令和4年度司法書士試験一発合格者インタビュー( 2024年目標2年セーフティコースの2023年お試し受験で一発合格) 夏目田 莉紗さん 

夏目田 莉紗さん
清水 城講師
目次

司法書士試験に合格するまでの過程

清水:それでは一発合格者インタビューを開始いたします。今日はよろしくお願いします。

夏目田:よろしくお願いします。

清水:はじめに、司法書士試験に合格するまでの過程についてお伺いします。

 世の中にいろいろな資格がある中、なぜ司法書士を目指そうとしたか、お聞かせください。併せて、差し支えない範囲で、今までのお仕事や、法律の学習経験についても伺わせていただきたいと思います。

夏目田:私は子どもの頃から、将来は人に頼られる専門家になりたいという想いを持っており、大学時代には弁護士を目指しておりました。ですが、高校時代に突然母親が亡くなって、当時は高齢の祖母と2人暮らしをしていたという事情があったので、法科大学院に進学するよりも、とりあえず公務員になって働きに出る方が、自分の心身も安定しますし、また祖母を安心させられると考えて、一度、国税専門官として就職しました。

 この時に、国税職員を選んだ理由としては、あらゆる公務の中でも公共性、専門性の高い税金の分野で働くことができるし、また、税務調査の仕事にも関心があったからです。

 実際、税務調査にはやりがいがありましたが、公務員はどうしても異動がつきものですし、調査を通じて知り合った納税者の方が、その後、自分を頼って連絡をくれたとしても、公務の性質上、最後まで対応することができなくて、歯痒い思いをすることがありました。

 そして、コロナ禍の中で、税務調査の件数も減りまして、だんだんとやりがいを見失いつつあった中で、大学時代の法律の勉強が楽しかったことを思い出しました。ここで一度、民間企業に転職して、企業法務や営業事務に短期間携わったのですが、その会社の事業に関する狭い知識のみ抜き出して使うのではなくて、大学時代のように、「もっと思いっきり法律全体を勉強したい、とにかく法律の難関資格を取りたい」という気持ちが再燃しました。

 その結果、試験に合格すればいつでも就職することができ、また、広く市民に頼られる法律家である司法書士を目指そうと思いました。

 法律の学習経験につきましては、大学時代は法学部で、司法試験に向けて法科大学院の受験勉強をしており、また公務員試験も受験しているので、一通りはありました。付け加えて言うと、国税専門官の時に行政書士の資格も取得していました。

清水:法学部出身であることや、司法試験向けの勉強をしていたことは、司法書士試験についても有利に働きましたか。

夏目田:法学部での勉強や、司法試験向けの勉強が司法書士試験の勉強に役立っているかというと、もちろん民法等の考え方に慣れていることにより勉強がスムーズに進む部分もありましたが、直接役に立ったという感じではなかったかなと思っています。と言いますのも、民法等を学んだことはあっても、メインである登記法の学習経験がなく、完全に未知の科目でしたので、クレアールでは敢えて初学者コースを申し込みました。司法書士試験合格のためには基礎知識が重要なので、背伸びすることなく初学者コースにしてよかったと思っています。

今年の司法書士試験を振り返って

清水:分かりました。では、次に、今年の司法書士試験を振り返っていただきます。

 まず、本試験当日をどのような気持ちで迎えたか。午前の部の問題を解いた後の感想、午後の部の問題を解いた後の感想、そして本試験を終えて、どのように感じたかをお聞かせください。

夏目田:本試験当日は、正直なところ、今年合格できる自信があまりなかったので、「せめて今の段階のベストを尽くそう。ベストを尽くしさえすれば、合否に関わらずそれで良いんだ」と開き直った気持ちで臨みました。

 午前の部については、それほど引っかかる問題がなく、スムーズに解き進めることができて、「特に手応えがあったわけでもないけど、そこまで悪い出来ではないかな」という印象でした。

 午後の部については、私は、マイナー科目択一、商業登記法択一、商業登記記述、不動産登記法択一、不動産登記記述の順で解くと決めていたのですが、この解く順番はかなり少数派だと思います。本試験は試験会場の席がとても狭く、自分だけ微妙なタイミングで問題用紙がめくるのが、急に恥ずかしくなってしまったことを覚えています。

 今年は、商業登記の記述が全く想定してなかった合同会社からの出題でしたし、模試や答練で本当に頑なにこの順番で解くことしか練習してこなかったことを、かなり後悔しました。

 さらに言うと、本試験当日の昼休みに突然、「不動産登記記述は絶対に抵当権が出るだろう」と急にヤマを張ってしまい、抵当権のひな形を全部確認しました。

 しかし、いざ蓋を開けてみると、自分でヤマを張った抵当権のひな形に関する知識は全部、不動産登記法の択一で出題されてしまい、記述ではかすりもしなかったので、当日の15時を回る頃には完全に心が折れてしまいました。

 でも、心が折れたなりに無理やりでも思いついたことを全部答案用紙に書いてきたのが、結果として得点につながったのかなと思っております。

クレアールを選択した決め手

予備校選びのポイント

清水:では次に、予備校選びのポイント、クレアールを選択した決め手についてお伺いします。まず、複数ある予備校の中から、クレアールのどこが良いと思われたかをお聞かせください。そして、クレアールの司法書士講座で合格を目指して頑張ろうと決めた理由を、いくつでも良いので教えてください。

夏目田:私がクレアールを選んだ理由は主に3つあります。

 1つ目は『択一六法』という独自の教材に強く惹かれたからです。司法書士試験が法律に関する資格試験である以上、条文を読む行為は絶対に避けて通れません。『択一六法』を眺めることで、その法律全体について体系的な理解が早まると考えて、学習初期からなるべく触れるようにしていました。学習を始めてすぐの段階で、『択一六法』を送っていただけたので、これは非常に大きなメリットであったと考えています。自分にとっては、これがクレアールを選んだ最も大きな理由です。 

