第919条【相続の承認及び放棄の撤回及び取消し】
① 相続の承認及び放棄は、第915条第1項の期間【3箇月】内でも、撤回することができない。
② 前項の規定は、第1編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。
③ 前項の取消権は、追認をすることができる時から6箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から10年を経過したときも、同様とする。
④ 第2項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
【超訳】
① 相続の承認及び放棄は、熟慮期間の3か月以内であっても、相続債権者や他の共同相続人等の立場を不安定にするので、撤回することができない。
②③ 適式な相続の承認・放棄であっても、総則編及び親族編に規定された取消原因があるときには、その承認・放棄を取り消すことができる。ただし、取消権の行使は、追認することができる時から6か月間の時効期間及び承認・放棄の時から10年間の除斥期間の制約を受ける。
④ 限定承認又は放棄の取消しは、家庭裁判所への申述という方式でする必要がある。
【解釈・判例】
1.総則編の規定によって取り消すことができる場合
(1) 未成年者のした法定代理人の同意のない承認・放棄(5条1項、2項)
(2) 成年被後見人のした承認・放棄(9条)
(3) 被保佐人のした保佐人の同意のない承認・放棄(13条)
(4) 同意権付与の審判を受けた被補助人のした補助人の同意のない承認・放棄(17条)
(5) 錯誤、詐欺、強迫に基づく承認・放棄(95条、96条)
2.親族編の規定によって取り消すことができる場合
(1) 後見監督人があるときに、後見人が後見監督人の同意を得ないで被後見人に代わってした承認・放棄(864条、865条)
(2) 未成年後見監督人があるときに、未成年後見人が未成年後見監督人の同意を得ないで未成年後見人が未成年被後見人の行為に同意を与え、それに基づいてした未成年被後見人の承認・放棄(867条)