内定を受けてしまうケースも少なくありません。

 

新型コロナウィルスが公務員試験にもたらした影響とは?

 新型コロナウィルスの感染が世界的に広がった2020年は、飲食業界、観光業界、航空業界などをはじめとした企業の経済活動に大きな打撃を与えました。

 このことにより民間企業全体の就職状況が急激に悪化するといった動きになり、注目を浴びたのが公務員です。

 昔から民間企業と公務員はシーソーのような関係にあり、好景気で就職状況が安定していると民間企業の人気が高まり、景気が悪くなると公務員の人気が高まるといったことを繰り返していました。

 これは、公務員という職業に魅力を感じたからではなく、公務員の持つ「安定性」に注目が集まり、瞬間的に公務員志向が高まっていたといえます。

 そのため、もともと民間企業を考えていた方にとっては、公務員になるためのモチベーションが高いわけではないことから、学習負担が必要となる試験では受験者が伸びないままとなっていました。

※2020年に受験者数が極端に減り、その後V字回復をしているように見えますが、2020年はコロナ禍に入ったばかりで感染リスクへの不安が高まったことで受験控えが起こっていました。
 そのため、2021年に受験者が増えたというより2020年のような受け控えが起こらなかったとお考え下さい。

試験方式の変化から見る公務員試験の動向

 昨今の受験者数減少によって、公務員試験にはいくつかの変化が起こっています。
その代表的なものをここでご紹介します。

教養試験のみで受験可能な枠の新設
新しい試験方式の増加
幅広い日程で受験できる「テストセンター方式」の導入
筆記試験の出題数を軽減

教養試験のみで受験可能な枠の新設

 これまで、県庁や政令市など、いわゆる「地方上級試験」は教養試験と専門試験がどちらも課されるというのが一般的でした。しかし、昨今の地方公務員試験では、教養試験だけで受験可能な区分を設けることが多くなっています。

 2022年に行われた全国都道府県・政令市の試験状況を見ると、自治体によって「行政A」「行政B」のように、従来型と教養型で受験区分を選ぶことができるようになっています。

[2022年度 全国都道府県庁試験データ]

新しい試験方式の増加

 次に挙げられる変化は「新しい試験方式の増加」です。
 ご存じの方も多いと思いますが、市役所試験では従来のような「教養試験」や「専門試験」ではなく、SPIやSCOAといった、民間企業の就職試験で使われるタイプを採り入れることが増えています。

 この背景としては、受験者数を増やすという目的があります。
「特別な公務員試験の対策を立てずに受けられる」と謳っているため、民間企業で就職活動を進めている大学生に対して併願を呼びかけることもできます。
(もちろん、筆記試験よりも人物重視をするためという目的もあると思いますが)

幅広い日程で受験できる「テストセンター方式」の導入

 新しい試験方式を導入している自治体では、試験の日程が「●月●日~●月●日」のように期間で設定されています。これは、従来のように試験会場に集まってペーパーテストを受験するやり方ではなく、「テストセンター」で指定期間の中から自由に受験できる方式です。

 特にコロナ禍を境に導入事例が増えていますが、これは感染リスクを避けるという目的もありつつ、受験者数を増やすうえでのメリットもあります。

 従来は多くの市役所が同一日程に試験を実施することが多く、そのため受験者がなかなか集まりにくかったのですが、受験者は併願先を増やしやすくなり、その分自治体も受験者を増やすことができたと考えられます。

 こうしたタイプの試験は市役所を中心とした地方公務員試験で導入されていますが、ここ数年で県庁・政令市などの採用試験においても導入するケースが増えています。

 6月中旬頃に行われる従来の試験とは別に、3月から4月にかけて「早期枠」「特別枠」などの区分を新設し、SPIで受験できる試験が増加傾向にあります。

 前述のとおり、民間企業と比べて試験スケジュールが遅いことを問題視した自治体が、少しでも早く人材募集活動に踏み切ろうとしていることが窺えます。

筆記試験の出題数を軽減

 2023年3月に公表された情報ですが、2024年より国家公務員(大卒程度)の筆記試験において出題数が減ることになりました。
具体的には基礎能力試験(教養試験)が従来の40題から30題となり、その中でも一般知識分野の出題数が大きく減少するとのことでした。
※知識分野には新たに「情報」から出題されます。

[出題科目の変更内容]

現行[40題2時間20分]

知能分野27題
 文章理解11
 判断推理8
 数的推理5
 資料解釈3
知識分野13題
 自然・人文・社会(時事を含む)13題

令和6年以降[30題1時間50分]

知能分野24題
 文章理解10
 判断推理7
 数的推理4
 資料解釈3
知識分野6題
 自然・人文・社会、時事、情報6題

「受けやすい=受かりやすい」ではない!?

公務員試験の倍率が低下していることや、学習負担の少ない試験が増えていることをお話ししましたが、注意すべきこともあります。

 それは「受けやすい試験」が「受かりやすい」とは限らないということです。

 SPIやSCOAのように学習負担の少ない試験を行う自治体は「受けやすい試験」ですが、受けやすい試験は人が集まりやすいため、自治体によっては高倍率となることがあります。

