第511条【差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止】
① 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。
② 前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
目次
【解釈・判例】
1.差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできない(1項)。
2.差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え前に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる(1項)。この場合、自働債権と受働債権の弁済期の先後は問題とならない(最判昭45.6.24)。
3.差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、当該債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる(2項本文)。
4.債権が譲渡された場合であっても、その債務者が、譲渡通知を受けたにとどまり、かつ、当該通知を受ける前に譲渡人に対して反対債権を取得していたときは、被譲渡債権及び反対債権の弁済期の前後を問わず、両者の弁済期が到来すれば、被譲渡債権の債務者は、譲受人に対し、反対債権を自働債権として、被譲渡債権と相殺することができる(最判昭50.12.8)。