第784条【認知の効力】
認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできない。
目次
【解釈・判例】
1.認知によって発生した親子関係に伴う法的効果は、出生の時にさかのぼって生じる。胎児認知の場合は、遡及効がないと解されているため、出生の時に認知の効力が生ずる。出生前でも生まれたものとみなされる胎児(721条、886条1項、965条)については、その出生前においても父子関係が認められる。
2.認知の遡及効は、親権や戸籍に直接の影響はない。
(1) 認知と親権
原則:父が認知しても、母が親権を行使する。
例外:父母の協議で父を親権者とすることができる(819条4項)。
(2) 認知と氏
原則:父が認知しても、子は従前どおり母の氏を称する。
例外:家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の届出をすることにより、父の氏を称することができる(791条1項)。
(3) 認知と相続
原則:認知によって子としての身分を取得し、父が死亡すれば相続権を取得する。
例外:他の共同相続人が既に遺産の分割をした後に認知によって相続人となった場合(父死亡後の認知の訴えの場合)には、遺産分割のやり直しを請求することはできず、価額のみによる支払いの請求をすることができる(910条)。
3.嫡出でない子と父との間の法律上の親子関係は認知によって初めて生じるものであるから、嫡出でない子が認知によらないで父子関係存在確認の訴えを提起することはできない(最判平2.7.19)。
【問題】
認知は、遺言によってもすることができるが、その効力は、認知者の死亡時より前にさかのぼることはない
【平16-24-イ:×】