 例として、いくつかの試験データを参考にしていただこうと思います。

2022年市役所試験実施データより

都道府県都市名 区分試験方式倍率
北海道函館市教養(Standard 1)5.7
旭川市書類選考、SPI35.2
岩手県盛岡市教養(Standard1)3.7
秋田県秋田市行政A教養(Standard 1)・専門3.2
山形県山形市行政A教養(Standard 1)・専門3.6
福島県福島市教養(Standard 1)・専門4.1
郡山市一般行政A(SPI)SPI16.3
いわき市教養(Standard 1)・専門4.8
茨城県水戸市SCOA-A14.8
栃木県宇都宮市age22-29教養試験7.6
群馬県前橋市教養・適性検査(30分間)13.8
高崎市教養(60分間)8.1
埼玉県川越市大学A(事務)教養(Standard 1)・専門3.5
川口市教養試験4.6
越谷市教養(Standard1)4.8
千葉県船橋市行政A教養(Standard 1)・専門5.1
船橋市行政B教養のみ7.5
柏市一般事務A教養(Standard 1)・専門3.4
船橋市一般事務B(SCOA)SCOA-A4.2
東京都八王子市教養(30分間)15.8
神奈川県横須賀市書類選考SPI320.2
山梨県甲府市教養(Standard1)4.9
長野県長野市教養(60分間)・専門3.0
岐阜県岐阜市教養(Standard1)・専門2.4
愛知県豊橋市教養(Logical2)26.8
岡崎市SPI320.5
豊田市SPI315.0
富山県富山市教養(Standard1)・専門3.8
石川県金沢市教養(Standard1)・専門3.0
福井県福井市教養(Standard1)・専門4.0
滋賀県大津市SPI310.9
大阪府豊中市SPISPI323.4
枚方市SCOA-A23.5
八尾市事務職ASCOA-A35.8
寝屋川市録画面接15.9
東大阪市SCOA-A10.3
兵庫県姫路市事務A-1教養(Standard1)・専門6.2
姫路市事務A-2教養(Standard1)・専門10.1
尼崎市事務A(新卒)SPI317.8
西宮市事務A-1(SPI)SPI329.1
奈良県奈良市SPI34.4
和歌山県和歌山市Ⅰ型(教養・専門)教養・専門3.6
和歌山市Ⅱ型(SPI)SPI35.4
鳥取県鳥取市教養(Standard 1)6.7
島根県松江市教養(Standard1)3.5
岡山県倉敷市事務職A教養(Standard1)・専門6.4
倉敷市事務職B教養・専門なし10.0
広島県呉市教養(Standard1)・専門4.6
福山市Ⅰ種A 事務職教養(Logical1)・専門3.6
福山市Ⅰ種B 事務職教養試験8.5
山口県下関市教養(Logical1)・専門4.6
香川県高松市教養(Standard1)・専門5.2
愛媛県松山市教養(Standard1)・専門7.8
高知県高知市教養試験7.3
福岡県久留米市事務職A(専門)教養試験・専門試験4.7
長崎県長崎市教養(Standard 1)9.0
佐世保市教養試験(60分間)2.9
大分県大分市教養試験(60分間)・専門試験9.9
宮崎県宮崎市一般事務A教養(Standard1)5.0
宮崎市一般事務B総合能力試験13.0
鹿児島県鹿児島市教養試験・専門試験6.0
沖縄県那覇市教養(Standard 1)・専門11.2

 すべての自治体ではないものの、おおむね試験の内容が従来タイプのものに比べて、SPIやSCOAのようなタイプは競争倍率が高くなることが多いようです

 前述の国家公務員や特別区についても、教養試験と専門試験が課されているため、コロナ禍で瞬間的に関心が向いただけでは急に受験者数が増えなかったということになります。

 もちろん、働きたいと思える自治体がSPIやSCOAを導入している方には、「倍率が高いから受験をしない方がよい」といったことではなく、心して準備しておかれることをおすすめしますし、逆に「受けやすそうな自治体だけ受けよう」と軽い気持ちで考えている方には、受けやすい試験が受かりやすいわけではないことを先にお伝えしておこうと思います。

公務員試験の「今」を見て、あなたはどう動きますか?

 今回はさまざまな試験データや情報から公務員試験の動向についてお話をしましたが、公務員試験は売り手市場にあります

 本気で準備をすれば、道のりは厳しく見えても競争倍率はさほど高くないこともお分かりいただけたと思いますが、それだけに「時間」や「労力」と引き換えにできる「目的」も必要です。

 「なんとなく安定しているから」「民間のように利益に振り回されないから」という漠然とした目的よりも、公務員としてどのような人生を送りたいのか、どのような事を実現したいのかを考えることが大切です。

 公務員試験に合格すること自体を目的にしてしまうと、時間と労力をかけて学習をしていても「なんのために」という明確な動機づけができず、途中で挫折してしまう恐れがありますが、合格後のビジョンを持っている方は、苦しい時に乗り越えることができます。もちろん、面接試験でもそのビジョンを話せる人が合格できると思います。

公務員といっても千差万別。あなたに合った公務員とは?

 「公務員」にもさまざまな種類があります。

地域住民の顔が見える距離感で行政サポートに携わる市役所や区役所職員。

県全体のまとめ役として民間企業や県内の市町村と連携する県庁職員。
国の政策作りに携わったり、希望の省庁で専門的な分野の業務に携わる国家公務員。
または住民の安心・安全な暮らしを守るためにはたらく警察官や消防官。

 「公務員」は「民間企業」と同等の幅広い意味を持っているため、その中でもどんな公務員が自分に合っているかを考えることが一番最初にやっておくべき準備と言えます。

  公務員の進路選択についてお悩みの方は、ぜひクレアールにご相談ください!

 

この記事を書いた人
クレアール公務員相談室タニオカ
これまで、公務員試験の受験・学習を考える3,000人以上の相談に答えた実績を持つアドバイザー。「公務員 転職ハンドブック」「ココからスタート!公務員試験入門ハンドブック」などを執筆。

講座パンフレットなどを無料でお届けします。
講座についてのご相談を受け付けております。お気軽にお問合せください。
講座のお申し込み案内ページです。講座をお申し込みの方はこちらからどうぞ。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次