第537条【第三者のためにする契約】
① 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
② 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。
③ 第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
【超訳】
① 第三者に直接給付請求権を与える旨を当事者が合意した場合には、第三者は諾約者に対して直接の給付請求権を有する。
③ 第三者は、諾約者に受益の意思表示をすることにより、給付請求権を取得する。
【解釈・判例】
1.契約の成立
(1) 第三者のためにする契約において、利益を受ける第三者を「受益者」、受益者に対して給付をする者を「諾約者」、諾約者と契約する相手方を「要約者」という。
(2) 第三者のためにする契約は、要約者と諾約者との間で合意があれば成立する。受益者は契約による利益を受けるが、契約の当事者ではない。したがって、受益の意思表示は契約の成立要件ではない。
(3) 受益者は、契約当時に現存している必要はない。特定している必要もない(2項)。
→ 胎児や設立中の会社を受益者とする契約も有効である。
(4) 受益者に対して単に権利を取得させるだけでなく、付随的な負担を伴うものとすることもできる(大判大8.2.1)。この場合、受益者は負担部分を除いて利益だけを享受することはできない。
2.契約の効果
(1) 受益者の権利は、受益者が諾約者に対して契約上の利益を享受する意思を表示した時に発生する(3項)。受益の意思表示は明示又は黙示のどちらでもよい(大判昭18.4.16)。
(2) 受益の意思表示がされると、受益者は諾約者に対して履行請求権を取得する。諾約者に債務不履行があれば、損害賠償を請求できる。
【問題】
AB間でBがCに対してある給付をする旨の契約が成立した場合、Aは、Bに対して、Cに対する債務を履行するよう請求する権利を有し、この権利は、AB間の契約に始期又は条件が付されていない限り、Cが受益の意思表示をする以前であっても発生する
【平18-18-イ改:○】
【問題】
AB間でBがCに対してある給付をする旨の契約が成立した場合、Cの受益の意思表示は、Bに対する権利を取得するという効果を生ずる要件であるから、Bに対してされなければならないが、これは黙示の意思表示でもかまわない
【平18-18-ウ改:○】