 2つ目は、教材が『テキスト』、『択一六法』、『過去問題集』、『合格書式マニュアル・対応問題集』、『記述式ハイパートレーニング』という非常にシンプルな構成でありながら、過不足のない分量である点です。司法書士試験は試験範囲がとても広いので、いくら教材をたくさん揃えても、それを使いこなせなければ意味がないどころか、むしろ消化しきれない教材を抱えることはとてもストレスになってしまうと考えました。クレアールの教材はシンプルな構成だからこそ、迷いなく『択一六法』に知識を集約することもできますし、それがとても良かったです。

 3つ目は紙教材とPDF教材をフルに利用できるにもかかわらず、受講料が非常に安い点です。私は安心保証プランを付けて、3年間受講できるコースを申し込みましたが、それでも大手予備校の1年の受講料の半分くらいの金額で済んで、これは専業受験生の身としては非常にありがたいことでした。

清水:1つ目の理由の『択一六法』に惹かれたという点ですが、それは今まで法律の学習経験があったから、条文の学習の大切さを知っていたということですか。

夏目田:はい。結局、条文を元にして理解していかないと応用が利かないというか、全ての範囲を網羅したことにならないなという考えもありましたし、司法書士試験は非常に細かい知識、細かいけれど基本的な知識を問われるという印象を持っていたので、やはりまず条文を大事にする勉強が必要なのかなと考えました。

清水:次に、通学講座ではなく、通信講座を選んだ理由をお聞かせください。

夏目田:通信講座を選んだ理由としましては、私は科目によって学習経験が異なりましたので、例えば何度も学習している民法などについては、時間をかけずにどんどん講義を聴いていきますが、初めて学習する登記法などについてはじっくり聴くというように、科目ごとにメリハリをつけて受講できると考えたからです。

 ですが、結局、あまりに試験範囲が広かったので、ほとんどの科目の講義を1.75倍速か2倍速で聴いていまして、結果として通学で受講するよりもはるかに短時間でインプットを終わらせることができたので、やはり「通信にして良かったな」と思いました。

 あとは、電車に乗らないと通学できない範囲にしか他の予備校がなかったので、コロナ禍の中ですし、自宅で完結できるものは全て自宅で終わらせようという気持ちもありました。通学時間がかからない分、家事などを行うこともできますので、ゆとりを持って生活することができました。仮に通学のオプションがあったとすると、通学で聴こうか、Webで聴こうかをいちいち悩んでしまいそうだなとも思いましたし、選択肢が絞られていることによって時間が節約になることもあると思いました。

クレアールを受講した感想

清水:では次に、クレアールを受講した感想についてお聞きします。

 夏目田様は、目標年度よりも1年前のお試し受験となります令和4年度司法書士試験で、見事に難関資格と言われている司法書士試験に合格なさったわけですが、クレアールで受講してよかったところをお聞かせください。

夏目田:クレアールで受講してよかったところは、まず講義は要点がぎゅっと絞られていることに加えて、講師の方々の話し声がとてもクリアで、1.75倍速や2倍速にしても問題なく視聴することができた点です。タイムパフォーマンスがよく、どんどん自分のペースで学習を進められるのが自分に合っていました。

 講師の方々もよい意味で癖がなくて、講義にも無駄がなくて、でも親切丁寧な話し方でしたので、初めて学習する登記法にも取り組みやすかったです。

 あとは、パワーポイントも色数が適度に抑えられていてとても見やすく、何よりメモが取りやすくてよかったです。講義を聴きながら大量のメモを取らなければならないと、視聴が億劫になってしまいますが、ほどよい量でメモの取りがいがあったと思います。

 また、私も他の受験生の例に漏れず、例えば共同抵当、区分建物、組織再編などが苦手だったのですが、こういう苦手分野については、復習講義を定期的に視聴することで記憶喚起にとても役立ちました。それに加えて、主要4科目については過去問の解説講義も付属しているので、学習初期からどんどん過去問を解くことができて、問題演習の意欲も湧きました。

 クレアールのテキストや答練の教材に全て共通して言えることですが、ボリュームがあり過ぎず、かといって足りないということはもちろんなくて、満遍なく重要なポイントが網羅されている点が、一番よかったと思います。試験範囲がとても広いので、全てにおいてハイペースで回転させることができるのも、適切な分量の教材だったからだと思います。

 サポート等につきましては、私は筆記試験が終わるまでは、クレアールに自分から問い合わせることはありませんでしたので、最近の話にはなってしまいますが、筆記試験の合格後に口述試験対策や新人研修、特別研修、認定考査とか、就職のタイミング等について問い合わせてご相談させていただき、その都度、親身にいろいろと情報を教えていただきました。最終合格発表後の現在も、まさにその恩恵を受けていると感じております。

清水:パワーポイントについて、メモが取りやすくてよかったということでしたが、具体的にパワーポイントの資料を印刷して、その余白にメモをされていたのですか?

夏目田:そうではなくて、テキストが結構余裕のある、余白が大きく取られているサイズでしたので、その該当箇所に書き込むか、書ききれない時は、原稿用紙や罫紙(けいし)みたいな紙に自分でパワポの内容をメモ書きして、それを切り取って貼り付けたりしていました。また、テキストだけでなく『択一六法』にも貼り付けていました。

そのため、資料を紙に打ち出すことは一度もしていなかったです。

清水:分かりました。

通信講座のメリット

清水:次に、通信講座のメリットについてですが、実際に通信講座で学習を進めていく中で、こんなことがよかった、この点は利便性が高かった、そして最もよく活用した点がありましたらお聞かせください。

夏目田:講義動画を2倍速で視聴できることによって、どの科目でもハイスピードで1回転できることが、最も大きなメリットだと考えています。また、復習講義や過去問の解説講義が備わっていて、自分のタイミングで、随時、苦手項目や間違った問題の講義を聞いて、ほんの数分間で記憶喚起ができる点もクレアールならではの特色かなと思っています。

 私が最もよく利用したコンテンツは1000問ノックWebテストです。本番までに4~5回は回しています。これは電車での移動中や、体調が思わしくなくて横になっている時でも、短時間でトライできる点が何よりの魅力でした。

