民法 第506条【相殺の方法及び効力】

第506条【相殺の方法及び効力】

① 相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。

② 前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。

目次

【超訳】

相殺の意思表示をすると、相殺適状時にさかのぼって、債権・債務が対当額だけ消滅する。この相殺の意思表示には、条件または期限を付けることはできない。

【解釈・判例】

1.相殺の方法

(1) 相殺は、当事者の一方から相手方に対する一方的意思表示によってなされる(本文)。

① 相殺は意思表示があって初めて効力を生ずる。単に両債権について相殺適状を生じただけでは相殺の効力は生じない。相手方の同意は不要。

② 受働債権が譲渡され、譲受人が対抗要件を具備するときは、相殺の意思表示はその譲受人に対してなされなければならない(最判昭32.7.19)。

(2) 相殺の意思表示に条件または期限を付すことはできない(ただし書)。

→ 条件を付すことは法律関係を紛糾させ、一方的な意思表示によって相手方の地位を不安定にし、また、相殺は遡及効を有するから期限を付すことは無意味だからである。

2.効果

(1) 債権の消滅

① 自働債権と受働債権とは対当額で消滅する(本条1項)。

② 自働債権の額が受働債権の総額に及ばないときは、弁済充当(488条~491条)に従って、相殺によって消滅する受働債権の順序(受働債権が数個ある場合)を決定する(512条)。ただし、費用、利息、元本の順序は変更できない(491条の準用)。

(2) 相殺の遡及効

① 相殺は、相殺適状時に遡って効力を生ずる(506条2項)。

→ 双方の債権が相殺適状にあれば、既にその債権は決済されたと考えるのが当事者の取引意思に沿うからである。相殺適状を生じた以後は利息は発生せず、相殺適状後に生じた履行遅滞の効果も消滅する。

② 賃貸借契約が、賃料不払いのため適法に解除された後に、賃借人の相殺の意思表示により賃料債務が遡って消滅しても、解除の効力に影響はないこのことは、解除の当時、賃借人において自己が反対債権を有する事実を知らなかったため、相殺の時期を失した場合であっても、異なるところはない(最判昭32.3.8)。

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