中小企業の経営支援において、最強の組み合わせの一つと言われるのが「中小企業診断士」と「FP(ファイナンシャル・プランナー)」のダブルライセンスです。
本記事では、両資格を取得することで生まれる実務上の圧倒的な相乗効果から、最新のCBT試験制度を踏まえた効率的な学習戦略、そして「本当に意味があるのか?」という疑問への回答まで、徹底的に解説します。
中小企業診断士とFPの仕事を比較

中小企業診断士の仕事
中小企業診断士の主な業務内容は経営コンサルティングです。事業計画の策定、財務改善策の提案など、経営改善へのアドバイスを行います。
企業内の経営に関わる部署に就く「企業内診断士」として働く人が多いですが、独立しコンサルティング事務所を構える「独立診断士」も増加傾向にあります。
企業で勤務する場合、年収は約700~800万円ですが、独立し年収1,000万円以上になることもあります。
FPの仕事
FPの主な業務内容は個人のお金に関するコンサルティングです。一人ひとりの相談内容や要望に応じた最適なプランや解決方法を見出し、お金の面でのアドバイスやプラン設計を行います。
銀行や生命保険会社などの金融機関で働く人がほとんどです。独立FPとして事務所を構える人は少数ですが、他の資格にFPとしての視点を加えて活躍するケースも挙げられます。
職業情報提供サイトによると、年収の全国平均は1134.6万円です。
中小企業診断士とFPの相性は?
中小企業診断士とFPは、法人の経営と個人の資産の両面を完璧にカバーできる極めて相性の良い組み合わせです。
日本の多くの中小企業は同族経営です。そこでは会社の財布と社長個人の財布が密接に関係しており、切り離して考えることは不可能です。
例えば、会社が大きな利益を上げた際、それを法人税として納めるのか、役員報酬として社長個人に還元するのか、あるいは内部留保として将来の投資に回すのか。この判断一つをとっても、中小企業診断士とFPの両方の知識がなければ、真に最適なアドバイスはできません。
中小企業診断士として企業の利益を最大化し、FPとしてその果実を社長個人の人生に最適に配分する。この「公私の最適化」を一人で完結できる点こそ、ダブルライセンスの最大の価値なのです。
ダブルライセンスが生む3つの大きなメリット

中小企業診断士とFPの掛け算によって生まれる実務的なメリットを深掘りします。
企業の経営から個人の資産までサポートできる
中小企業診断士とFPの両方の知見を持っていると、企業の経営から個人の資産までの横断的な視点でキャッシュフローを最大化する提案ができるようになります。
社会保険料の負担を考慮したうえでの役員報酬の最適化や、相続税の負担が小さくなるような自社株対策など、経営者の人生を丸ごとサポートできるパートナーとして顧客からの信頼感を得ることに繋がります。
事業承継から経営者のリタイア後の資産運用までサポートできる
現在、日本の中小企業における最大の課題は事業承継です。
中小企業診断士とFPの両方の知見を持っていれば、企業内での後継者の育成や中期経営計画の策定といった経営権の承継から、納税資金の確保や遺産分割対策といった財産権の承継までをワンストップで行うことが出来ます。
入り口から出口、その後の人生までを一人で支援できるコンサルタントは、市場において極めて希少な存在です。
資金調達や補助金支援で説得力が増す
中小企業診断士のメイン業務の一つである補助金申請や融資のサポートにおいても、FPの知識は武器になります。
FPの試験範囲には金融資産運用や経済環境の理解が含まれており、これらを学ぶことでマクロ経済指標や金利動向、為替のリスクヘッジ手法に詳しくなります。
事業計画書の中に現在の金利情勢を踏まえた資金調達の妥当性や、デフレ・インフレ局面での投資判断といった視点を盛り込むことで、金融機関や審査員に対する説得力が格段に向上します。
中小企業診断士とFPの試験を比較