 また、前回以前の記録も全て残っているので、正答率が上がれば成長を感じられますし、下がれば逆に危機感となって、その科目を復習しなければならない警告にもなるので役立ちました。

清水:隙間時間に1000問ノックWebテストがちょうどよかったということですね。

夏目田:はい。そうです。

全体的な学習方法

時期ごとの学習

清水:分かりました。では次に、全体的な学習方法について伺っていきます。まず、時期ごとの学習ですが、司法書士試験の学習は大きく分けると、学習初期(基本講義中心の学習時期)、学習中盤期(基本講義が終わり、過去問の学習や初めて答練を受ける時期)、試験直前期(問題演習や自身が行ってきた学習をまとめる時期)に分かれます。

 その時期ごとに、どんな点に注意して学習を進めたか、あるいはこんな工夫をしたということがあればお聞かせください。

夏目田:自分にとっては、基本講義中心の時期と、過去問や答練を演習する時期という区別は特にありませんでした。というのも、過去問はその科目の講義を全て聴き終わってから、一気に1冊解くようにしていまして、学習初期の段階から、主に2科目同時並行で過去問演習と講義視聴、いずれも行っていたためです。

 例えば不動産登記法の講義を視聴しながら、それと同時並行で、既に聴き終わっている民法の過去問を一気に解くというイメージです。これは科目が増えていくと皿回し状態になりますが、自分の記憶の中で薄くなり始めたと感じたら、他の科目の講義と同時並行で過去問を解いていました。

 会社法と商業登記法についてはとても苦手だったので、学習の進め方は変えましたが、基本的に会社法と商業登記法以外の科目はこのやり方をしていました。

 同時に、1日当たり2~3科目に触れているという期間が総じて多かったと思います。1日1科目しかやらないと進み具合が不安ですし、かといって3~4科目以上コンスタントにやろうとするとキャパオーバーになってしまうため、1日2~3科目が自分にとってベストでした。

 とにかく挫折しないように、自分が継続できる範囲でやれることを進めていくということを心掛けていました。計画はどうせずれ込むものと思い、厳密なプランニングはしていなかったのですが、その日1日でどれくらいの教材を消化できたか、1時間当たり約何ページ進んだかということは、ざっくりですが気にするようにしていました。

 学習初期は復習にあまり力を入れずに、できなくても気にせずどんどん過去問題集を回していたのですが、2月、3月になってもできるようにならない問題や、正答率の悪い分野については、随時テキストを読み込み、『択一六法』に知識を集約していました。

 また、模試や答練で間違った問題、あと、まぐれで正解した問題についても、同様に『択一六法』へ知識の集約をしていました。3月までには、メインである民法、不動産登記法、会社法、商業登記法の重要分野については一通り知識集約を行いました。

 試験の直前期である4月以降については、基本的な勉強のスタイルはそれほど変わらなかったのですが、なにせ11科目全てについて知識を整理しなければならないので、とにかく抜けている知識に気付いたら次から次へと詰め込んでいくというやり方でした。

 記述についても、せめて基準点を超えられる程度に、そして最低限知識を網羅できるように1日~2日おきには触れるようにしていました。

 記述が得意で得点源にしたい方や、択一の勉強がしっかり進んでいて余力のある方は、記述の対策を万全にされたほうがいいと思いますが、私はいずれでもなかったので、「択一で高得点を取るほうが短期合格の近道かな」と思い、このような勉強をしていました。

学習時間、学習量

清水:では次に、学習時間、学習量についてお伺いします。時期にもよると思いますが、前述の学習初期から中盤期、そして直前期にどのくらい学習していたか、お聞かせください。

夏目田:学習を本格的に始めた令和3年5月頃から令和4年の3月頃までは、1日空いている日は6時間から9時間。週2日のアルバイトの日は2時間から4時間でした。

 それが直前期の令和4年4月から6月の半ばになったら、1日空いている日は7時間から10時間。アルバイトの日は3時間から5時間。最後の超直前期の6月の下旬から本試験前日までの2週間は、試験会場が近いことを理由に実家に帰っており、1日10時間から12時間は勉強していました。ちなみに、アルバイトは、直前の6月のみ丸々一カ月お休みをもらっていました。

 ただし、体調が悪くなって5時間未満になってしまった日も、毎月2~3日くらいはあったと思いますので、必ずしもこの勉強時間を死守できたわけではないです。ですが、ここ1年と数カ月の受験期間で、全く勉強しなかった日は1日か2日しかなかったと思います。

 目安になりやすいので勉強時間でお話ししましたが、個人的には時間よりも内容のほうが重要だと思うので、どうしても睡眠不足だったり、心身の具合がよくない時は思い切って休んだほうがいいと考えていました。でも、慣れてくると寝転がりながらでも択一の演習はできるので、机に向かわなくてもできる勉強はいくらでもあると思っています。

清水:先ほど、1日に2~3科目ぐらい学習していたとおっしゃっていましたが、例えば民法を2時間勉強した、会社法を3時間勉強したとか、メモを取られたりしていたんですか。

夏目田:いいえ、メモを取ったりして記録は残していません。1日にどの科目を何時間やらなければならないということは、はっきりとは決めていなくて、どちらかというと、まとまった単元を一気に終わらせるように考えていたので、ある科目である分野をしっかりやった日には、他の科目はちょっと軽めのところだけにしておくというように調整していました。たとえば、民法について、抵当権・根抵当権に関する分野をしっかりやった日は、会社法は計算、解散・清算・継続、持分会社などのややボリュームの少ない分野をやる、といった具合です。関連する分野にこだわらずに、なるべく横断的な学習をするように心がけていました。

清水:分かりました。

クレアールの初学者カリキュラムの活用方法

清水:では続いて、クレアールの初学者カリキュラムの活用方法についてですが、初学者コースは基本講義(インプット)から始まり、最終的には直前期の答練・模試といったアウトプットで終了します。基本講義を進めていく時の学習方法や、心構えをお聞かせいただきたいと思います。

