第730条【親族間の扶け合い】
直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。
<内縁>
目次
【解釈・判例】
1.内縁とは、実質的には、夫婦共同生活体でありながら、婚姻の届出がないために、法律上の夫婦と認められない男女の結合関係をいう。 2.内縁の法的構成 (1) 内縁は婚姻に準じた関係(準婚関係)である。 (2) 内縁の不当破棄者の責任には、婚約予約不履行の契約責任と不法行為に基づく責任とがある(大判大4.1.26、最判昭33.4.11)。 (3)内縁の一方当事者がその親族と共同して、内縁関係を不当に破棄させたときは、共同同不法行為が成立し(719条)、連帯して損害賠償責任を負う(最判昭38.2.1)。 3.内縁の効果 (1) 婚姻の届出を前提として認められたものを除いて、その他の婚姻の効果はほとんど内縁にも認められる(通説・判例)。 (a) 同居・協力・扶助義務(752条) (b) 貞操義務 (c) 婚姻費用の分担(760条) (d) 日常家事債務の連帯責任(761条) (e) 帰属不明財産の共有の推定(762条) などの規定が類推される。なお、配偶者としての相続権は認められない。 (2) 財産分与に関する規定(768条)は準用し得るか。 (a) 内縁関係が生存中に解消された場合、準用される(通説・判例)。 (b) 判例は、内縁夫婦の一方が死亡したことにより内縁関係が解消された場合、否定する(最決平12.3.10)。 (3) 内縁の夫婦の子は嫡出子とはならない。 4.内縁の配偶者の一方の死亡と借家権 (1) 家屋の賃借人である死亡配偶者に相続人がいない場合、その内縁配偶者は、原則として死亡配偶者の賃借権を承継する(借地借家36条)。 (2) 賃借人である内縁の配偶者の死亡後、賃貸人から明渡請求をされた場合、生存内縁配偶者は相続人の相続した借家権を援用して明渡しを拒むことができる(最判昭42.2.21)。 (3)借家件を相続した相続人から明渡請求があった場合は、相続人に当該家屋を使用しなければならない差し迫った事情がなく、明け渡しにより生存内縁配偶者の家計が重大な打撃を受けるおそれがあるときは、権利の濫用として明渡しを拒むことができる(最判昭39.10.13)。 5.内縁夫婦の共有不動産 → 内縁の夫婦が共有する不動産を居住または共同事業のために共同使用してきたときは、特段の事情のない限り、一方死亡後は他方がその不動産を単独で使用する旨の合意が両者間に成立していたと推認される(最判平10.2.26)。【問題】
A及びBは内縁関係にあり、AがDから賃借していた甲建物に一緒に住んでいたが、Aが死亡した。Aには相続人Cがいる。この場合において、甲建物の所有者Dが、Bに対し甲建物からの退去を求めた場合、Bは、借家権を有していないが、相続人Cが相続により取得する甲建物の借家権を援用して、退去を拒むことができる
【問題】
AB間で成立した内縁関係がAの死亡により解消した場合には、Bは、Aの相続人に対し、離婚に伴う財産分与に関する規定の類推適用に基づいて相続財産に属する財産の分与を請求することはできない