中小企業診断士とFPは、どちらも学歴や実務経験を問わず誰でも挑戦できる国家資格です。
中小企業診断士試験
中小企業診断士試験は、マークシート式の1次試験後と記述式の2次試験があり、それぞれ8月の上旬と10月の下旬に行われます。
1次試験は企業経営理論、運営管理、財務・会計、経済学・経済政策、経営情報システム、経営法務、中小企業経営・政策の7科目でビジネスに関する幅広い知識が求められます。
2次試験は組織・人事、マーケティング・流通、生産・技術、財務・会計に関する4つの事例問題が出題され、それぞれに深い知識や論理的思考力を求められます。
FP試験
学科試験の出題範囲はライフプランニングと資金計画、リスク管理、金融資産運用、タックスプランニング、不動産、相続・事業承継の6分野で、お金に関する幅広い知識が求められます。
また、日本FP協会の場合は資産設計提案業務、金融財政事情研究会は科目を1つ選択して受験する実技試験があります。
3、2級は2024年よりCBT試験方式へと移行し、好きなタイミングに全国の試験センターで受験することが可能になりました。
試験の免除科目はある?
中小企業診断士資格を持っていることでFP試験の科目が免除されることはありません。また、FP資格を持っていることによる中小企業診断士試験の免除科目もありません。
しかし、中小企業診断士1次試験の「財務・会計」と2次試験の「事例Ⅳ」はFP試験の試験範囲と重なる部分があります。そのため、それぞれの試験の知識があることで試験上も有利になります。
中小企業診断士とFPはどっちが難しい?
中小企業診断士試験の方が難しいと言えます。
FP試験の合格率は、3級が80%前後、2級が50%前後、1級が10%前後です。また3級と2級は好きなタイミングに何度でも受験することが出来るため、合格しやすい傾向があります。
一方で、中小企業診断士試験は1次試験と2次試験のストレート合格率が5%と、難関資格と言われています。
合格までに必要な学習時間もFP3級が40~60時間、FP2級が120~200時間、FP1級が600時間以上である一方、中小企業診断士が1000~1200時間となります。
ただし、FP試験は3級から1級まで順番に合格する必要があり、学習時間も積みあがるので注意が必要です。
中小企業診断士とFPはどっちを先に取得すべき?

効率を最大化するための2つのルートを提案します。
中小企業診断士から始めて効率的にFPを取得
既に中小企業診断士を目指している方に最もおすすめのルートです。
中小企業診断士1次試験の財務・会計科目はFPの金融資産運用・タックス、経営法務科目はFPの相続・事業承継・不動産と重なります。
中小企業診断士試験で培った深い財務知識があれば、FP2級の内容は既視感のあるものが大半になります。中小企業診断士試験終了後の1〜2ヶ月、FP固有の知識を補完するだけで、容易にダブルライセンスを達成できます。
FPから始めて中小企業診断士へステップアップ
これから学習を始める方や、財務・会計に苦手意識がある方向けのルートです。
中小企業診断士試験は合格に1000時間以上の学習が必要であり、挫折率が高いのが現実です。
まずはFP3.2級を取得し、国家試験に合格したという成功体験を得ることで、学習の心理的ハードルを大幅に下げることができます。
中小企業診断士とFPのダブルライセンスに関するQ&A
- 中小企業診断士とFPのダブルライセンスは意味ない?
単に資格を2つ持っているだけでは効果は限定的です。
しかし、中小企業診断士とFPの両方の知見を掛け合わせることで、企業の経営と個人の資産の両方の側面からサポートすることが可能になり、AIや他の士業との差別化につながります。
- 中小企業診断士とFP、どっちが難しい?
合格率や合格までに必要な学習時間の観点から、中小企業診断士の方が難しいと言えます。
しかし、FPは3級から1級まで順番に合格する必要があり、学習時間の確保に注意が必要です。
- 中小企業診断士とFP、どっちを先に取得すべき?
既に中小企業診断士を目指している場合は中小企業診断士から、中小企業診断士試験のハードルが高く感じる場合はFPから取得することをおすすめします。
なお、FP2級・3級はCBT方式により通年受験が可能になったため、年1回の中小企業診断士試験を軸にしてスケジュールを組むと効果的です。
中小企業診断士とFPのダブルライセンスを目指そう
中小企業診断士とFP技能士のダブルライセンスは、単なるスキルの追加ではなく、「経営者という人間そのものを全方位から支える」ためのライセンスです。
特に、団塊世代の経営者が一斉に引退時期を迎える2025年以降、このダブルライセンスを持つコンサルタントへの需要は爆発的に高まります。
「経営もわかるし、お金のことも相談できる」。そんな唯一無二のプロフェッショナルを目指すあなたにとって、この2つの資格を手にすることは、将来のキャリアにおける最良の投資となるはずです。
中小企業診断士の取得を目指す方は、クレアールの中小企業診断士講座がおすすめです。クレアールでは、重要な論点にポイントを絞って学習する「非常識合格法」を採用しております。
時間や場所の融通が利く通信講座のため、働きながらでも効率的に合格を目指すことが可能です。興味のある方は、ぜひお気軽にクレアールへお問い合わせください。

監修:古森 創
ソニー(株)にてマーケティング、営業、経営監査、新規事業開発の仕事に従事した後、中小企業診断士として独立開業。株式会社古森コンサルタンツ代表取締役。ソニーでの経験をベースとした「売上改善プログラム」、「新規事業開発推進支援」を中心にコンサルティング・セミナー・研修など実務の第一線で活躍しながら、受験のプロとしてもこれまで多くの合格者を輩出し、「スゴ腕講師」として高い評価を受ける。