夏目田:基本講義は漫然と聞かずに、必ず蛍光ペンでテキストを色分けしながら聴いていました。自分の中のルールとしまして、通常の文章は黄色、否定の文章は水色、重要項目や概念はピンク、問題提起や場合分けは黄緑、条文番号は紫で線を引くと決めていたので、講義を全て視聴し終わった頃には、少なくとも講師が言及した箇所については、テキスト丸々1冊の色分けが完了している状態になっていました。

 何も手を動かさずに、ただ受動的に講義を聞くだけだと時間がもったいないと思うので、このような色分けやメモの取り方などについて、初めに自分のやり方を確立すると、視聴を進めやすいと思いました。

 また、初めて学習する科目や分野であっても、なるべく1回の視聴で知識を身に付ける気持ちで聴いていました。もちろん、一度で身に付くほど甘いわけがないですが、「初めて勉強するから分からなくて当然だ」という消極的な気持ちで講義を聴いてしまうと、いつまで経っても過去問を演習できる段階にならないと思ったので、なるべく強気な気持ちで聴いていました。

 強気でいると、いざ過去問を解いた時に、出来が悪くて自信喪失しやすいというデメリットもありますが、講義に関しては「1回で理解してやるんだ」と少し気負うくらいの気持ちで聴いたほうが、効率的かなと思います。

清水:それが集中につながるということですね。

夏目田:はい。しかも1.75倍速か2倍速で聞いているので、「せめてこの講義が終わるまで集中するぞ」という気持ちで聴いていました。

クレアールの通信講座で学習を開始した直後の感想

清水:では次に、クレアールの通信講座で学習を開始した直後の感想について伺います。司法書士は難関資格の1つであるため、民法、不動産登記法、会社法等の早い段階で挫折してしまう方もいらっしゃいます。学習を開始して辛かったこと、工夫したことがあればお聞かせください。また、辛かったことがあった場合は、どのようにして乗り越えて学習を続けていったかをお聞かせください。

夏目田:学習を開始して最も辛かったことは、会社法・商業登記法の試験勉強です。会社法は学習範囲が広い割に暗記の要素が強く、また暗記の要素が強い割には何回覚えてもすぐに抜けていく報われなさがあります。また、会社法に連動して商業登記法がなかなか先に進められない焦燥感も非常に辛かったです。

 会社法の基本講義が配信された令和3年10月頃に、宅地建物取引士の試験を受けていたのですが、正直、他の試験を受けていないで、会社法に少しでも早く着手したほうがよかったと今でも思います。

 辛い時期の乗り越え方ですけれども、辛い時期はあえて、その辛い原因となっている科目と向き合うことが大切だと思います。会社法に挫折しかかった昨年の年末年始は、会社法、商業登記法の2科目に絞って勉強していました。これが、先ほど申し上げた、1日2~3科目の学習の例外です。

 もちろん投げ出したかったですが、早いうちにしんどい気持ちを味わっておいたほうが合格可能性が高まると考えると、「会社法はメイン科目だし、今、固めておいたほうがよい。むしろ、今やるしかない、やるべき時は今なんだ」というように奮起することができました。

 範囲の広いメイン科目は、どんどん進めることも重要ですが、難しい分野については逃げ癖をつけないことも同じくらい大事だと思います。偉そうなことを言えるほど、自分も実践できていたわけではないので恐縮ですが、段階的にでも苦手分野は早めに潰していったほうが後々楽になると思います。

清水:分かりました。

具体的な学習計画の立て方と実行方法

清水:次に、具体的な学習計画の立て方と、実行方法について伺います。クレアールのカリキュラムで学習を進めていく上で、具体的にどのように学習計画を立てて実行したか、学習計画を立てる際の注意点をお聞かせください。

夏目田:正直なところ、学習計画はほとんど立てておりません。ざっくりと「この問題集は、例えば今週中、今月中に終わらせることを目標にやろうかな。この科目はそろそろ満遍なくできるようにしておかないと、本番に間に合わなくなるから…。」というような気持ちで学習に取り掛かっていました。

 計画を綿密に立てても上手くいかないとストレスになりますし、何より計画を立てること自体に時間を取られるのも煩わしいと感じていました。自分のようにずぼらでない、几帳面で実行力のある人は、ある程度計画を立てた方がよいかもしれませんが、上手くいかなかった時に自分を責めたり、調子がいい時のペースを元にして無謀な計画を立てるくらいなら、初めから計画を立てない方がよいと考えていました。

清水:計画はずれるものだという認識があったため、大まかな計画だけ立てて、細かいところまでは詰めなかったということですか?

夏目田:そうですね。計画を立てようという気持ちになること自体、かなり調子のいい時にしかそういうことを思い至らない性格なのも認識していたので、そういう時に何でもプランニングしてしまうのは危険だなと思って、計画を立てるとしても大まかな予定のみにしていました。

お試し受験について

清水:では次に、お試し受験について伺います。クレアールでは合格目標年度の前年に、司法書士試験のお試し受験を勧めています。学習を開始してから令和3年度司法書士試験のお試し受験を受けて、どのような感想、あるいは手応えがあったか、そしてお試し受験がその後の学習にどのようにプラスになったかお聞かせください。

夏目田:お試し受験によって、試験会場や他の受験生の雰囲気を知り、実際の試験時間、試験問題、問題冊子のページ数の厚さというのを体感できたのはとても貴重な体験だと思いました。

 いざ本番の年になると、例えば持ち込める文房具が何か、朝ご飯や昼ご飯は何がいいか、どのような服装が適当なのか等、本当に、勉強や試験以外の細かいところまで気になってきてしまうので、早めにイメージトレーニングをすることは大切だと思います。

 ちなみに、私はお試し受験の際に、試験官に布マスクであることを指摘されまして、不織布マスクに付け替えるように指示されて、かなり動揺しましたので、本番ではちゃんと不織布マスクをしていきました。1年も前の出来事だったとしても、事前に一度経験しているかどうかで心の余裕が全然違うと思います。

清水:受験生ですと、ちょっとしたことに動揺してしまうものですよね。そういった点も、お試し受験で気付けてよかったということですね。

具体的な学習方法

学習に際して自分が工夫したところ

清水:では次に、具体的な学習方法、学習に際して自分が工夫したところについて伺っていきます。まず、教材の利用方法についてですが、司法書士試験は出題される科目が多く、クレアールではいろいろな復習教材をご用意しています。

