第714条【責任無能力者の監督義務者等の責任】
① 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
② 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。
【超訳】
① 責任無能力者が責任能力以外の不法行為の要件を備えている場合、責任無能力者に代わって、これを監督すべき法定の義務がある者(監督義務者)が責任を負うが、監督義務者がこれを怠らなかったことを立証すれば、責任を免れる。
② 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する義務のある者(代理監督者)にも、監督義務者と同様の責任がある。
【解釈・判例】
1.「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」とは、親権者や後見人などである。
2.本条の責任は、責任無能力者に責任がない場合において発生する補充的責任である。しかし、加害者に責任能力があっても、監督義務者の義務違反と損害結果との間に相当因果関係が認められれば、監督義務者につき民法709条の不法行為責任が成立する(最判昭49.3.22)。
3.責任を弁識する能力のない未成年者の行為により火災が発生した場合、失火責任法にいう重過失の有無は、未成年者の監督義務者の監督について考慮され、監督義務者は、その監督について重過失がなかったときは、火災により生じた損害を賠償する責任を免れる(最判平7.1.24)。
4.法定の監督義務者に該当しない者であっても、責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けて、その者が当該責任無能力者の監督を現に行い、その態様が単なる事実上の監督を超えているなど、その監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には、衡平の見地から法定の監督義務を負う者と同視して、その者に対し、本条に基づく損害賠償責任を問うことができる(最判平28.3.1)。
【問題】
不法行為をした未成年者が責任を弁識する知能を備えている場合であっても、その未成年者の監督義務者が監督義務を果たさなかったことと損害との間に相当因果関係が認められるときは、監督義務者は民法714条第1項に基づく責任を負う
【平31-19-ア:×】
【問題】
責任を弁識する知能を備えていない未成年者の行為により火災が発生した場合には、失火ノ責任ニ関スル法律という「重大ナル過失」の有無は未成年者の監督義務者の監督について考慮され、監督義務者は、その監督について重大な過失がなかったときは、当該火災により生じた損害を賠償する責任を免れる
【平31-19-イ:〇】
【問題】
夫婦の一方が認知症により責任を弁識する能力を有しないときは、同居する配偶者は、民法714条第1項所定の法定の監督義務者に当たる
【平31-19-オ:×】