第703条【不当利得の返還義務】
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
目次
【超訳】
法律上の原因がないのに、他人の財産または労務により利益を受けて、そのために他人に損害を及ぼした者は、その利益を返還しなければならないが、その範囲は利益の存する限度(現存利益)で足りる。
【解釈・判例】
1.不当利得とは、法律上の原因がないのに、他人の財産又は労務によって受けた利益をいう。
2.要件
(1) 他人の財産又は労務によって利益を受けること
(2) 他人に損失を及ぼしたこと
(3) その損失と利益との間に因果関係があること
→ 利得と損失の因果関係は、社会通念上相当と認められるもので足りる(最判昭49.9.26)。
(4) 利得に法律上の原因がないこと
① 「法律上の原因がない」とは、公平の観点から利得者に利得を保有させておくことが不当・不公平となる場合をいう。
② 債務者が詐欺により第三者から取得した金銭で弁済がなされた場合において、当該金銭が詐欺により騙し取られたものであることについて債権者が悪意・重過失であったときは、債務者から金銭を騙し取られた者に対する関係では法律上の原因がないものとして不当利得が成立する(最判昭49.9.26)。
【問題】
金銭をだまし取った者がその金銭で自己の債務を弁済した場合において、債権者がその金銭を悪意で受領したときは、債権者のその金銭の取得は、金銭をだまし取られた者に対する関係で、不当利得となる
【平29-19-オ:〇】