 学習を進めていく上で、どの時期にどのような教材を利用したかをお聞かせください。また、教材PDFデータの活用の有無や、活用方法もお聞かせください。

夏目田:学習スタートの時から、3月くらいまではずっと『テキスト』、『過去問題集』、『合格書式マニュアル・対応問題集』、困った時に『択一六法』を開くという感じで、『択一六法』に情報を集約していました。直前期は、ほとんど『択一六法』のみになっていました。

 ちなみになんですけれども、私は飽き性でして、随時、市販の問題集などを利用しながら勉強していました。

 PDFデータは、結局、直接学習に使うことはなかったですが、例えば、外出先で確認したい時にいつでも見られるぞっていうのは、心のお守りになっていました。なので、気持ちの面で、あってすごくよかったなと思います。

清水:『択一六法』に知識を集約していったということですけれども、例えば答練で間違えてしまった問題などを、『択一六法』に書いていたということでしょうか。

夏目田:そうです。答練や模試で間違えた肢とか、あやふやなところをなるべく『択一六法』に一元化するようにしていました。

 具体的な使い方としては、まず蛍光ペンで色分けをし、講義で登場したパワーポイントなどをメモしていました。それから、言い回しがちょっと違ったりして、同じことを意味しているんだけど、何か自分的にちょっと引っ掛かったところを分かりやすい自分の言葉に置き換えてメモしていました。

また、答練や模試で出てきた問題番号や問題集のページなどを、知識をひも付けるためメモしていました。

そして、ちょっと苦手なところや、もう1回確認しておきたいところに付箋を貼っていました。

このようにノートなどは作らず、『択一六法』に情報を集約していました。

過去問の学習方法

清水:分かりました。では続いて、過去問の学習方法についてお伺いします。司法書士試験の学習ではご存じのとおり、過去問の攻略が合否に直結します。過去問をどのように学習したかをお聞かせください。

 併せて、Web確認テスト、1000問ノックWebテスト及び基本4法過去問解説講義の利用の有無や活用方法もお聞かせください。

夏目田:過去問は学習初期で理解が不十分であったとしても、とにかくどんどん解いていって間違った肢のみ解説を確認していました。基本的には、過去問は1科目一気に解いてしまってから、正答率が悪い分野の科目の『テキスト』や『択一六法』に戻るようにしていました。

 一通りの問題演習を先に終わらせることで、その科目の全体の受け皿が頭の中にできるようなイメージで、あとはそこに『テキスト』や『択一六法』で確認した知識を足していくというような感覚でした。

 1000問ノックWebテストについては、移動中や体調不良時に主に利用していました。気が向いた時に何の気なしに解き始めても、最終的には全科目しっかり記録が残るので、一気に解ききらないと気が済まなくなるという存在でした。気軽に始められる割に達成感を得られるというメリットがありました。

 過去問解説講義も学習初期から利用していました。過去問解説講義があることによって、過去問演習を初期から、まだ勉強は始めたばかりだけど、もう過去問を解き始めようかなというように思えますし、先に過去問を解くことで、このレベルの問題を本番までにできるようにならないといけないんだという指針にもなりますので、気軽に過去問にチャレンジできるきっかけになってよかったと思います。

清水:過去問解説講義は、自分がここは苦手だなとか、間違えてしまったなという問題だけをピックアップして視聴していたのでしょうか。

夏目田:そうです。2回解いて解答肢どちらの肢も理解できていなかったり、エとオの肢だけ言っている意味が全然分からないから、半分より後の方だけ視聴するなど工夫して利用しました。

清水:理解度の低い肢だけを視聴していたのですね。

夏目田:はい。ピックアップして視聴しました。

清水:分かりました。

 ちなみに、過去問は全部で何回ぐらい学習したでしょうか。

夏目田:過去問はメインの民法、不動産登記法、会社法、商業登記法は、10回位はやっていまして、民事訴訟法等についても7回位やりました。残りのマイナー科目は4回位やりました。

記述式の学習方法

清水:次に、記述式の学習方法についてお伺いします。

初学者にとっては、記述式の学習に不安を持つ方もそれなりにいらっしゃいます。記述式の学習を進めていく上で注意したこと、工夫したことをお聞かせください。

 また、答案構成用紙をどのように使用したか、不動産登記、商業登記それぞれお聞かせください。

夏目田:記述に関しては苦手でしたし、本試験の結果もよくなかったので、後進の方にお伝えできることはあまりないというのが正直なところです。強いて言うなら、気を付けたこととしては、問題文の指示事項で解答に確実に反映されるような部分については、必ず蛍光ペンでマークをしていました。しかし、今思えば、蛍光ペンはインクが跳ねるので、持ち込むなら多色ボールペンの方がお勧めです。

 答案構成用紙の使い方については、特に自分なりの書き方を確立できていたわけではなかったので、そこはやはり自分のルールを決めて取り組むべきだったなとかなり後悔しています。

 記述は1問解き終わった時にとても充実感があるので、ついつい学習に時間をかけ過ぎてしまう傾向がありましたし、私は記述があまり得意ではなかったので、記述に注力しすぎるのは危険だと考えて、択一中心で勉強していました。

清水:合格体験記にもありましたけれども、ひな形を書く練習はほとんどされなかったとのことでしたよね。

夏目田:はい。ひな形は、ほぼ書く練習はしておりません。合格書式マニュアルのタイトルだけを見て、頭の中でひな形が思い出せるかどうかっていうことをやっていました。ひな形を書き始めるとその作業だけで日が暮れてしまうので、敢えて書く練習はしませんでした。

