IFRSの「リサイクリング」禁止について

先日、5月25日に公認会計士・監査審査会より、令和9年(2027年)の短答式試験から導入される「英語による出題」において、出題範囲が発表されました。

その中で、財務会計論の出題範囲で網掛けとなっている「その他有価証券評価差額金」の会計処理には、日本基準とIFRSとの間で実は大きな違いがある論点があります。

それは、その他有価証券を売却等した際に「リサイクリング」することをIFRSでは禁止している点です。少し難易度が高いですが、今回は、「リサイクリング(Reclassification)」に焦点を当て、試験対策として押さえておくべき英語のキーワードと理論のポイントを解説します。

パズルのような論点ですが、財務諸表論の深い理解にも繋がると思うので是非参考にしてみてください。

目次

1. 「リサイクリング」とは何か?

「リサイクリング」とは、「純資産に直接計上されていた含み損益を、売却などのタイミングで当期の損益(P/L)に振り替えること」を指します。

代表的なものとして「その他有価証券評価差額金」が挙げられます。

日本基準:リサイクリングを行う

その他有価証券(Available-for-sale securities)を期末に時価評価した場合、評価損益は当期の損益(P/L)ではなく、その他有価証券評価差額金として純資産の部に計上されます。翌期以降、売却した際、それまで純資産(評価換算差額)に溜まっていた含み益(含み損)を、売却損益としてP/Lに計上します。これが日本で馴染みのある「リサイクリング」です。

IFRS:一部の金融商品でリサイクリングを禁止

IFRSでは、特定の区分(FVTOCI)を選択した資本性金融資産(株式など)について、「一度純資産に入れたものは、売却しても二度とP/Lには通さない」というルールがあります。

FVTOCIとは、「Fair Value Through Other Comprehensive Income」の略称で、日本語では「その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産(または金融負債)」と訳されます。

日々の時価の変動は認識するけれど、その損益は損益計算書(P/L)ではなく、純資産の部(その他の包括利益:OCI)に直接放り込んでおこう、という会計処理のグループのことです。

2. 図解:IFRSにおける「利益」の最終地点

IFRSでリサイクリングが禁止されている場合の、お金の流れを視覚化してみましょう。

【リサイクリング禁止のパターン】

①保有中: 期末に時価が上がった!

 [ 資産 ] ──> [ OCI (純資産) ] ※P/Lは通らない

②売却時: 価値が上がったので売却した!

 [ OCI (純資産) ] ──> [ 利益剰余金 (純資産) ]

ポイント:  矢印がずっと「純資産(Equity)」の中で完結しており、一度も Net Income(当期純利益) を通過していません。これがリサイクリング禁止の正体です。

3. 英語理論問題の「頻出フレーズ」を読み解く

英語の正誤判定で、受験生が最も混乱しやすいポイントです。

フレーズ①:リサイクリングの禁止について

​”Reclassification is prohibited for FVTOCI equity instruments under IFRS 9.”

(FVTOCI株式について、組替(リサイクリング)はIFRS第9号のもとで禁止されている。)

正誤判定:正しい

「Prohibited(禁止)」という強い言葉がキーワードです。また、リサイクリングはIFRS原文では「Reclassification」という単語が使用されています。

フレーズ②:売却時の振替先について

​”Upon disposal, OCI goes directly to retained earnings.”

(処分(売却)時、OCIは直接利益剰余金へ行く。)

正誤判定:正しい

P/Lを通らずに利益剰余金(Retained earnings)へ直接振り替えるのがルールです。

「disposal」は処分、売却という英単語です。固定資産の処分も同じ単語として使用されます。

4. 攻略のコツ:P/Lを通るか、通らないか

英語の問題で “Equity instruments” や “FVTOCI” という単語が出てきたら、「IFRSはリサイクリング禁止」がキーワードです。

“Reclassification”や”Profit or Loss” という単語が肯定的に使われていれば、それは日本基準の話か、あるいは誤った記述です。

“Directly to retained earnings” という表現があれば、IFRSの正しい処理を指している可能性が高いです。

英語出題は一見高い壁に見えますが、問われるのは「会計の核となる理論」です。日本語で理論を固め、そこに英語のキーワードを乗せていけば、必ず得点源にできます。

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