清水:頭の中でひな形をイメージするような学習方法だったのですね。

夏目田:はい。そうです。

清水:答案構成用紙は、不動産登記ではどのように書いていましたか。

夏目田:時系列を書き、上に甲区、下に乙区に関する事項を書いていました。

清水:商業登記はどうですか。

夏目田:商業登記も同じく役員を抜き出して、とりあえず書いていました。あとは公開、非公開、株券や資本金の額、発行済株式の総数と発行可能株式総数等を書いていました。

清水:申請会社の概要を抜き出して書いていたということですね。

夏目田:登記事項に反映する可能性があるところだけ抜き出して、一応、前提を書いておくというくらいで、たぶんオーソドックスな書き方だったと思います。

清水:分かりました。

 では次に、学習を効率よく進めていく上で工夫したことについて伺います。学習を効率よく進めるために、1日、1週間をどのように過ごしていらっしゃったか、そしてクレアールの通信講座をどこでどのように学習したか、音声学習の利用の有無や、復習講義の利用の有無及び活用方法をお聞かせください。

夏目田:1日の中では基本的に飽きないように2~3科目勉強していました。ですが、このように複数科目を少しずつやるということについても飽きてしまう時があったので、例えば今日はこの1冊を終わらせるというように決めて、1日で1冊過去問題集を回す、1日で1科目を終わらせるということもしていました。

 気を付けたのは、例えば、前回回した時には、この分野はしっかりやったけど、こっちは手薄だから、今回はこっちをメインで集中してやろうというようにメリハリをつけながら、知識を確認するということに注意していました。前回の自分がどの程度一生懸命取り組んだかというのは、線の引き具合や知識の書き込み具合いとかで分かるので、それを目安にしていました。

 じっくりやるよりも、取りあえずその日に終わらせようと決めたことはきっちり終わらせてしまうということのほうが重要だと思っていました。

 クレアールの通信講座は全て、基本講義は自宅で受講していたのですが、私は耳で聴く学習よりも文章の意味合いから理解を深めたり、図表などの視覚的情報から知識を得るほうが得意なタイプだと自覚していたので、音声学習の利用はしていません。

 復習講義については、苦手分野のみ随時聴き直していましたが、何日、何週間おきに聴くというルールは決めていなくて、思い立った時にまとめて聴くようにしていました。

清水:復習講義はその講義が終わった後に聴くということではなくて、何単元かまとめて視聴していたのですね。

夏目田:はい。例えば、寝転がりながらクレアールの学習管理システムにログインして、基本講義の項目などを見ている時に、最近、全然抵当権やってないなとか、この分野、タイトルだけ見ても何だったか思い出せないとか、その時々でちょっと知識が遠ざかっていることに気付いたタイミングで、じゃあこの周辺分野含めて、まとめて今、聴き直してしまおうという感じでした。

 なので、その講義を受けてそれに対応する復習講義を随時受けるというかたちではなかったです。

清水:そのように視聴することで、特定の分野の記憶が低下するのを防いでいたのでしょうか。

夏目田:そうです。得意なところと苦手なところの差が激しいタイプだったので、同じ科目の中でもここは繰り返し聞いたほうがいいなとか、ここはさらっとやるだけで大丈夫かなとか、そこは自分の感覚を信じていました。

清水:分かりました。

苦手科目、苦手分野の克服法

清水:では次に、苦手科目、苦手分野の克服法について伺います。学習を進めていくと、例えば民法の○○の分野が分かりにくくて辛かった、会社法のイメージがつかみにくかった、記述式の△△に戸惑いがあった等、苦労したことがあったかと思います。

 このような、いわゆる苦手となりそうな分野、あるいはご自身が苦手と感じた科目・分野を、どのように克服したかをお聞かせください。

夏目田:私は、会社法と商業登記法が非常に苦手で、あまりに定着しなかったため、年末年始の時期は思い切って、この2科目に絞って学習したのは前述のとおりです。

 重要な知識に慣れてくるまでは、会社法の問題を解いたら、必ずその会社法の分野に対応する商業登記法の問題を解くようにしていました。このように重要事項のみを横断的に学習するようになったら、そこの重要な分野、2科目のいずれにおいても問われるような分野の正答率は安定してきたので、そこからやっと会社法、商業登記法それぞれの科目に特有な分野に手を広げられるようになりました。

 この2科目については、結局、過去問題集を1冊通して解けるようになったのが2月の終わり頃で、もうその頃は本当に言葉に言い表せないほど焦りを感じていました。

 私が考えたこととしては、この2科目は、範囲が広い上、暗記の要素が強く、広く浅く学習してもすぐに知識が抜けてしまうので、重複する分野を重点的に押さえてから、全体を概観したほうが効率がいいと感じました。

清水:例えば、会社法の役員の部分を学習して、次に商業登記法の役員の登記のところを学習する。それを繰り返していくことで、役員の部分の知識が深まっていくということですね。

夏目田:はい、そうです。最初は、設立、役員、株式の3つの分野をまず確実にしようということで、そこの分野について会社法と商業登記法をとにかく往復して学習しました。

 それで余裕が出てきたら、例えば解散・清算や持分会社とか、少しずつ手を広げていって、最終的には何とか組織再編までできるようにしていました。

清水:設立と株式、役員のところは、商法(会社法)、商業登記法でもすごく重要なところなので、まずそこをしっかり固めることがいいんじゃないかと考えたわけですね。

夏目田:はい。そうです。

答練や模試について

清水:次に、答練・模試についてお伺いします。初学者は答練で思うように解けないこともあれば、得点が伸びないと答練の問題を解かなくなって、答案を提出しなくなってしまう方もいらっしゃいます。答練を解く時の心構え、注意したこと、工夫したことや返却された答案、個人成績表の活用法をお聞かせください。

夏目田:私は答練を受ける時は、臨場感を出すために、必ず図書館で時間を計って受けるようにしていました。そして、30分以上時間を余らせるように、とにかくハイスピードで解くという練習をしていました。

 11科目のインプットを準備万端な状態にしてから答練を始めるとなると、問題演習を本番の形式で始めるのがとても遅過ぎると思ったので、学習が不十分でも、とにかく答練が届いたタイミングですぐに解いて、早く解き終わった分は解説を読み込む時間を長く取るようにしていました。

 直前期の答練、模試は本試験レベルの問題が多く、かなり心が折れそうにはなってしまいましたが、毎回一つずつの解答についてしっかり解説まで読み込むことで、自信につなげることができました。普段から時間を意識してハイスピードで問題演習を行っていたおかげで、本番の記述式でフリーズしてしまいましたが、無事に時間内で解答を終えることができたのでよかったと思います。

清水:記述式の合同会社のところでフリーズしてしまいましたか?

夏目田:はい、そうです。合同会社もフリーズしましたし、私は不動産登記の記述式に苦手意識があったので、先ほどお話ししましたとおり抵当権にヤマを張って失敗したのもあり、不動産登記記述で合同会社以上にフリーズしてしまいました。珍しいかもしれないです。

清水:ただ、常にハイスピードで解く練習をしていたおかげで、それでも時間内には収まったのですね。

夏目田:はい、そうです。自分が書こうと思ったことそのものは、全部書けたと思っています。

清水:結局、本試験の午後の部の時間は何分位余りましたか。

夏目田:15分くらいです。

清水:結構余っていますね。

夏目田:余ってはいましたが、完全に心は折れているので、あまり有意義な時間として使えなかったと思っています。

清水:それから、先ほど答練が届いたらすぐに解くとおっしゃっていましたけれども、受験生の中にはなるべくインプットを完璧にしてから答練を解きたいという方もいらっしゃいます。その点について、どのように考えているかお伺いしたいと思います。

夏目田:司法書士試験は範囲も広過ぎるし、そもそもの内容も難しいですから、インプットが完璧になる日は永遠に来ないと思っています。それでもせっかくカリキュラム通りに問題を送っていただけるわけですから、その時その時でこなしていかないともったいないなと思ったので、いつまでも準備が整うのを待たないで、アウトプットをすることが大切だと考えています。

午後の部の問題の解き方について

清水:次に、午後の部の問題の解き方についてお聞きします。午後の部は、択一式問題35問と、記述式問題2問を解かなければならないので、必然的に時間との勝負という要素があります。午後の部の択一式問題をどのように解いたのか、時間配分はどのように考えていたのか、そして今年の本試験では、どのような時間配分で問題を解いたのかお聞かせください。

夏目田:私はまずマイナー科目択一、商業登記法択一、ここまでで25分。その後に、商業登記記述、ここまでで1時間20分。不動産登記法択一で1時間45分。残りの1時間15分で不動産登記記述を解いて、余った時間で全体の見直しをすることにしていました。

 なぜ、このような解き方をしたかというと、登記法の択一と記述はまとめて解いたほうが効率がよいと考えたのと、私は不動産登記記述が一番苦手でしたので、もし難問が出題されて動揺した時に、その影響を減らすために最後に解くようにしていました。

 今年は商業登記記述が難問だったので、この解く順番はかなり相性がよくなかったと思っています。

清水:不動産登記法の択一の問題を解いて、そのまま不動産登記の記述を解くという流れを意識していたということですか。

夏目田:そうです。私の中では午後の部を3つのブロックに分けていて、まずマイナー科目ブロックを終わらせて、次に商業登記法ブロックを終わらせて、最後は不動産登記法ブロックだという考え方で解いていました。

 ですが、この解く順番ですと、何分までに解くといった時間の管理がかなり細かくなってしまうので、あまりよい解き方ではないかなと、今では正直思っています。

清水:択一式の問題を解く際に、選択肢は全部見ますか。

夏目田:はい。短い肢から読んでいましたが、全部の肢を見るようにしていました。

清水:ちなみに、午前の部の問題の解き方は、順番どおりですか。

夏目田:午前は時間がたくさんあるので、意識したことがなかったです。順番どおりに解いていたと思います。

モチベーションの維持について

清水:では次に、モチベーションの維持について伺います。司法書士試験だけでなく、1年を超える学習期間が必要な資格試験の学習を継続していくことは、心身ともにきつい点が多々あります。学習を進めていく中で、もし挫折しそうになったことがあれば、どう乗り越えたか、あるいはこんな工夫や気分転換を図ったということがあれば、お聞かせください。

夏目田:挫折しそうになった時は、抱え込むことなく、SNSで作っていた勉強アカウントにすぐ弱音を吐いていました。司法書士試験はとても難関ですし、そういうふうに弱音を吐いても全然恥ずかしいことではなく、人間らしいことだと考えていました。

 実際に現実の受験生仲間を作りたい気持ちもなくはなかったんですけれども、人と会っている余裕がなかったので、そういう交流はSNSのみにとどめていました。また、ライバルとなるような同じ年の合格目標の他の受験生と馴れ合ってしまうのも、私は流されやすい性格なのでよくないかなと思いまして、令和3年度以前の合格者の方や実務家の方と主に交流させて頂いていました。

 現実にお会いしたことはなくても、自分の努力を知ってくれている人はいるんだと思うとやる気になりましたし、また、実務の話などがとても刺激になっていました。人それぞれだとは思いますが、私は直前期であってもずっとSNSを続けてきてよかったと思っています。

 あとは、5月の下旬頃までは毎週欠かさず大河ドラマを見て、気分転換をしていました。

たまにはテレビを見て息抜きすることで平常心を取り戻せる部分があったので、根を詰め過ぎないほうがいいのかなとも思います。もちろん直前期以外ですけど…。

清水:次に、受験勉強中の試行錯誤についてお伺いします。司法書士試験では、学習事項が多岐に渡り、中には初見では理解することが難しく感じた箇所もあったと思います。そのような理解し難い学習事項があった場合、どのように対処していたかお聞かせください。

 また、司法書士試験のように学習期間が数年単位となる資格試験では、学習方法について軌道修正することも時に必要だと思います。当初取っていた学習方法から、途中で変更したことがあればお聞かせください。

夏目田:私は初見でどうしても分からないことは、多少考え込んだところで分かるようになるわけでもないので、容赦なく飛ばしていました。その後、数回、過去問題集や答練などの問題を回した後に、この辺の分野は難しくてまだ全然分かっていないけれども、例えばもう2月、3月なのにいまだにここが分かっていないのは、本番で出題される可能性が高いことを考えると、かなりまずいのではないかというように、急に危機感を覚えて思い立つタイミングがあるので、その時にはもう一気にたたき込むということをしていました。

 この時のポイントは、2月から4月の試験超直前ではない多少余裕がある時期にたたき込むということです。1回やっても、その後またどうせ忘れるんですけれど、ちょっと前に1回しっかりやったんだから何とかなるだろうという気持ち、その気持ちの余裕が生まれるので、ギリギリ過ぎない時期に一度しっかり時間を取るというのはすごく有効だと思います。

 本当にギリギリの超直前期になってから詰め込もうとすると、過剰に焦ってしまって、結局その分野を丸ごと捨てようかな、という気持ちになってしまう可能性が高いと考えていました。また、苦手知識を付け焼き刃でねじ込もうとすると、今まで覚えていた知識の方があやふやになってしまうリスクもあると考えました。

 私は、学習方法を途中で変更するということは特にしたことがなくて、とにかく目の前にある、自分がやると決めた教材を終わらせることに注力していました。早い段階でアウトプット中心にしたほうが身に付くのも早いと思っています。

清水:分かりました。

これから学習する人、現在学習を始めている方へのアドバイス

清水:では次に、これから学習する人、現在学習を始めている方へのアドバイスをお願いしたいと思います。まず、見事に一発合格なされましたが、一発合格の秘訣は何でしょうか。

夏目田:一発合格のためには、今の自分の実力で合格するために、どのような作戦を立てるのが最も現実的なのかということを、常に模索しながら勉強するということが重要だと思います。

 私は、今までの学習経験から、実体法の択一が得意で、不動産登記記述が苦手でしたので、最短で合格するためには午前の部の科目で30問以上取って、商業登記記述で30点以上取る。そうすれば、午後の択一は基準点を少し超えて、不動産登記記述は半分もできなかったとしても、合格可能性がないわけではないんだというように最初は考えていました。

 この考えは、結局、令和4年度の本試験では全く通用しなかったんですけれども、初めから、ある程度この部分がこの程度できなくても受かるかもしれないという気持ちを持っていたので、こういう想定外の難問が出てしまった時に、「問題が悪いし、まだ1年目だし、今年はもうやっぱり駄目かな」と思うのではなくて、「何か崩壊している分野があっても、運よく他で守り切れれば受かるかもしれないんだ」というように思い直しまして、最後まで粘りました。

 実際、私は、本番2週間前に、もう記述は結局出たとこ勝負になってしまうなと開き直っていて、確実に取れる択一の復習に割けるだけ時間を使っていたので、その結果、模試や答練でも取ったことがない最高点を取って、択一で逃げ切ることができました。なので、作戦を立てて、それがうまくいかないこともありますが、だからすぐに不合格なんだと決めつけずに、今あるベストを尽くしてくるという、この粘りが重要なのかなと思います。

清水:合格体験記にもありましたが、本試験会場での執念も凄まじかったとのことですね。

夏目田:そうですね。ここまで1年やってきたわけですから、自分としては落ちる前提で試験を受けることがものすごく嫌でした。令和3年度のお試し受験は少ししか勉強せずに受けたので、何とも言えない気持ちになったりもしていましたが、今年はあれから1年経ってしっかり全部やってきて本試験を受けるわけですから、それなりの結果を出さないと、この1年は何だったんだ…って自分に失望することになってしまうと思っていました。正直、試験問題を見た時には、だいぶ失神しそうだったんですけれども、最後までそういう気持ちは忘れないで解くことができたかなと思っています。そこが執念だったかなと…。

何か変な問題が出たからすぐ落ちるというように弱気になるのが、どうしても、この1年のことを思い出すと許せなかったので、そこはもうとにかく「がむしゃらにやるしかないな」という気持ちでした。でも、結局は「運がよかったのかな」という気がしています。

これからの抱負

清水:では、これからの抱負をお聞かせください。

夏目田:まずは合格したことに奢らず、今までと変わらない、人から頼られる専門家になりたいという考えが原点であったことを、常に忘れないようにしたいです。

 その上で、特に関心のある相続、遺言、遺産承継、財産管理、家族信託などの分野に強い司法書士を目指したいと考えています。

 老老介護が当たり前となるこの超高齢社会の中で、元気なうちに将来のことを考えておきたい、早いうちから専門家に相談したいという方は多くいらっしゃると思います。これらの分野は、令和6年4月1日から施行予定の相続登記義務化とも相まって、とても需要があると思いますし、自分自身にとっても、身近な課題として真剣に考えて取り組んでいかなければならない分野だと思っています。

 司法書士業務は、今後も無限の広がりがあるとは思いますが、今の自分にとっては相続に関連する業務が、特にやりがいを持って知識と経験を積み上げていける分野なのではないかなと考えています。

清水:では、最後に、来年の司法書士試験合格を目指す方へのメッセージ、伝えたいことをお聞かせください。

夏目田:司法書士は一般的に取っつきにくいと思われる法律に関する難関資格で、目指すだけでも一苦労だと思います。ですが、受験資格がなく、多くの人にチャンスが開かれていて、将来的に独立の道も選べるような、これほど社会的に強い資格はあまり類を見ないとも思います。

 社会人になってから難関資格取得を目指すということについては、周囲の方々の理解が得られなかったり、何より仕事、育児、介護など、それぞれの事情がある中での孤独な勉強になるケースも多いと思います。ですが、基本的な事項を一つ一つ確実に身に付けて、それを元にカリキュラムにある答練や模試をこなしていけば、いつの間にか合格点が取れるようになる試験でもあると思います。ゴールから逆算して、地道な努力を重ねることが一番の近道であると考えます。

 精神的に押し潰されそうになることも多々あるかと思いますが、重要なのは本番で択一は正答を選び、記述式は基本に沿った解答を答案用紙に書いてくることだと思います。伸び悩んでも不貞腐れずに、心身に無理のない範囲で最後までベストを尽くしてください。

 愚直で前向きな人が正しい努力を積み重ねれば、合格することができる試験であると思います。

清水:分かりました。本日は貴重なお話をお聞かせいただきましてありがとうございました。

夏目田:ありがとうございました。

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